中国海軍艦が初めて尖閣諸島(沖縄県石垣市)の接続水域に入った。尖閣を《中国領》と定めた1992年の《領海及び接続水域法》を、わが国はじめ国際社会に強制順守させる挙に出始めた危険な予兆が透ける。最初に接続水域に入ったのはロシア海軍艦で、水域を離れたロシア艦を見届けるかのごとく中国艦が出た。このため防衛・外務両省内には、中国が「領海に近付くな」と日露を威嚇し、国際社会に「主権宣言」しているとの分析も浮上している。
尖閣海域ではこれまでにも、海軍艦を改装し、火力を制限した中国の武装巡視船が出没してはいた。しかし、火力の威力・射程や艦の抗たん性が比較にならぬほど優れ、大使館のように外交特権を有する軍艦の脅威度・存在感は、東シナ海の安全保障上の均衡を塗り替える巨大な力を秘める。
今回、海上保安庁の巡視船が領海内にとどまり、海自艦でけん制した「戦法」は軍事的合理性に適う。だが、自国軍艦の尖閣派遣の口実に向け、中国巡視船に海自艦が対処に出て来るよう挑発を続けてきた経緯に照らせば、今回、中国は口実さえ必要としない「戦法」に舵を切ったとみることもできる。
一方、侵入した《江凱(ジャンカイ)I級フリゲート艦》には、フランスの軍事技術が散見され、欧州の対中警戒感の希薄性を改めて浮き彫りした。