長時間飛行できる改良型のH2Aロケットが24日、初めて打ち上げられる。H2Aは海外の主力機と比べ静止衛星の燃料消費が多いのが弱点で、商業打ち上げ市場で苦戦を続けてきた。2段エンジンの工夫などで性能を高め、競争力の向上を目指す。(草下健夫)
種子島の宿命
改良型H2Aはカナダの衛星運用企業の静止衛星を搭載し、三菱重工業が種子島宇宙センター(鹿児島県)で打ち上げる。顧客からの注文で衛星を軌道に運び、対価を得る商業打ち上げビジネスの一環で、同社が初めて受注した民間の大型衛星を積み込む。
従来のH2Aは打ち上げの約30分後、高度300キロ付近で2段に搭載した静止衛星を分離。その後、衛星は燃料を使って赤道上空約3万6千キロの静止軌道に自力でたどりついていた。
これに対し改良型H2Aは約4時間半にわたって飛行を続け、静止軌道のすぐ近くまで衛星を運ぶ。衛星は積み込んだ燃料の多くを運用に使えるため、数年長持ちするようになる。
改良型が必要になった背景には、北緯30度に位置する種子島の立地問題がある。高緯度の発射場からロケットを打ち上げると、衛星が静止軌道に入る際の角度が大きくなり、加速が必要になって燃料消費が増えてしまう。
赤道付近の南米ギアナから発射し、商業打ち上げ市場で大きなシェアを握る欧州の大型機アリアン5に比べ、H2Aは宿命的なハンディを負っている。衛星の燃料を増やすと、その分だけ搭載機器を減らさなくてはならず、顧客の要望に十分に応えられない。
2段を設計変更
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したH2Aは2001年から計28回打ち上げ、失敗は1回だけという世界最高水準の信頼性を誇る。しかし発射場の課題や割高な費用がネックとなり、商業打ち上げ市場では海外勢に大きく水を開けられている。