天皇陛下の譲位への対応を検討している政府の有識者会議が「論点整理」を安倍晋三首相に提出した。法制上の課題などが多角的に示され今後の議論に資する内容だ。国会でも円滑な協議に生かしてもらいたい。
ご高齢の陛下が公務を果たされているお姿は本当にありがたい。陛下を敬愛し、譲位をかなえて差し上げたいと国民は願っている。
昨年8月のおことばや、歴代天皇の半数近くが譲位された皇室の歴史を踏まえれば、譲位の実現へ歩を進めることが順当である。
譲位の実現へ、今上陛下に限ったものとする案のほか、将来の全ての天皇を対象とする案が盛り込まれた。政府や国会が結論を得るのに時間をかけてはいけないとの思いを抱く人は多いだろう。
譲位は、日本の国が始まってから今に至るまで、125代にわたって君主であり続ける天皇の位にかかわる重大事である。
その実現には、後世に混乱の種をまかないよう細心の注意が欠かせない。「一代限り」の実現が現時点での自然な答えであろう。
終身在位を原則とする今の皇室を、譲位を原則とするあり方へ全面転換するには、議論と制度設計に相当の時間がかかる。早期に実現することと相いれない。
今の陛下に限った譲位を実現する場合、たとえば、陛下が85歳で譲位されるとすれば、皇太子殿下は58歳で即位される。