トランプ米大統領が、イスラム圏7カ国からの入国を禁じる大統領令の阻止を図ろうとしたイエーツ司法長官代行を解任した。
司法のトップが大統領令に正当さはないと判断して抵抗し、その座を追われた格好である。
この問題に対し、オバマ前大統領や与野党幹部、州政府や民間企業も疑義を唱えている。米国は混乱の極みにある。この状況を作り出したのはトランプ氏の独断と暴走である。
行政、司法、議会がその力を駆使して、混乱の収拾を図るべきだろう。米国の無秩序状態は、国際社会の安定をも危うくする。
大統領令は法律と同じ拘束力を持ち、大統領一人の権限で策定でき、政策を速やかに実現できる。それが有効な事案もあろうが、グリーンカード(米永住権)保持者の扱いも定めないまま一律の入国禁止に踏み切ったのは、明らかに拙速である。
米各地の空港が入国者の拘束や抗議で大混乱に陥ったことについて、トランプ氏は「航空会社のシステム故障のせいだ」などとツイッターに投稿しており、意に介するそぶりもみせない。
オバマ氏は「宗教を理由にした差別に反対する」と非難し、共和党の重鎮、マケイン上院議員らも「テロとの戦いで自ら傷を負いかねない」と声明を出した。
野党民主党は大統領令を覆す法案を提出した。15州と首都ワシントンの司法長官が大統領令を「違法」とする声明を出した。西部ワシントン州は連邦地裁への提訴に踏み切った。