「送骨」が広がりつつあるのはなぜか。河内長野中央霊園の田村一央代表によると、利用者らが理由に挙げるのは「墓を建てる余裕がない」という経済的事情や、「墓守する親族がいない」「孤独死で遺骨の引き取り手がいない」などと少子高齢化時代を反映した事情だという。
こうした状況に、葬送文化に詳しい立教大社会デザイン研究所の星野哲(さとし)研究員は、日本人や日本社会から「永続的に続いてきた命の連鎖や、家・先祖という感覚が急速に失われてきた」と指摘する。その上で、「目に見えない世界が対象の葬儀や先祖供養に『どのようなリターンやメリットがあるのか』と考え、経済的な合理性に判断基準を置くようになった」と説明する。
一方、世界の墓文化を研究する聖徳大学の長江曜子教授(葬送文化研究)は「やむを得ない事情を抱えた人が新しい葬送を利用するのだろう」としながらも、送骨には「違和感がないわけではない」と話す。格式張らない「弔いのカジュアル化」ともいえる現象に「葬送は人間にしかない文化。死者と向き合うことを不要としてしまえば、死から学ぶ姿勢や生を受けたことへの感謝も希薄になるのではないか」と危惧している。