新しい言葉が浸透する一方で、昔ながらの慣用表現に対する知識が乏しくなった-。文化庁が公表した平成26年度「国語に関する世論調査」は、新旧の言葉が目に見えて入れ替わりつつある状況を浮き彫りにした。
「婚活」「デパ地下」といった新しい複合・省略語を「聞いたことがある」と回答した人は全体の9割を超える。本来は不都合なさま、危険なさまを表す「やばい」を「とてもすばらしい」の意に用いる人は、全体では27%弱にとどまるものの、16~19歳に限れば約9割、20歳代でも約8割に達した。
これら新語や新しい用法の広がりとは対照的に、長く人口に膾炙(かいしゃ)してきた「枯れ木も山のにぎわい」や「おもむろに」の意味を取り違える人が4割以上もいる。初冬時分の暖かな天気をいう「小春日和」を春先の言葉だと勘違いしている人も4割強と多い。
日常的に手紙を書く習慣のあった時代には、小春日和は「釣瓶(つるべ)落とし」や「風薫る」などとともに時候の挨拶語として常用された。手紙を書かなくなったことで、季節の風趣に富む言葉までが縁遠いものとなったのかもしれない。
言葉の新陳代謝があまりに急激だと、ときに世代間での齟齬(そご)をきたしかねない。お年寄りから「水泳に行くの」と尋ねられた子供が怪訝(けげん)な顔で「違うよ、スイミングだよ」と答えたとか。