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抗生物質の過剰処方に“警告” 「薬効かない菌」世界で拡大

抗生物質などの薬が効かない薬剤耐性菌が世界で急速に拡大している。抗生物質の使いすぎなどが背景にあるとされ、事態を重く見たWHOは対策を強化した。

《薬剤耐性菌》
薬剤耐性菌とは、その名の通り、抗生物質などの薬剤に対する抵抗力を備えた細菌。こうした菌が増える背景の1つには、抗生物質の乱用があると言われている。

WHOが報告書<2014年4月>

■「薬剤耐性菌が世界各地で広がっている」

世界保健機関(WHO)は2014年4月30日、抗生物質が効かない薬剤耐性菌が世界各地で広がっているとの報告書を発表。WHOは114カ国からのデータを基に調査、報告書を作成。

抗生物質効かない耐性菌、世界各地で拡大 WHO「極めて深刻な状況だ」

■貧困国に限らずあらゆる国で拡大

WHOのフクダ事務局長補はジュネーブでの記者会見で「貧困国など一部の国だけでなく、あらゆる国で拡大している。極めて深刻な状況だ」と強調した。

抗生物質効かない耐性菌、世界各地で拡大 WHO「極めて深刻な状況だ」

■日本でも淋病の治療で抗生物質が効かないケース

日本やフランス、南アフリカなどでは淋病の治療でセファロスポリン系の抗生物質が効かないケースが確認された。強力な抗菌薬カルバペネムが効かない肺炎桿菌も世界的に広がっており、一部の国では半分以上の感染者に効かなかったという。

抗生物質効かない耐性菌、世界各地で拡大 WHO「極めて深刻な状況だ」

■抗生物質の処方を必要最低限に抑えるよう忠告

報告書は、抗生物質の処方を必要最低限に抑えるよう医療従事者らに忠告。一般の患者にも、医師が処方した時のみ抗生物質を使用するようにと呼び掛けている。

抗生物質効かない耐性菌、世界各地で拡大 WHO「極めて深刻な状況だ」

2014年4月30日、ジュネーブで記者会見するWHOのフクダ事務局長補(共同)

2014年4月30日、ジュネーブで記者会見するWHOのフクダ事務局長補(共同)

英首相発起チームが初の報告書<2014年12月>

■年間1千万人が耐性菌によって死亡?

英首相が立ち上げた耐性菌に関する調査チームは2014年12月に初の報告書を公表。効果的な措置を講じなければ、耐性菌による年間死者数は50年に現在の70万人(推定)の14倍以上に当たる1千万人になると予測した。

「薬効かない菌」世界で拡大 2050年に死者1千万の予測

■アジア473万人で最大

地域別ではアジアが473万人で最も多く、アフリカ415万人など。耐性菌拡大に伴う医療費負担増大も懸念されている。

「薬効かない菌」世界で拡大 2050年に死者1千万の予測

■「手術の際に感染症の危険が大きく…」

報告書は「効果的な抗生物質がなくなれば、手術の際に感染症の危険が大きく高まる」と指摘。「世界各国、特に(中国やインドなど)新興国にとって保健、経済上の深刻な結果をもたらす恐れがある」と警告。

「薬効かない菌」世界で拡大 2050年に死者1千万の予測

WHO総会で議論予定<2015年5月>

■行動計画策定へ

2015年5月のWHO総会では耐性菌対策に関する行動計画策定に向けた議論が行われる。

「薬効かない菌」世界で拡大 2050年に死者1千万の予測

“感染症のデパート”中国で相次ぐ薬剤耐性菌の出現

■中国安徽省で採取の菌にペニシリン効かず

安徽省の研究機関「細菌耐薬監測」によると、同省内で採取された黄色ブドウ球菌のペニシリンに対する耐性率は、2012年の86・1%から94・4%に上昇。さらに、日本では黄色ブドウ球菌感染症に処方されている抗生物質、アジスロマイシン(商品名・ジスロマック)に対しても7割以上の耐性を示している。

蔓延する抗生物質が効かない耐性菌の恐怖 豚から人への感染懸念

■12万人が「抗生物質効かない肺結核」

安徽省の衛生部によれば、全国で約12万人があらゆる抗生物質が効果を示さない多剤耐性肺結核を患っているという。これは世界の多剤耐性肺結核患者の4分の1を占める数。

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■抗生物質の消費量、世界平均の10倍超

清華大学などの調べでは、薬品全体の消費量に占める抗生物質の量は、欧米諸国では3割程度であるのに対し、中国では7割に達している。国民1人あたりの抗生物質の年間平均消費量は138グラムで、世界平均の10倍以上とも言われる。中国ではあらゆる抗生物質が薬局で処方箋なしで購入できる。

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■菌が死滅する前に服用を中止

中国では、症状が軽減すると治った気になり、完全に菌が死滅する前に服用をやめてしまう素人処方が横行。その結果、瀕死の状態から蘇った菌が、抗生物質に対する耐性を獲得している。

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日本でも、不必要な処方例が多数

■風邪患者の60%以上に抗生物質

武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹氏によると、日本において風邪患者の60%以上に抗生物質が投与されているという報告(平成21年)があるという。

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■「風邪に抗生物質は効かない」

名郷氏はさらに「理屈で考えても、風邪の原因がウイルスであることからすれば、細菌にしか効果のない抗生物質は、ウイルスが原因の風邪に対しては効果がないと考えるのが合理的」と話す。

むしろ下痢などの副作用も…風邪に「抗生物質」は必要ない

食物を通じて人体に入る抗生物質も

■畜産物の餌や水に抗生物質

中国では、畜産物や養殖魚の育成過程でも、感染症のリスクを軽減するため、餌や水に抗生物質を混ぜることが当たり前。例えば、2013年に問題となったケンタッキー・フライド・チキン(KFC)を展開する米外食大手ヤム・ブランズ中国法人の「薬漬け鶏」には、18種類もの抗生物質が投与されていたという。

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■抗生物質効かない感染症にかかる豚が多発

米ミシガン州立大や中国の研究チームによると、中国各地の養豚場では、ほとんどの抗生物質が効かない感染症にかかる豚が多発。食肉や肥料として流通する糞を通し、人への感染の可能性もあると警鐘を鳴らしている。

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鶏問題でスーパーで鶏肉を調べる中国当局=2012年12月(共同)

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