米国はどこへ向かい、世界はどうなるのか。不安を抱きながらこの日を迎える人は多い。第45代大統領、トランプ氏の正式就任である。
40%台という各メディアの直前支持率は、歴史的な低さだ。就任式では多数の民主党議員が欠席するとみられ、連邦議会議事堂の周辺では多くの抗議デモが計画されている。
もっとも、不安の主たる原因はこうした騒々しさではない。当選から2カ月、トランプ氏が自らの手腕と将来への展望をはっきりと示してこなかったことが、内外の懸念と焦燥感を広げてきた。
就任演説では、超大国の指導者としてあるべき姿について、じっくりと聞かせてもらいたい。
自由や民主主義、法の支配などの普遍的価値観に基づき、米国は戦後の国際秩序を主導してきた。国内では、人種や宗教などの多様性を受け入れ、それが超大国の強靱(きょうじん)さとしなやかさを育んでいると長く信じられてきた。
戦争を含む国際社会での活動をめぐり、歴代政権の個別の政策判断には誤りや失敗もあったろう。それでも、信念を持ち世界平和に積極的に関与する姿勢について、日本を含む多くの国が支持し、敬意を示してきた。