相談者は若者が多かったが、中年男性からも「追い出し部屋のような部署に異動させられ、長時間労働を強いられている。リストラ対象なのかもしれず、どうしたらいいのか」という深刻な相談が寄せられたという。
鳴りっぱなしの電話
「10回線用意したが、1日中電話が鳴りっぱなし。受話器を置いても2、3秒後にすぐかかってきた」
大阪労働局の担当者は、1日限定だった無料電話相談の様子をこう振り返った。近畿では大阪を中心に200件の相談が寄せられた。
当日は近畿の各労働局から集められた約30人が対応。1人あたり30分~1時間、相談内容を聞き取ったが、「あまりに電話がかかってくるので、取りきれなかった」(担当者)ほどだったという。
同様の殺到ぶりは各地域でみられた。全国で1042件もの相談が寄せられたが、取りきれない件数も含めると、実際はこれより多くの電話がかかってきたとされる。
厚労省の担当者は「予想外だった。700~800件ほどかなと思っていた」と、ブラック企業に対する不安の深刻さと、事態が逼迫(ひっぱく)していることに気づかされたという。
厚労省が使わない「ブラック企業」という言葉
対策に本腰を入れ始めた厚労省だが、実は「定義づけができない」として、ブラック企業という言葉は使っていない。代わりに「若者の『使い捨て』が疑われる企業」と、単語ではない言葉で表現している。
一般的にブラック企業とは、若者を大量に採用し、長時間、過重な労働をさせた末、退職に追い込む企業のことを指す。だが、採用や退職者数が多いという数字だけでは分からないのも実情だ。
特にパワハラは、労働基準法に明確な規定はなく、受け手の認識などにもよるため、判断するのが難しい場合もある。そもそも明らかな法令違反の疑いがない限り、厚労省が企業に踏み込むのは難しい。