大阪市平野区で平成14年に起きた母子殺害放火事件で死刑判決を受け、最高裁の破棄差し戻し後に大阪地裁で無罪とされた大阪刑務所刑務官、森健充被告(58)の第2次控訴審で、検察側の請求で行われた凶器などの鑑定の結果、森被告と完全に一致するDNA型は検出されなかったことが23日、関係者への取材で分かった。鑑定のため中断していた大阪高裁の控訴審の審理は約3年ぶりに再開されることになり、第2回公判が6月23日に開かれる。
25年7月に開かれた第2次控訴審の初公判で、検察側は森被告の犯人性を立証するため、被害者である義理の娘だった主婦=当時(28)=と、その長男=同(1)=のそれぞれの着衣、主婦の絞殺に使われた犬のリード、事件現場のソファ、遺体の下に敷かれていたバスマットのDNA鑑定を請求。高裁は「微物採取の技術は向上しており、審理を尽くす上で鑑定は必要」とし、高裁が鑑定人を選任していた。
関係者によると、鑑定の結果、凶器のリードから検出されたDNA型は森被告と完全に一致せず、他の遺留物も同様だったという。森被告と犯行を結ぶ直接証拠はなく、今回の結果により検察はさらに厳しい立証を迫られることになる。