こうした点を踏まえて、飼い主側は「自転車が適法な走行状態であれば、飼い犬が突然飛び出したとしても、ブレーキをかけて減速したり、ハンドルを切ったりして、安全に停止させることが可能だった。転倒は違法な2人乗りが原因だ」と争った。
双方、真っ向からぶつかり合った形だが、裁判所が示したのは和解の道。「確定的な認定判断は困難であるが、自転車とリードをつけない犬との出合い頭による転倒事故だ」と、接触していないという飼い主側の言い分を受け入れず、「賠償責任が最終的に認められる可能性は、相当高いように思われる」とした。
これを受け、飼い主が親子側に300万円を支払うことで決着した。
ノーリードの危険性
一般社団法人「ペットフード協会」によると、平成27年度の全国の犬の推計飼育頭数は991万7千匹に上る。年々減少傾向にはあるが、猫(987万4千匹)と並んで人気のペットであることに変わりはない。こうした飼い犬によるトラブルはひとごとではないのだ。
自転車事故の高額賠償化にみられるように、ペットに起因する事故でたとえば相手に深刻な後遺障害が残った場合、司法が数千万円の損害賠償を命じてもおかしくはない。
散歩中の犬にほえられて転倒し、足を骨折したとして神奈川県の高齢女性が治療費などを求めた訴訟で、横浜地裁は13年、飼い主側に計約440万円の支払いを命じた。
26年には北海道の浜辺で綱を放たれた土佐犬に主婦が襲われ死亡。飼い主が重過失致死罪などに問われ、札幌地裁苫小牧支部が懲役2年6月、罰金20万円の判決を言い渡している。