もしかわいい愛犬が、他人にけがをさせてしまったら-。大阪府内の道路で飼い犬が自転車にぶつかり、乗っていた親子が転倒する事故があった。親子は骨折などの大けがをしたとして約450万円の損害賠償を求めて飼い主を提訴。このほど大阪地裁で和解が成立した。飼い主側が300万円を支払うという内容で、飼い主側の〝敗訴〟とみることもできる。飼い犬は小型犬のトイプードル。引きひもをつけないノーリード状態だったことが、あだになった形だ。近年は自転車で相手にけがをさせたケースで1億円近い賠償が命じられたケースが話題になったが、ペットが起こす事故もしゃれにならない。
「犬蹴り飛ばした」
訴訟での親子側の主張に基づいて、事故のシーンを再現してみる。
平成26年春、現場は大阪市内の商店や住宅が立ち並ぶエリア。女性は娘を習い事から迎えに行き、自転車後部の幼児用座席に座らせ、家路を急いでいた。
時刻は午後9時前。夜間だが、道路は直線で見通しはいい。前方で若い男性が犬を散歩させていた。リードはついていなかった。
すると、男性がいきなり犬を蹴り飛ばしたのだという。驚いた犬は自転車に向かって飛び出し、前輪に接触。自転車は転倒し、2人は路上へ投げ出された。
「キャン、キャン!!」
犬は鳴きながら、どこかへ走り去ってしまった。男性は「大丈夫ですか」と声をかけてきた。母親が「犬を蹴ってはだめですよ」と苦言を呈すと、男性は黙り込んだという。
「犬を探してきます。また戻ってきます」
男性はこう言い残して、どこかへ行ってしまった。母娘はあまりの痛みで現場を動けなかった。通行人らが警察を呼んでくれた。
救急搬送された病院で、母親は左足の骨折、娘は左足の打撲と診断された。