バチカンのサンピエトロ広場に集まった聴衆に手を振るローマ法王フランシスコ。地球温暖化に警鐘を鳴らす発言が共感を呼び、世界に波紋を広げている=17日(ロイター)

温暖化放置で「最後の審判」 法王の異例の提言に世界が衝撃

信者から高い支持を得ているローマ法王フランシスコが、地球温暖化の進行に警鐘を鳴らす「対処指針」を発表。法王がこのような形で環境問題や政治に提言するのは極めて異例で、世界に波紋を広げている。

《ローマ法王フランシスコ》
78歳。アルゼンチン出身。2013年3月に南米出身者では初の法王に。「貧者のための教会」を掲げる「庶民派」の姿勢はそれまでの法王のイメージを変え、その教会改革に期待が高まっている。13年には米誌タイムが「今年の人」に選出。公式ツイッターのフォロワーは600万人を超える。(2015年6月現在)

ローマ法王、環境問題で初の指針(6月18日)

環境問題への対処法を提案する重要な公文書「回勅」を発表

フランシスコ・ローマ法王は6月18日、環境問題に関する公文書「回勅(かいちょく)」を発表。184ページに及ぶ文書は法王庁が科学など幅広い文献を参考に1年がかりでまとめたもの。

温暖化放置で“最後の審判” 法王が異例の「教え」 警鐘に衝撃広がる

法王という立場で、直接的に環境問題や政治に言及した例は初めて

回勅は通常、ローマ法王から世界10億人のカトリック信者に宛てて教えを説く手紙として発表される。しかし法王は今回、「この惑星に住むすべての人との対話を望む」とした。法王という立場で、直接的に環境問題や政治問題に言及した例はなく、異例といえる。

ローマ法王、地球温暖化に警鐘 「文化的革命」呼びかけ〔2015年6月19日 CNN〕

ローマ法王フランシスコが発表した「回勅」(ロイター)

ローマ法王フランシスコが発表した「回勅」(ロイター)

異例の回勅、その内容とは

「『最後の審判』を軽視することはできなくなった」と生活を見直す必要性を訴える

法王は回勅の中で、「(新約聖書の)最後の審判の日の予言に皮肉や軽視で応じることは、もはやできなくなった」と指摘し、人類の自己破壊を防ぐには生活スタイルを変える「大胆な文化革命」が必要だと訴えた。

温暖化放置で“最後の審判” 法王が異例の「教え」 警鐘に衝撃広がる

「私たちの故郷である地球は巨大なごみの山のよう」

法王は「地球温暖化は人類がつくり出した問題だ」と明確に指摘。「私たちの故郷である地球はますます巨大なごみの山のような様相を呈し始めている」と、化石燃料に加え、インターネットとデジタル機器や大量生産・大量消費に依存した発展モデルが問題を悪化させていると批判。

ローマ法王、地球温暖化に警鐘 「文化的革命」呼びかけ〔2015年6月19日 CNN〕

国際会議を厳しく批判。COP21での削減目標の合意を強く求めた

法王はまた、回勅で、最近の国際会議では「政治的な意志が欠如し、効果的な合意に達することができなかった」と批判し、各国首脳らに2015年末の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)での削減目標の合意を強く求めた。

法王「地球は汚物の山」 気候変動で迅速な対応要求

温暖化は最貧国に被害をもたらすことを強調し、先進国の責任は「より大きい」とした

回勅は、温暖化の影響は農業や漁業を生活の糧とする最貧国に最も深刻な被害をもたらしていると強調し、先進国の責任は「より大きい」と訴えた。さらに「強い政治、経済力を持つ人々が、この問題を覆い隠すか、悪影響を軽微なものにしようとしている」とし、温暖化に消極的な米国の保守派を念頭に激しく批判した。

温暖化放置で“最後の審判” 法王が異例の「教え」 警鐘に衝撃広がる

米大統領や環境団体からは歓迎の声

米国保守派の反対に直面しているオバマ大統領や、国連事務総長は法王のメッセージを支持

米国保守派の反対に直面している民主党のバラク・オバマ大統領は6月18日、「われわれには、気候変動による悪影響から未来の子供たちを守るという極めて大きな責任がある」との声明を出し法王のメッセージを歓迎。国連の潘基文事務総長も「すべての宗教指導者による気候変動問題への貢献を歓迎する」と声明で述べた。

温暖化放置で“最後の審判” 法王が異例の「教え」 警鐘に衝撃広がる

WWFなども「メッセージは世界に響きつつある」と喜ぶ

世界自然保護基金(WWF)などの環境保護団体も「法王のメッセージは12億人のカトリック教徒を超えて世界に響きつつある」と喜んだ。

オバマ、潘氏らが歓迎 ローマ法王の温暖化指針

ブラジルの環境保護団体は、法王を温暖化と戦うヒーローに見立てた動画を発表

ブラジルの環境保護団体「オブザバトリオ・ド・クライマ」が発表した動画の中で、フランシスコ法王は、キックボクシングで体を鍛え、地球を破壊しようとする石炭・石油・ガス会社と全面対決する。前半には、本物の法王の名セリフ「神の創造物を破壊するなら、創造物が我々を破壊するだろう」と口にして、神に祈る。

ローマ教皇フランシスコ、環境問題と戦うスーパーヒーローに?(動画)〔2015年6月18日 The Huffington Post〕

法王の発言はこれまでもその率直さで反響を呼んできた

気さくで率直な発言は、教会と信者の距離を近づけてきた

フランシスコ法王の気さくで率直な発言は、時には物議を醸すが、これまでの法王になく、教会と信者の距離を近づけた。バチカンのロンバルディ報道官は「人々は法王を近くに感じ、彼らと同じ言葉で語りかけていると感じている」と述べた。言動が世界のリーダーやキリスト教徒でない人々にも注目されている。

改革派の法王、発言に物議も 「私の任期は短いだろう」〔2015年3月14日 朝日新聞デジタル〕

米信者の4人中3人が法王に好感を抱いているとの調査結果も

2013年12月にCNNテレビと調査会社、ORCインターナショナルが実施した世論調査結果では、米国のカトリック信者のうち88%がフランシスコ法王の実績を評価すると答え、ほぼ4人中3人が法王に好感を持っていることがわかっている。(調査対象:カトリック信者191人を含む全米の成人1035人)

フランシスコ法王、米信者に高い人気 世論調査〔2013年12月25日 CNN〕

5月10日、バチカンで、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長(左)と会談するローマ法王フランシスコ

5月10日、バチカンで、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長(左)と会談するローマ法王フランシスコ

時には物議も フランシスコ法王「語録」

同性愛者を「裁く立場にない」(2013年7月)

記者団からバチカン内部に同性愛の聖職者がいると伝えられた問題について質問された法王は「もし同性愛の人が主を求めていて、善意の持ち主であるならば、私に裁く資格があるだろうか。彼らを排除すべきではない。(同性愛の)傾向は問題ではない。彼らは私たちの兄弟だ」と述べた。

ローマ法王、同性愛者を「裁く立場にない」〔2013年7月30日〕

「法王だって笑いも泣きもする普通の人間だ」(2014年3月)

法王は伊紙のインタビューで「法王だって笑いも泣きもする普通の人間だ」と語り、「スーパーマン」扱いされることに抵抗感を示した。

「庶民派」法王選出1年、イメージ刷新、改革本格化はこれから

「神は生物を進化するよう造った」(2014年10月)

法王は世界の高名な科学者が集うバチカン科学アカデミーでの会合で「世界の始まりは混乱の産物ではない。創造主の手がビッグバンを必要とした」「神は、自然の法則に従って進化するよう生物を造られた」などと述べ、宇宙が誕生したビッグバンも進化論も、神の教えと矛盾しないとの見方を示した。

「神は生物を進化するよう造った」 現ローマ法王も肯定〔2014年10月30日 朝日新聞デジタル〕

バチカンは「道徳的、精神的に病んだ体だ」(2014年12月)

法王は、ローマ法王庁(バチカン)の官僚主義を「道徳的、精神的に病んだ体だ」と痛烈に批判し。地位や富、権力に執着する聖職者たちを「(自分は)不滅だと信じる愚か者」などとかつてないほど厳しい言葉で非難した。

バチカンは「道徳的、精神的に病んだ体だ」 法王が官僚主義を痛烈批判

「もし友人のガスバッリ氏が私の母のことをののしったら、パンチが飛んでくるだろう」(2015年1月)

法王は、フランスの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」が襲撃された事件に関連し、誰にも「公益に資すると思うことを言う」自由と責務がある一方で、それが他人を害するならば口にすべきではないと述べた。「もし友人のガスバッリ氏が私の母のことをののしったら、パンチが飛んでくるだろう」とも。

ローマ法王「表現の自由には限度」 仏紙襲撃〔2015年1月16日 CNN〕

麻薬密売増加を「メキシコ化」と表現(2015年2月)

法王は、友人に送った個人的な電子メールのなかで、母国アルゼンチンで麻薬密売が増えていることを「メキシコ化」という表現を使って嘆いた。これはメキシコ政府の反発を買い、バチカン高官は、「個人的で非公式な電子メール」であり、相手が先にこの表現を使ったのだと釈明した。

ローマ法王、麻薬密売増加を「メキシコ化」と表現 私信で〔2015年2月26日 CNN〕

日本の原発事故は「自分のためになると思ってしたことが自分を破壊する結果」(2015年3月)

法王はバチカンで日本カトリック司教団と会談し、東日本大震災で起きた福島第一原発事故などを旧約聖書の「バベルの塔」になぞらえ、「人間が思い上がり、恣意的な動機で自分に都合のいい社会を作ってしまう。自分のためになると思ってしたことが自分を破壊する結果になっている」と警鐘を鳴らした。

原発事故を「バベルの塔」になぞらえ警鐘 ローマ法王〔2015年3月24日 朝日新聞デジタル〕

「お年寄りはエイリアンではない」(2015年3月)

法王は、「高齢者の切り捨ては大罪だ」と1万2000人の信者を前に言明。「お年寄りはエイリアンではない。私たちも間もなく、あるいはいずれ、必ず年をとる。つい、そのことを考えないようにしがちだが」と語った。

「お年寄りはエイリアンではない」、ローマ法王〔2015年03月05日 AFP〕

「コカの葉をかんでみたい」(2015年6月)

7月に訪問するボリビア政府に対し、「コカの葉をかんでみたい」と要望。コカの葉は、麻薬コカインの原料となるが、ボリビアなどのアンデス山脈周辺では数千年前から高山病薬や弱刺激薬として使用されている。

ローマ法王「コカの葉をかんでみたい」 ボリビア政府に

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