じめじめとした暑い日が続く。仕事帰りの冷えた生ビールがのどを潤し、ついつい深酒になりやすいこの時期に多発する問題がある。鉄道の駅構内や列車内で酒に酔った人が駅員に暴力をふるう「酔余(すいよ)の蛮行」が1年間で最も多いのが7月、次いで8月なのだ。土下座させて頭を踏みつけたり、腕にかみついたりしたケースもある。心理学の専門家は「かつては、公共交通機関に携わる人たちの言うことは聞かなければならないという意識があったが、近年は権利意識が高まり、我慢力もなくなった。お酒で心のブレーキが外れた人が理不尽な言動に出ている」と指摘する。
要注意は「7月の週末夜」
「電車で帰ってきたが、何をしたか分からない…」
大阪府河内長野市の南海高野線三日市町駅。昨年7月3日午後10時すぎ、酒に酔った60代の乗客が突然、階段で男性駅員の顔面を殴った。暴行容疑で現行犯逮捕された検察審査会事務局長だった男は、そう供述した。
日本民営鉄道協会(東京)は今年7月7日、JR西日本や大手私鉄、大阪市交通局など全国29事業者の報告を集計し、駅員や乗務員に対する暴力行為の発生状況を公表した。
それによると、平成25(2013)年度に起きた暴力行為760件のうち、暴力をふるった乗客の57%が飲酒しており、39%が午後10時以降の深夜帯に集中していた。
「終点ですので降りてください」。阪神電鉄の車掌が今年6月、車内のシートで泥酔していた乗客に降車を促した。声をかけても泥酔客は動かない。車掌が近づくといきなり胸ぐらをつかまれ、殴られたという。
曜日別では金曜と土曜の発生(計260件)が全体の3分の1を占め、月別では7月(81件)と最多。次いで8月(76件)と続く。