広島からポスティングシステムでの米大リーグ移籍を目指してきた前田健太投手(27)のドジャース入団会見が行われた。ド軍は前田に対し、故障の可能性を認識しながらも、8年契約を提示。それだけ獲得したかったのには、いくつか理由がある。
たとえば、前田が加入する前のド軍の先発陣は5人が左投手で、異例の左腕ローテになりそうな状況だったこと、移籍市場のなかでは若かったことなど前田を評価するものだ。一方で、米国で実績のあるフリーエージェント(FA)の選手より、前田を魅力に感じるド軍の複雑なチーム事情もあったようだ。
大物FA選手の場合、大半のケースでは、前所属が選手にクオリファイング・オファー(年俸上位125選手の平均額)と呼ばれる1年契約を提示している。選手がそれを受け入れず移籍した場合、見返りとして、移籍先の球団は前所属にドラフト1巡目の指名権を譲らなければいけない。
ド軍は近年、若手選手の育成に力を入れている。それはドラフトに限らず、キューバなどの有望アマチュア選手を海外からも集めてきた。それらの選手を獲得する場合は大金が必要だ。ただ、米大リーグは契約金の上限を定めていて、それを超えてしまうとペナルティーが発生する。ド軍は昨年、大幅に限度額を超えたことなどもあり、2016、17年はペナルティーの対象で、海外の選手獲得に可能な契約金は30万ドル(約3540万円)に制限。この金額だと他球団と競り合えないため、現実的には2年間、海外の有望アマチュア選手を獲得できないことになる。
海外のアマチュア選手を獲得できないなら、ドラフトで若手有望株を指名するしかない→ドラフト指名権を失うわけにはいかない→大物FAは獲得できない-。そう考えると、ドラフトの指名権に影響ない前田獲得は、ド軍の思惑に一致したといえる。
前田を高く評価する一方、そんなチーム事情も見え隠れしている。
(MLB担当、峯岸弘行)