「労基法違反などには指導、監督する権限があるが、パワハラの問題になれば、実効性のある窓口を紹介するという対応になる」(担当者)という。
若者の労働相談に乗るNPO法人「POSSE(ポッセ)」の今野晴貴代表はこうした点を踏まえ、外部の専門家らとの連携の重要性を訴える。
今野代表は「厚労省がブラック企業への対策を『若者の使い捨て』と『長時間労働』という2つにしぼって対策を強化しているのは非常に評価できる」と指摘。「パワハラや解雇の問題は労働基準監督署の管轄外。結局、取り締まりができないし、限界がある。そのため、弁護士や民間支援団体などとしっかり連携することが大切ではないか」と主張している。
頼りはネット検索
ブラック企業へ不安を募らせる若者は多い。
就職活動中で企業の面接会場にいた大阪市の男性(22)は、気になる企業があれば必ずやることがあるという。その会社がブラック企業であるかどうかのインターネット検索だ。
検索項目に自分が気になる「企業(○○会社)」に「ブラック企業」と単語を入力し、企業にまつわる噂を調べるという。ネット情報が頼みの綱というわけだ。
男性は今春、大学を卒業し、市内の人材派遣会社に就職したが1カ月ほどで退職した。原因は多大な仕事量と社長からのパワハラ。先輩からは「ここにいる社員は最長で1年」と言われた。
「大学のときは内定がもらえればどこでもよかったんですが、今はブラック企業だけは嫌です」
身を持ってブラック企業がどんなところか体験したという男性はこう話し、企業への面接会場を後にした。この男性のようにブラック企業への過剰な警戒感が、情報が不足気味の中小企業を避ける動きにつながっている面も指摘されている。