憎しみと怨念のグローバル化
一方、これとは正反対の極論も散見された。11年前にイラクで起きた日本人人質事件の際に燃え上がった、いわゆる「自己責任論」だ。
しかし、現在の国際テロ情勢は当時とは様変わりしている。今や無差別殺人を繰り返す宗教テロはグローバル化しており、中東だけのものではなくなりつつある。
その意味でも、今回の人質事件は日本にとって「9・11事件」だ。残念ながら、一部中東諸国政府の統治の正統性は急速に失われつつある。情報化の進展により中東で生まれた憎しみや怨念がグローバル化し、世界各地のイスラム教徒が、リアルタイムで共有・増幅しつつある。そうなれば、日本やその周辺地域も聖域ではなくなるだろう。
既に影響は中国に及んでいる。1月7日のフランスの週刊紙襲撃テロ事件直後の10日、中国政府は、新疆ウイグル自治区のウルムチ市内の公の場でブルカの着用を禁止した。中国は欧州での事件に便乗して、国内ウイグル人に対する弾圧を強めているのだ。
これに対し、ウイグル人はキルギスなどを経由してシリアに向かう。「イスラム国」に参加して戦うためだ。宗教的情熱を持った、ひ弱なウイグルの若者が筋金入りのテロリストに変身する。中国にとっては空恐ろしい事態だ。ソ連がアフガニスタンに軍事介入した際に起きた現象に似ている。