環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意の内容が20日、明らかになった。安倍晋三首相は6日の記者会見で「関税撤廃の例外を数多く確保した」と述べたが、輸入品の関税の撤廃率95%という数字に九州の農協などからは、驚きの声が上がった。
福岡県農業協同組合中央会(JA福岡中央会)には、詳細が公表されたことで、農業者から「自分らも関税撤廃の対象になっていた。どう対応したらよいのか」など問い合わせがあるという。
担当者は「ある程度、覚悟はしていたが、『ここまで広範囲に及ぶとは』というのが正直な感想だ。国や県は速やかに、責任を持って影響額の算出などを進めてほしい」と訴えた。
この日、JA福岡中央会など福岡県内の農林漁業団体は、関税の撤廃や削減で安い海外産品が大量に流入し、低価格競争に巻き込まれる可能性があるとして、「国益にそぐわないTPPに断固反対する」との決議を採択した。JA福岡中央会の倉重博文会長は会合後の記者会見で「(米など農業重要5項目の保護を求めた)国会決議を守っていない」と政府を批判した。
一方、冷静な受け止めもある。鮮魚、冷凍などを問わず3・5%の関税が即時撤廃されることになったヒラメ。大分県佐伯市のヒラメ養殖業、森岡水産の森岡道彦代表は「驚きはあるが、主な競合先は(TPPに参加してない)韓国であり、発効後すぐに問題となることはない。TPP参加国でヒラメ養殖が盛んな国は思い当たらない。そもそも、関税撤廃の品目に上がったことのほうが不思議だ」と述べた。その上で、「新たな輸入先が生まれる可能性や、輸出先の市場開拓など、実際に協定が発効するまでに、影響を慎重に見極めたい」と語った。