残念ながら、日本国内では当初から国論が割れた。一部識者は安倍晋三首相の中東訪問と演説内容に問題あり、などと声高に批判した。しかし、冷静に考えてほしい。「イスラム国」は国家ではなく、宗教を隠れみのにした「ならず者」集団に過ぎない。
彼らは昨年来、世界の主要国に対する数々の犯罪を計画・実行してきた。日本人人質奪取もその一環に過ぎない。
であれば、日本の首相が誰であろうと、またどこで何を語ろうと、今回の事件はいずれ実行されたということである。
この関連で筆者が驚愕(きょうがく)したのは事件翌日のある有力紙の見出しだ。「敵視された日本の中東支援」「『イスラム国』身代金で解放の例も」というヘッドラインに筆者は強い違和感を覚える。
「イスラム国」とは自ら以外を「すべて敵視する」特異な政治軍事的宗教活動だ。それにもかかわらず、見出しで日本の支援だけが敵視されたかの如(ごと)く示唆したり、身代金による人質解放の可能性を暗示することは、意図的ではないにせよ、一種の利敵行為と言わざるを得ない。