その背景には韓国や中国勢の追い上げがある。付加価値の高い豪華客船の建造にシフトしなければ、客船事業で生き残れないという事情もあった。三菱重工にとって造船事業は「祖業」でもあり、復活を狙った新たなチャレンジだったが、それが今のところ裏目に出てしまった格好だ。
そして、災難は続き、1月11日、完成間近とみられていた1番船で火災が発生した。三菱重工は4月30日に予定されている引き渡しへの影響はないとしているが、さらに、特損が膨らむ可能性も出ている。
大型客船の受注額は1000億円程度とみられるが、三菱重工の特損の計上額はこれを大きく上回る。大型客船の市場は成長が期待されているが、桁違いの損失を出すリスクもある。今後について、宮永社長は「2隻の納入が終わってから考える」とし、撤退の2文字もよぎる。
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一方、川崎重工とIHIはブラジルの造船事業で苦しんでいる。ブラジルでは12年に超深海の巨大油田開発が本格化し、国営石油会社ペトロブラスが開発計画を進めていたが、ドリルシップなど海洋構造物を手がける現地の造船会社が足りず、政府が日本に助けを求めてきた。