〈多くの人とアイデアを共有する「共創」という考えは、自らの重ねてきた体験から導き出された〉
シャープの東京支社長時代、受付から「アメリカの若者から面会の希望です」と連絡がありました。昭和60年ごろです。ジーンズにTシャツ姿、風貌は髪の毛やひげが伸び放題のヒッピーそのもの。スティーブ・ジョブズさんでした。彼の関心は「その後の電卓はどうなっているの?」にあり、私は「これからはネットワークの時代になるからポータブル性のあるIT機器が求められるようになる」と話しました。IT機器はポケットに入るものが主流になると予測したのです。彼は創業したアップル社を辞任させられ失意の時期に日本に来たようです。しかし、復帰後の快進撃はすごいものがありました。日本のお株を奪うような小型の機器を次々にヒットさせました。自社や自国のことばかりを考えていたら、電子産業は発展しません。私も少しかかわりがあったジョブズさんの成功はうれしかったですね。