産経抄

クリスマスキャロル 12月25日

 「チャールズ・ディケンズの『クリスマスキャロル』を知っていますか」。平成17年の年の暮れ、青森地裁の裁判官が、被告に問いかけた。強欲な金貸しの男が、クリスマスイブに見た夢をきっかけに改心するおなじみの物語を紹介して、こう諭したという。「社会的弱者のために自分に何ができるか、考えてください」。

 ▼キリスト教の信者が総人口の1%に満たない日本に比べて、3割を超える韓国では、クリスマスは休日である。その国で今、誰よりも「改心」を求められているのは、財閥・韓進グループのオーナー一家であろう。

 ▼傘下の大韓航空の機内で、趙顕娥(チョヒョナ)前副社長(40)が引き起こした、いわゆる「ナッツリターン」騒動は、いまだ収束する気配はない。今度は、同社の専務を務める趙氏の妹がやり玉に挙げられた。「すべての役職員の過ちだ」。部下に責任転嫁するメールの内容が発覚したのだ。

 ▼ソウル西部地検はきのう、航空保安法違反などの容疑で、趙氏の逮捕状を請求した。確かに財閥のお嬢さまのわがままぶりは目に余るが、これほどの大事に発展するとは思わなかった。

 ▼背景に、売上高がGDPの7割を占める財閥に対する、多くの国民の羨望と反発がある。経済の民主化と格差解消を訴えて政権の座に就いた朴槿恵(パククネ)大統領の周辺では、身内のスキャンダルが次々に浮上して、とても改革どころではない。「ナッツ姫」をスケープゴートに仕立てて、政権への批判をかわす。こんなうがった見方も、出ているらしい。

 ▼日本ではきのうの聖夜、第3次安倍晋三内閣が発足した。幸い総選挙に大勝した安倍首相は、政権を運営するのに姑息(こそく)な手段を弄(ろう)する必要はない。山積みの難題に、正面から立ち向かってほしい。

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