産経抄

日本は受け身に回ったときの方が成功に恵まれてきた…「トランプショック」というピンチをチャンスに 11月24日

 江戸末期のペリー来航について、200種類以上のかわら版が出版されたそうだ。黒船の威容を目の当たりにした当時の日本人が、どれほど大きな衝撃を受けたかよくわかる。ペリーは、開国を迫る米国大統領の国書を携えていた。現在の首相に当たる老中首座を務めていた阿部正弘は、異例の判断を下す。受け取った国書を広く回覧したのだ。

 ▼歴史作家の中村彰彦さんによれば、大名ばかりか庶民にまで意見を求めていた。外国人が来たら、酒を飲ませて仲良くなったと見せかけて、刺身包丁で殺してしまえ。吉原の遊郭の主人が出したこんな意見書まで残っている(『黒船以降』)。

 ▼「平成の黒船」といえるトランプ次期米大統領は21日、大統領就任初日にTPPから離脱すると宣言した。アジアの経済秩序の主導権を中国に奪われかねない事態である。戦略の練り直しを急がなければならない。日米同盟について、今度はどんな発言をするのか。大げさにいえば、日本全体が固唾を呑(の)んで見守っている。

 ▼ところで、黒船に「泰平の眠り」を破られた日本人は、ただ右往左往していたわけではない。軍事力の圧倒的な差を見せつけられた幕府と諸藩は、西洋技術の国産化に力を注いだ。同時に身分の差にこだわらない人材登用を進めて、明治維新の準備が整っていく。

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