日本の物資補給機「こうのとり」6号機が、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングを完了した。
ISSへの物資補給は現在、日本と米露が分担しているが、2014年以降は米露の失敗が相次いでいる。今月1日にもロシアの補給機「プログレス」が、打ち上げ直後に墜落した。
現行の補給機で無事故を誇るのは、日本のこうのとりだけだ。また、6号機が運んだ日本製のリチウムイオン電池は、今後の主電源となる。ISS計画における日本の存在感は、宇宙大国の米露からも頼りにされるレベルにまで高まっている。
ISSは2024年までの運用が決まっている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、現行型のこうのとりは19年度の打ち上げとなる9号機までとし、それ以降は低コスト化を図った新型機を投入する計画だ。
コストの低減は、もちろん大切なことだが、米国が30年代の有人火星探査を掲げるなど、世界の関心はISS後に向いている。日本も将来を見据えた長期構想を打ち出すべきである。
ISS後は、火星または月面基地が世界の宇宙開発の主舞台になるだろう。ISS計画と同様に国際プロジェクトに日本が参加するという形が最も現実的だ。
例えば、往復で2〜3年の長旅になる有人火星探査では、居住空間を備えた大型の宇宙船が必要になる。
こうのとりには大型の物資を搭載するスペースがあり、ISSに係留された状態では船内で飛行士が活動できる。この技術を発展させれば、近い将来の有人宇宙活動で、日本の存在感をさらに高めることができるのではないか。
こうのとりは開発段階から、有人化や往還型への改良が構想されていた。しかし、現時点で決まったのはコストダウンだけで、国の大きな方針が決まらないために、研究者や技術者の将来構想は「棚上げ」状態が続いている。
商業衛星の打ち上げでコストが重視されるのは当然だが、宇宙開発には、費用対効果だけでは計れない意義がある。
人類のフロンティアを開拓し、子供たちに夢を与える。未来への投資でもある宇宙開発に長期構想がない現状に、早急に終止符を打つべきだ。