マザー・テレサの“黒いウワサ”が繰り返し囁かれるワケ

ノーベル平和賞を受賞し、日本の教科書でも扱われたマザー・テレサをめぐる“黒いウワサ”が改めて取りざたされている。ついに「聖人」に認定されたが、いまだに醜聞騒ぎが繰り返される背景とは?

《カトリック教会の「聖人」》
カトリック中央協議会によると、生存中にキリストの模範に忠実に従い、その教えを完全に実行した人たちのことで、「殉教」もその証明となる。海外ではジャンヌ・ダルクや2代前のローマ法王、ヨハネ・パウロ2世、日本の教会関連では聖フランシスコ・ザビエル、豊臣秀吉のキリシタン禁止令で処刑された日本26聖人殉教者らがいる。〔カトリック中央協議会

そもそもマザー・テレサとは

マザー・テレサ(ロイター=共同)

マザー・テレサ(ロイター=共同)

現マケドニアに生まれるも、インドに渡り奉仕活動に尽力

マザー・テレサは1910年現マケドニア生まれで、18歳でアイルランドの修道院に入ったが、数カ月後にインドに渡る。その約20年後に貧しい人々のために奉仕せよとの神の啓示を受け1948年に奉仕活動を開始、50年に修道会「神の愛の宣教者会」を設立

マザー・テレサ、9月に聖人へ ローマ法王が発表〔2016年3月16日 CNN〕

1997年に死去した際はインドが国葬。日本の教科書でも紹介

1971年にはローマ法王パウロ6世から勲章「ヨハネ23世教皇平和賞」を授章されたのを皮切りに、ノーベル平和賞など数多くの賞を受賞。1997年に、87歳で亡くなった時には、インド政府が国葬を行った。日本でも、中学校の英語の教科書道徳の教材で紹介されている。

聖女ではなかったマザー・テレサ 「洗脳看護」「カルト施設」、その実態とは!?〔2013年3月13日 ハピズム〕

9月4日に「聖人」認定

バチカンで認定行事「列聖式」が執り行われた

マザー・テレサをカトリック教会最高の崇敬対象「聖人」に認定する列聖式が2016年9月4日、バチカンのサンピエトロ広場で開かれた。列聖式はカトリック教会で最高の崇敬対象である「聖人」に認定する行事。

マザー・テレサを「聖人」認定 法王「彼女のほほ笑みを苦しむ人に」 バチカンで列聖式

殉教者でない人が認定されるためには2つの「奇跡」が必須

殉教者でない人の「聖人」認定にはまず専門家によりふさわしい人物かを審査される。審査通過後は、聖人の前段階に当たる「福者」に認定されるが、死後に起こした2つの「奇跡」が必須条件。奇跡とは、医学や科学では解明できない病いを瞬間的かつ永続的に回復させる「癒やしのわざ」。

ヨハネ・パウロ2世が「聖人」に 認定されるための要件とは?〔2014年4月27日 THE PAGE〕

マザー・テレサは2003年に1つ目の奇跡が認定され「福者」に

マザー・テレサは2003年、当時のローマ法王ヨハネパウロ2世により、マザー・テレサへ祈ったインド人女性の腹部の腫瘍が消えたことを奇跡と認められ、「福者」に列せられていた。死後5年での福者認定は異例のスピード。

マザー・テレサ「聖人」認定へ 「奇跡2度起きた」ローマ法王が承認〔2015年12月20日 朝日新聞〕

2015年末に現法王により2つ目の奇跡が認められた

伊カトリック協会紙によると、現ローマ法王フランシスコは2015年12月、脳腫瘍を患っていたブラジル人男性がマザー・テレサへの祈りのおかげで回復したとして2つ目の奇跡を認定した。

マザー・テレサ、9月に聖人へ ローマ法王が発表〔2016年3月16日 CNN〕

9月4日、バチカンのサンピエトロ広場に掲げられたマザ-・テレサの肖像画の下で、祝福する法王フランシスコら

9月4日、バチカンのサンピエトロ広場に掲げられたマザ-・テレサの肖像画の下で、祝福する法王フランシスコら

テレサをめぐる“黒いウワサ”とは

最初は存命中の1994年、英ジャーナリストらがドキュメンタリーで「まさしくカルト」とテレサを強く批判

2011年に亡くなった無神論者の英国出身ジャーナリスト、クリストファー・ヒッチンズ氏とタリク・アリ氏は1994年、「地獄の天使」と題したドキュメンタリーでマザー・テレサを強く批判。彼女の運営する施設は「まさしくカルト」と指摘している。

Why Mother Teresa is still no saint to many of her critics〔2016年3月15日 The Washington Post(英語)〕

「体制の協力者だった」とハイチの独裁者らとの親交も暴露

ヒッチンズ氏らは同ドキュメンタリー内で、マザー・テレサを“体制の協力者”とも批判。特に、悪名高き独裁者、ハイチのジャン・クロード・デュヴァリエとの親交を暴露。ヒッチンズ氏はその後、自身の著書などでもテレサの批判を続けた。

Why Mother Teresa is still no saint to many of her critics〔2016年3月15日 The Washington Post(英語)〕

「地獄の天使」と題したドキュメンタリー

没後の2013年にはカナダの大学論文が「テレサの美談は、でっちあげ」と発表

2013年にカナダの宗教学専門誌「Religieuses」でモントリオール大学とオタワ大学の研究者が発表した論文は、マザー・テレサの美談や名声は、カトリック教会の宣伝キャンペーンのためにでっちあげられたものであり、聖人には程遠い人物だったと結論づけている。

聖女ではなかったマザー・テレサ 「洗脳看護」「カルト施設」、その実態とは!?〔2013年3月13日 ハピズム〕

テレサの名を世界に広めたのは1969年製作の英BBCドキュメンタリー

論文はテレサの名が一気に世界に広めたのは、英BBCのマルコム・マガリッジ氏の力がもっとも大きいと指摘。中絶反対派でカトリック右派の彼女に共鳴した同氏は1968年にロンドンで彼女と面会し、69年にドキュメンタリー映画を製作。コダック社も彼女を宣伝に使い、その顔は世界中に知れ渡った。

聖女ではなかったマザー・テレサ 「洗脳看護」「カルト施設」、その実態とは!?〔2013年3月13日 ハピズム〕

世界100カ国にあるテレサのホスピスは衛生状態が悪く満足な治療が施せなかった

カナダの2大学の研究者らによると、マザー・テレサが100カ国で計517箇所に開設したホスピス『死を待つ人々の家』は、衛生状態が悪く、医薬品も慢性的に足りず、満足な治療が施せなかったと報告している。

マザー・テレサは聖人ではなかった〔2016年4月12日 Huffington Post〕

一方で多額の寄付はあり、金銭的には困窮していなかった

2大学は「『神の愛の宣教者会』は何百万ドルもの多額の寄付金を受けており、金銭的に困っているわけではなかった」という事実を突き止めたとも述べている。

聖女ではなかったマザー・テレサ 「洗脳看護」「カルト施設」、その実態とは!?〔2013年3月13日 ハピズム〕

患者には痛みに耐えることを賛美して癒やすという「怪しげ」な療法

論文は、マザー・テレサは、患者の痛みを和らげることはせず、痛みに耐えることを賛美して癒やすという、怪しげなことをしていたと報告。一方で、彼女自身は、衛生的で設備が整った近代的な米国の病院でペースメーカー手術を受け、痛みを和らげる麻酔薬を投与されながらの治療だったと指摘する。

聖女ではなかったマザー・テレサ 「洗脳看護」「カルト施設」、その実態とは!?〔2013年3月13日 ハピズム〕

テレサが起こした「奇跡」とされる病気の治癒は「薬によるもの」と医師が証言

バチカンは「マザー・テレサは、ひどい腹痛に苦しむ…若いインド人女性の腹部に、宗教的なメダルを置き、祈ったことで治癒」し、「奇跡」と伝えているが、医師は、「女性が患っていた卵巣嚢腫と結核は、投与された薬により治癒したのだ」と証言している。

聖女ではなかったマザー・テレサ 「洗脳看護」「カルト施設」、その実態とは!?〔2013年3月13日 ハピズム〕

「列聖」決まり、またも批判噴出

「マザー・テレサの奉仕活動はキリスト教への改宗を目的としたもの」(インド右翼団体指導者)

インド与党の支持母体であるヒンズー教至上主義団体「民族義勇団」(RSS)の指導者は2月23日、マザー・テレサの奉仕活動はキリスト教への改宗を目的としたものであると発言。同国内では抗議の声が上がった。

インド右翼団体指導者の「マザー・テレサの奉仕は改宗目的」発言で抗議相次ぐ〔2015年3月4日 クリスチャントゥデイ〕

「列聖は、テレサの慈善事業の価値についての論争を激化させる」(ワシントン・ポスト)

米ワシントン・ポスト紙(電子版)は3月15日、マザー・テレサの列聖について、「多くのファンはローマ法王庁の発表を祝福をもって受け入れるだろうが、彼女の慈善事業や伝説が残した価値については、おそらく、論争を激化させるだろう」と指摘。

Why Mother Teresa is still no saint to many of her critics〔2016年3月15日 The Washington Post(英語)〕

「列聖はマザー・テレサの問題だらけの伝説に蓋をすること」(ハフィントンポストUS版)

Huffington Post US版では、インド出身の編集者クリティカ・ヴァラグール氏が、「マザー・テレサの列聖は、彼女の問題だらけの伝説に蓋をすることになる」と主張、「彼女は聖人ではない」とまで言い切っている。

マザー・テレサは聖人ではなかった〔2016年4月12日 Huffington Post〕

聖女の“裏の顔”が取り沙汰される背景とは?

支持回復のためにテレサを「メディア・キャンペーン」に利用するカトリック教会への反発

カナダの2大学による論文は、マザー・テレサの美談や崇高なイメージが「弱体化したカトリック教会」に対する支持を回復させたい教会側の「メディア・キャンペーン」だったと結論づけている。列聖を前に改めてテレサの悪評が表面化する理由は、こうした教会側への反発との見方もある。

マザー・テレサは聖人ではなかった〔2016年4月12日 Huffington Post〕

1990年代から聖職者らによる児童への性的虐待が明るみに。国連も「教会が隠蔽」と報告

1990年代ごろから米メディアは、カトリック教会の関係者らによる児童への性的虐待を指摘し始め、2002年にはボストンの地元新聞が、地元の教区で起きた神父による虐待を報じ、世界的な注目を集めた。国連(UN)も2014年、カトリック教会が数万人の聖職者による児童虐待を隠蔽してきたとする報告書を発表している。

破産申請続く米カトリック教会、性的虐待の和解は進められるか?〔2014年2月26日 THE PAGE〕

不透明な支出や業者との裏取引など、バチカンの放漫財政も問題化

伊の暴露本によると、ローマ法王フランシスコはいま、膨れ上がる人件費、チェックなしの支出、不当な代金を請求する業者との裏取引など、バチカンの放漫財政に悩まされている。全世界の信者からバチカンに寄せられた献金のうちの6割がローマ法王庁の赤字の補填に使われていた疑惑も浮上している。

就任直後の法王、バチカン放漫財政に激怒… 暴露本で判明〔2015年11月5日 AFP〕

教会はかつて、人道上大きな役割を果たしてきたが、現代では「犯罪や腐敗の温床」に

カトリック教会はかつて、特権的立場を活用し、人権弾圧が横行する国などでは、人道上の「駆け込み寺的な存在」として大きな役割を果たしてきたが、一方で、「犯罪や腐敗の温床」にもなり、「透明性が要求されるような現代では、その負の側面が目立つようになってきた」。

国連がカトリック教会に対して、子供の性的虐待問題を指摘。その背景にあるもの〔2014年2月10日 ニュースの教科書〕

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