春日部市の市立豊春中学校の男性教諭(53)が共産党機関紙「赤旗」のコピーを教室で配布した問題で、教諭が9月に安全保障関連法案への反対デモを取り上げた記事を配布した際、赤旗号外を教室に持ち込み、生徒らに「自由に見てよい」などと閲覧を呼びかけていたことが16日、関係者への取材で分かった。(川畑仁志)
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県教育局は「政党機関紙だけを閲覧させていたとすれば政治的中立に問題がある」として、教諭の指導実態を調査する方針。
関係者によると、教諭は自ら反対デモに参加したことを生徒らに伝えていたほか、安倍晋三首相を「A首相」と言い換えて「戦争を起こそうとしている」などと批判。忘れ物をした生徒に、「Aさんみたいになる」などと言っていたという。
教諭が担任するクラスでは、ホームルームで生徒が新聞記事を取り上げて発表する活動をしており、教諭は9月、安保関連法案の反対デモに関する赤旗の記事とデモに賛同する内容の文書を配布。校長から指導を受けた後の12月にも「マイナンバー違憲訴訟」の記事と制度が不要とする内容の文書を配っていた。
一方、数日後に生徒がマイナンバー制度を扱った一般紙の記事について感想を述べたところ、教諭は生徒らに「(政府の)言いなりだから良いことしか書かない」と話したという。
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■文教委で議題に 県議ら「価値観の押し付け」
公立中の教室で教諭が「赤旗」のコピーを配布した問題は、16日の県議会文教委員会でも議題となり、県議らが「価値観の押し付けで、思春期の心に深い影響を与える」「氷山の一角ではないか」などと指摘した。県教育局の担当者は「詳細を確認中」とした上で「教員が一方的な考えを述べており、適切とはいえない」との認識を示した。
同委員会で、福永信之県議(公明)は「あってはならないことだが、教諭は校長の指導後も、赤旗のコピーや文書の配布を続けている。(県教育局は)重く受け止めるべきだ」と指摘。関根郁夫教育長は「偏った政治教育は断じて許されず、問題が確認されれば厳正に対処する」と述べた。
諸井真英県議(自民)は「日常から特定の思想に基づく指導をしていたのではないか」と疑問を呈したが、県教育局の担当者は「配布された文書だけを見れば特定の思想と受け止められるが、現在調査中で見解は言えない」と述べるにとどめた。
県議からは教室への政党機関紙の持ち込みを排除すべきだとの意見が相次ぎ、県教育局側は「教員の言うことは生徒にとって絶対に近い。機関紙に限らず、偏ったイデオロギーの押し付けは排除すべきだ」とした。
高木康夫・教育委員長は「昨日知ったばかりで、情報が遅く大変遺憾だ。現場は重大性を認識し、直ちに県教育局に情報を上げるべきだった」と春日部市教委の対応を批判した。