主張

日本文化 守るべきもの見極めたい 変化を超えて伝統に誇りを

 事始(ことはじ)め、御身拭(おみぬぐ)い、おけら詣(まい)り、除夜の鐘に初詣、七草がゆ、初釜式…といった伝統行事は、いずれも年末年始の京都の風物詩である。同様の風習は各地で行われていただろうが、姿を消したものも多い。

 このうち、除夜の鐘の意外なニュースがこの暮れに注目を集めた。騒音扱いされて、突かれなくなったというのだ。さらに時間を昼間に変更したところ、参拝者が増えた。現代のライフスタイルに合わせたということだろうが、やはり本末転倒である。

 そもそも鐘の音は聞くものだ。除夜の鐘は、人が持つとされる百八の煩悩を救うために鳴らすのである。参拝者に突かせてくれる寺に参るのも信仰の形の一つだろうが、自宅で鐘の音に耳を傾け、静かに一年を振り返るのもいい。

 むしろ、除夜の鐘を毎年聞いていたであろう不特定多数の人がいたはずだ。毎年ほのかに聞こえてくる鐘の音が聞こえなくなって、がっかりしてはいないか。

 幸い、京都で除夜の鐘は風物詩であり観光資源の一つでもある。年末の新聞には毎年「除夜の鐘ガイド」が掲載され、訪れる人で各寺は大にぎわいだ。そこには騒音と思う人もいるまい。信仰が風習となって庶民に根付き、やがて文化になるという過程である。

 ≪原点回帰の古都暮らし≫

 沖縄出身の歌手、安室奈美恵さんが昨年、京都に家を購入したと話題になった。かつては文豪・谷崎潤一郎しかり、この町に住もうとする文化人や芸能人が多いのはなぜか。京都ブームといわれ久しいが、移住であれ別荘であれ、旅行者ではなく「住んでみたい」と思わせる何かが京都にはある。

 理由の一つは、そこに日本文化の源泉があるからだろう。例えば、和室の原型ともいわれる書院造り建築や庭園、能、茶道、華道といった、こんにち日本の伝統文化と呼ばれるものの多くは室町時代の京都で花開いた。

 それは、安土桃山時代を経て江戸時代に熟成される。宮中行事が公家や武家に、やがて庶民へと姿を変えながら広がるのである。ところが、明治維新で「文明開化」の荒波にさらされ、都だった京都でさえ一地方都市となり、都市化・現代化した。

 近年は国際化が進むなかでも、依然として町に息づく和の文化に、たやすく触れることができる。それは、先の大戦での空襲被害がほとんどなく神社仏閣が残されたこと、町とともに庶民の暮らしも残ってきたことなどが要因だ。風習や生活文化は日々の暮らしの中にこそ存在する。

 言い換えれば日本人であることの誇り、喜びがまだそこにある。日本人が失いつつある「日本の心」が根強く残っているのだ。

 ≪歴史の中に本質をみる≫

 かつては学生は修学旅行で京都に来て、日本の歴史、伝統文化に触れた。ところが最近では行き先が京都ではなくなり、さらには日本ですらなくなっている。

 地域差もあるが、全国修学旅行研究協会の調べによると、平成26年度の全国の公私立高校での海外修学旅行の実施率は公立高校では9・4%、私立高校では35・0%に上った。多少の増減はあるものの、この10年間は公立でも約1割、私立では約3分の1が海外旅行を選んでいる。

 また、社寺を見学するのは特定の宗教を特別扱いすることになるなどという、まったく的外れな指摘もある。世界のどの国を見ても、古い固有の文化と宗教は密接につながっているものだ。日本でも、神道や仏教によって、建築や芸術、音楽などの日本文化がはぐくまれてきたことは明らかである。一例を挙げれば、華道は仏に供える仏花から、茶道は禅と深く結びついて発展してきた。それを知らずして、日本文化の本質を理解することはできない。

 とはいえこんな話もある。京都市左京区の下鴨神社では、願い事を書いた絵馬の上に貼って隠す個人情報保護シールが人気だという。これも時代の流れだろう。変わっていくもの、守るべきものを見極めることが肝心だ。

 清少納言が「枕草子」に「近うて遠きもの」として、こう書いている。

 「師走の晦日(つごもり)の日、正月(むつき)のついたちの日のほど」

 同じ1分1秒でも、年越しの夜はやはり普段とは違う。この感性にこそ、日本文化の核がある。

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