効き方は男性用と違う 女性用バイアグラ「アディ」の基礎知識

「女性用バイアグラ」とも呼ばれる新薬フリバンセリン(ロイター)

「性的欲求低下障害(HSDD)」治療薬として8月に米国で認可された「フリバンセリン」。通称「女性バイアグラ」とされているが、男性用性的不能(ED)治療薬である“本家”とはその効き方などに大きな違いがある。

《性的欲求低下障害(HSDD=Hypoactive Sexual Desire Disorder)》
性行為に対する興味や欲求が欠如・不足し、著しい苦痛を感じたり人間関係に支障を来したりする状態。性機能障害のひとつ。

「女性用バイアグラ」米で処方薬として認可

認可されたのは新薬「フリバンセリン(商品名アディ)」

米食品医薬品局(FDA)は8月、女性の性的欲求低下障害の治療薬で「女性用バイアグラ」とも呼ばれる新薬フリバンセリン(商品名アディ=Addyi)を処方薬として認可したと発表した。

「女性用バイアグラ」認可 米、性的欲求低下治療で初

「性的欲求低下障害(HSDD)」治療薬として承認された

製造したのは米製薬会社スプラウト・ファーマシューティカルズで、FDAの声明によれば、フリンバンセリンを認可したのは、特に、性欲が減退した閉経前の女性などにみられる「性的欲求低下障害(HSDD)」の症状を改善するためだという。FDAの諮問委員会は賛成18、反対6でこの新薬の販売を促進する判断を下した。

米FDA、「女性用バイアグラ」を認可〔2015年8月19日 AFP〕

女性の性欲を高めるために開発された初めての薬

FDA医薬品評価研究センターのジャネット・ウッドコック氏は「薬剤認可により、性欲減退に悩んでいる女性たちに認可を受けた治療法の選択肢を提供できる」と述べた。女性の性欲を高めるために開発された初めての薬剤といえる。

米FDA、「女性用バイアグラ」を認可〔2015年8月19日 AFP〕

10月17日までに発売予定。価格は月あたり350~400ドルか

スプラウト社はフリバンセリンを10月17日までに発売したい考え。同社のホワイトヘッドCEOによると、価格はバイアグラを1カ月服用した場合と同程度で月あたり350~400ドルにする予定という。

朗報、女性用バイアグラ 米初認可、10月にも市販 市場創出に弾み〔2015年8月20日 Bloomberg / Sankei Biz〕

望まれていた女性用の治療薬

米国の成人女性の3人に1人がHSDDに悩んでいる

スプラウト社は、フリバンセリンが、米国女性の10人に1人、最大1600万人の治療に役立つだろうとみるが、この数はHSDDを抱える人のごく一部にすぎない。同社によれば、米国の成人女性の3人に1人が性欲低下に悩んでいる。

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識〔2015年9月8日 Newsweek〕

セックスへの関心がなくなった結果、パートナーとの関係が困難になった女性も多い

FDAは2014年秋、女性の性的欲求低下障害とそれが一体どういった影響を与えるかということに焦点を当てたワークショップを開催。多くの女性は、セックスへの関心がなくなった結果、パートナーなどとの関係で困難に直面したと証言したという。

FDA、初の「女性用バイアグラ」認可 重篤な副作用も〔2015年8月19日  WSJ〕

臨床試験では平均36歳の女性被験者が5カ月間服用した結果、性欲が増大(米紙)

米紙ロサンゼルス・タイムズによると、米国の製薬会社が行った臨床試験では、平均36歳の女性被験者がフリバンセリンを5カ月間服用した結果、偽薬(プラセボ)を服用した場合と比較して、性欲が増大したという。

米で認可「女性用バイアグラ」とは? 副作用や性的偏見との議論も

治験に参加した女性は夫との夜の営みも復活したと語る(米紙)

米紙ワシントン・ポストは、フリバンセリンの治験に参加した複数の女性のうちの一人はセックスレスに悩み、結婚生活さえも危うくなりかけていたが、治験に参加したことで夫との夜の営みも復活したという。この女性はそのときの経験を「電気スイッチが入ったかのよう」とたとえた。

米で認可「女性用バイアグラ」とは? 副作用や性的偏見との議論も

ただし男性用の「バイアグラ」とは効き方が異なる

「『女性用バイアグラ』と呼ばれるが、実際は(バイアグラと)かなり違う」(レオノア・ティーファー氏)

ニューヨーク大学医学大学院の心理学者レオノア・ティーファー氏は「『バイアグラ』が爆発的に売れたから、女性の性的問題に関する薬は何でも『女性用バイアグラ』と呼ばれるが、実際はかなり違う」と、バイアグラとフリバンセリンの違いを指摘する。

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識〔2015年9月8日 Newsweek〕

フリバンセリンは脳の神経伝達物質に働きかける薬で毎晩服用しなければならない

バイアグラは性器の血流を改善して勃起を促進するのに対し、フリバンセリンは抗うつ剤などと同様、脳の神経伝達物質に働きかける薬。バイアグラは必要なときだけ服用し、45分以内に効果が表れるが、フリバンセリンは毎晩服用しなければならない。

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識〔2015年9月8日 Newsweek〕

同薬はもともと抗うつ剤としてドイツの製薬会社が開発したもの

フリバンセリンはもともと、抗うつ剤としてドイツの製薬会社が開発した。抗うつ剤としての効果は今ひとつだったが、ドーパミンの分泌などに作用することが分かった。狭心症の治療薬として開発・研究が進められていたバイアグラが男性用性的不能(ED)治療薬として効果があることが確認されたのと同様の経過をたどった。

米で認可「女性用バイアグラ」とは? 副作用や性的偏見との議論も

「効果のピーク」は服用開始から8週間後

米の結婚・性の健康センターのスタンリー・アルトホフ事務局長によれば、フリバンセリンは「ドーパミンの分泌を促し、2種類のセロトニンを調整する」。臨床試験では、偽薬を服用した女性に比べて、毎日服用した女性が性的問題が改善されたのは服用開始から4週間後で、ティーファー氏(前出)によると「効果のピーク」は服用開始から8週間後。

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識〔2015年9月8日 Newsweek〕

媚薬のように突然体がうずき出して性交渉を求めたくなるというものではない

医療関係者によると、媚薬のように突然、女性が体がうずき出して性交渉を求めたくなるというものではなく、フリバンセリンを服用して性交渉に臨んでもその女性がエクスタシーを感じるかどうかは別問題だという。

米で認可「女性用バイアグラ」とは? 副作用や性的偏見との議論も

効果はわずかで、「ない」という女性も

服用した女性が満足を得た性行為の回数は月に平均4.4回と劇的な効果はない

フリバンセリンを服用した女性は、満足を得た性行為の回数が月に平均4.4回。偽薬を服用した女性は平均3.7回。臨床試験前の調査では平均2.7回。バイアグラのような劇的な効果はない。一方で、HSDDに悩む女性にとって、月に1回でも満足を得られる性行為ができれば価値はあるかもしれないとアルトホフ氏(前出)は言う。

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識〔2015年9月8日 Newsweek〕

8週間たっても効果がない場合は服用をやめた方がよい

フリバンセリンを製造するスプラウト社のホワイトヘッドCEOは、8週間たっても効果がない場合は服用をやめた方がよいとする。

朗報、女性用バイアグラ 米初認可、10月にも市販 市場創出に弾み〔2015年8月20日 Bloomberg / Sankei Biz〕

一時的な性欲低下の場合は、生活の変化やカウンセリングで改善されることも

アルトホフ氏(前出)は、多くの女性は、生活を変えてストレスを軽減する、抗うつ剤の服用をやめる、恋愛カウンセリングを受けるなど、投薬以外のほうが効果は高いかもしれないと言う。臨床試験に参加した女性は結婚期間が平均10年で、5年近くHSDDに苦しんでいた人が多く、一時的な性欲低下の場合は、この新薬が向いていない可能性もある。

「女性用バイアグラ」の正しい基礎知識〔2015年9月8日 Newsweek〕

「極めてちっぽけな効果にすぎない」(NPO団体)と服用自体に否定的な意見もある

フリバンセリンに否定的な立場をとってきた非営利団体「全米女性保健ネットワーク」のシンディー・ピアソン代表は、臨床試験に参加した女性たちが「満足だと感じたときは月に1回ほど増えたが、それは極めてちっぽけな効果にすぎない」と話している。

FDA、初の「女性用バイアグラ」認可 重篤な副作用も〔2015年8月19日  WSJ〕

服用には「重篤な副作用」を伴う場合も

9.6%の確率で主に眠気、目まいと吐き気

2013年に医学誌に掲載されたフリバンセリン群542人と偽薬群545人を対象にした試験では、主に眠気、目まいと吐き気の副作用が確認された。これらの症状のため、同薬群の9.6%は臨床試験を中止した。偽薬群では3.7%だった。

FDA、初の「女性用バイアグラ」認可 重篤な副作用も〔2015年8月19日  WSJ〕

アルコールとの併用で低血圧と失神を起こす可能性。ホルモン避妊薬との併用にも注意

FDAの分析によると、フリバンセリンには、とりわけアルコールを飲んだときの服用で低血圧と失神という「重篤なリスク」があった。ほかにも、同薬とホルモン避妊薬を併用した女性は、偽薬とホルモン避妊薬を併用した女性よりも「有害事象の発生確率が高い傾向にあった」ことが分かった。

FDA、初の「女性用バイアグラ」認可 重篤な副作用も〔2015年8月19日  WSJ〕

FDAの諮問委員会が女性の性欲向上に効果があるとしてFDAに承認を勧告した「フリバンセリン」の錠剤。この錠剤はしばしば「女性用バイアグラ」と称される(AP)

FDAの諮問委員会が女性の性欲向上に効果があるとしてFDAに承認を勧告した「フリバンセリン」の錠剤。この錠剤はしばしば「女性用バイアグラ」と称される(AP)

今回の認可の背景に「性的偏見」めぐる議論

1998年に認可し普及してきたバイアグラに対し、女性用の治療薬は登場していなかった

性機能不全の治療薬は、男性用では米ファイザーのバイアグラが1998年に認可され、以来普及が進んできた。同薬の2014年の売上高は16億9000万ドル(約2100億円)に達している。しかし、女性用はこれまで登場していなかった。

朗報、女性用バイアグラ 米初認可、10月にも市販 市場創出に弾み〔2015年8月20日 Bloomberg / Sankei Biz〕

スプラウト社から援助を受ける団体がネットで嘆願「男性向けは24種類も承認しているが、女性向けはゼロ」

フリバンセリンについては、以前から、スプラウト社と「イーブン・ザ・スコア」という団体がFDAに認可を求めていた。スプラウト社から部分的に資金援助を受けている同団体はネット上の嘆願で、FDAは「男性の性機能障害の治療薬を24種類も承認しているが、女性向けはゼロだ」と指摘してきた。

FDA、初の「女性用バイアグラ」認可 重篤な副作用も〔2015年8月19日  WSJ〕

2013年の認可却下後、FDAは一部の医師や研究者から「性差別的」と批判を浴びてきた

FDAはフリバンセリンについて、効果が低いとして2013年に認可を却下したが、その後、一部の医師や研究者から「性差別的だ」と批判を浴びた。HSDDに対する認識を高めた諮問機関は15年6月にようやく、治療の改善につなげたいとして、同薬の認可を勧告した。

朗報、女性用バイアグラ 米初認可、10月にも市販 市場創出に弾み〔2015年8月20日 Bloomberg / Sankei Biz〕

女性向け“即効薬”製品化も進行中

必要なときに服用するタイプの薬の臨床試験が最終段階

すでに女性向けに、本家バイアグラのように必要なときに服用するタイプの薬の製品化の手前までこぎつけている製薬会社もある。米パラティン・テクノロジーズは、ブレメラノチドという女性用HSDD治療薬の試験で最終段階に入っている。

朗報、女性用バイアグラ 米初認可、10月にも市販 市場創出に弾み〔2015年8月20日 Bloomberg / Sankei Biz〕

開発する製薬会社は2018年初めにも発売できるとする

同社のカール・スパナCEOは、ブレメラノチドについて、2018年初めにも発売できるとの見通しを示している。社名は伏せながらも、販売ライセンスをめぐって自社よりも規模の大きい複数の製薬企業と交渉を行ってきたと明かす。

朗報、女性用バイアグラ 米初認可、10月にも市販 市場創出に弾み〔2015年8月20日 Bloomberg / Sankei Biz〕

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