英語での冒頭のあいさつを終えると、前田は16台のテレビカメラ、日米100人以上の記者を前に、質問が出るより先に決然と切り出した。
「今回の契約内容に関してさまざまな憶測を呼んでいますが、一部報道の通り、身体検査においてイレギュラー(異常)な点がありました」
米メディアで指摘されてきた故障の話題は普通なら避けたい。しかし、潔く認める男気に会見場がどよめいた。
交渉段階でも男気を貫いた。昨年12月に代理人との打ち合わせでロサンゼルスに滞在した際に、各球団に体の状態を提示するため、交渉に先んじて身体検査を受けた。そこで「イレギュラー」が発覚した。
米大リーグの公式サイトは右肘の問題を指摘した上で、数年後に靱帯(じんたい)再建手術を受ける可能性を伝えた。関係者によると、交渉を望む各球団に事実を隠さず伝えていたという。最後まで残った候補がド軍の他、ダイヤモンドバックス、アストロズと想定より少なかったのも、リスクを考慮した球団の存在が原因とみられる。
それでもナ・リーグ西地区4連覇を目指す強豪、ド軍は獲得の方針を変えなかった。改めて個別に身体検査を行い、問題がないことを確認。田中将大投手が2014年にヤンキースと結んだ7年を上回る日本選手最長の8年契約が結ばれた。