■2月5日
最近のNHKは番組宣伝(番宣)がやたらと多い。平日のレギュラー番組のない週末や休日は特に目立つ。春の番組改編期だけでない。このところ、始まったばかりの大河ドラマやBSのドラマなど日常的に流れている。視聴率にしのぎを削る民放ならまだしも、受信料で成り立つNHKなのに、やり過ぎではないか。
-と苦言を呈したいと思っていたら、先月25日に就任した上田良一NHK新会長が、2日に開いた初の定例会見で自ら触れた。報道陣から見直すべき番組について質問された際、「私が経営委員として『視聴者のみなさまと語る会』に出席していたとき、『民放でもないのに、NHKは宣伝が多すぎる。何であんなに宣伝を入れるんだ』と言われた」と語ったのだ。
上田会長自身も思い当たるフシがあったのだろう。苦笑いを浮かべながらの告白だった。さらに続けて「(制作側としては)せっかく作った番組なので、見てほしいという気持ちは分かる」と理解を示した上で、「プラスマイナスはある」として番宣過多を問題視する姿勢を見せた。
正直、もう一歩踏み込んで「民放でさえ番宣をやり過ぎと批判されるのに、公共放送が追随していいのか」とでも言ってほしかったが…。就任直後だけに、そこまでは酷か。とはいえ、「視聴者のみなさまと語る会」は、NHKの最高意思決定機関・経営委員会の主催。毎年度ごとに全国各地で5回以上は開かれ、その意見は番組制作にも生かされる。
上田会長は経営委員の経験だけではない。過去に三菱商事の副社長として、お得意様のニーズを徹底して探ったはず。その見識を生かし、視聴者の望まない無駄はできる限り省いてほしいものだ。 (森岡真一郎)