世界経済を覆う不確実性の高まりに拍車をかけかねない判断である。
英国のメイ首相が、欧州連合(EU)の単一市場から完全撤退することを表明した。
離脱による弊害より、EUから流入する移民の制限を優先させた結果といえる。
昨年の国民投票で示された民意を尊重した形だが、EU市場への一定のアクセスを残す「軟着陸」は排した。
英経済そのものの地盤沈下を強めることにもつながらないかという懸念を抱かざるを得ない。
英国とEUは2年間の離脱交渉を経て新たな関係を構築する。さらに混迷を深めれば、世界経済全体の足を引っ張ることを認識してほしい。負の影響を最小限に抑える交渉を双方に求めたい。
完全離脱は、英国を欧州戦略の拠点としてきた日本企業への悪影響ももたらそう。欧州戦略の再構築が急がれる。
本来、単一市場の維持は英国とEUの双方に恩恵をもたらすはずである。完全離脱により、英国とEUとの貿易に関税がかかる可能性がある。
金融機関が域内で自由に営業できる「単一パスポート制度」が崩れれば、金融立国としての英国の地位も揺らごう。
単一市場は人、モノ、資本、サービスの自由な移動が前提となる。EU側が英国に対し、移民だけを制限し、他の自由は確保する「いいとこ取り」を拒んできたのはもっともだった。