米政府はすでに5億ドルの予算をレールガン開発に投入しているが、課題は山積している。レールガンは日本の家庭約7000世帯の年間使用電力に当たる25メガワットの電力が必要とされ、これに対応できるのは、米軍内でも最新鋭ズムワルト級ステルス駆逐艦などに限定される。レールガンが発する高熱による砲身の損傷を克服しなければ1分間で10発の速射もかなわない。
ただ、ワーク氏自身は「レールガンと火砲の両方を開発する十分な資金がある」と述べており、米国のレールガン開発は現在も続いている。同じ超高速飛翔体でも火砲よりレールガンで発射したほうが高速度を得られるのも事実だ。
防衛省が研究・開発に着手したのは、「今から準備してどこまで可能か実際にモノを作って見極める必要がある」(防衛省関係者)ためだ。実際にレールガンが実用化した場合に米国からの協力を引き出すためには、日本の技術がゼロでは米国から相手にされないか、調達価格をふっかけられかねないという事情もある。
研究開発費は米政府と比べると遠く及ばないが、防衛省内には「素材技術など民間企業の優れた技術を生かせる余地があるかもしれない。砲身の耐久性をいかに上げるかという点で貢献できる可能性はある」との声もある。5年後以降は蓄電システムの小型化などにも期待が集まる。(杉本康士)