韓国国会で、朴槿恵大統領に対する弾劾訴追案が可決された。朴氏の大統領権限は停止され、黄教安(ファン・ギョアン)首相が代行する。
隣国の指導者が不在という、日本にとっても憂慮すべき事態である。
北朝鮮の核・ミサイル開発など、北東アジアの安全保障環境を考えれば、韓国の政治空白は最小限に抑えなければならない。
混乱に乗じた北朝鮮の軍事挑発や世論工作への警戒も必要だ。正常化への道筋をつけることを優先し、黄首相を中心として、国家の危機乗り切りを考えてほしい。
慰安婦問題をめぐる日本との合意など、外交、安全保障を含む朴氏の政策の何もかもが、批判、否定されるのはおかしい。朴氏を支えた保守勢力が、口を閉ざしてしまうことを大いに懸念する。
朴氏は就任当初、中国傾斜が顕著だったが、北朝鮮の脅威を次第に強く意識し、日米との連携を重視する立場を鮮明にしてきた。
日本との間で、懸案だった軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結したのが一例である。米国とも、高高度防衛ミサイル(THAAD)の在韓米軍配備で合意した。
野党は、憲法裁判所の判断にかかわらず、朴氏に即刻辞任するよう求めている。選挙の時期は流動的だが、親北・反米勢力が勢いを増しているのは確かだ。
同時に北朝鮮の核戦力の脅威は高まってきている。THAADに反発する中国は、配備阻止へ韓国への圧力を一層強めてこよう。