自転車レースでまさかの「隠しモーター」、ウワサがついに現実に

自転車の国際レースで、選手の車体から「隠しモーター」が発見された。2010年頃から業界ではその存在が噂されてはいたが、今回の発覚を受け「ついに現実になったか」と世界に衝撃が走っている。通称「機材ドーピング」と呼ばれるその仕掛けとは?

《機材ドーピング(メカニカル・ドーピング)》
自転車に電動モーター(電動アシスト機構)を仕込む技術的不正の通称。またその有無を調べる自転車検査を指し、検査は2010年から実施されている。〔CYCLE SPORTS

史上初のメカニカルドーピング発覚

選手の自転車から電動の「隠しモーター」が見つかったと発表

1月30日にベルギーで開催されたシクロクロス選手権に出場した19歳のベルギー人女性選手の車体から電動の「隠しモーター」が見つかったと、国際自転車連合(UCI)が発表。トップレベルの大会で技術的な不正が確認されたのは初めてという。

ベルギー選手が「隠しモーター」使用か “機材ドーピング”と波紋 自転車

U-23女子の部に出場したフェムケ・ファン・デン・ドリエッシュ選手は、U-23のベルギーおよび欧州チャンピオン。今大会でも優勝候補最有力とされていたが、「技術的なトラブル」により途中棄権していた。

遂に発覚した機材ドーピング!シクロクロス世界選手権女子U-23でモーター付きフレームが発覚!〔2016年1月31日 CYCLING TIME〕

「私のではなく友達の自転車だ」と涙ながらにドーピングを否定

ドリエッシュ選手は地元ベルギーのテレビ局に対し、「私の自転車ではない。友達のもので、似ている。友達は土曜日(1月30日)にコースを回って、トラックに自転車を置いた。メカニックはそれが私のものと思い、きれいにして、レースのために準備した」と涙ながらに明かした。

自転車レースで「隠しモーター」、史上初の技術不正が発覚〔2016年2月1日 AFP〕

《シクロクロス》

未舗装の悪路(オフロード)で行われる自転車競技の一つで、障害物が設置されたコースを周回する。ベルギー、オランダ、チェコなどで人気が高く、重要なレースである「ワールドカップ」はロードレースのシーズンオフである晩秋期と冬季に欧州各地で行われている。

シクロクロスとは?〔シクロクロス東京2016〕

「隠しモーター」とは? 発覚したきっかけは

サドルの支柱に挿入する電動アシスト機構

今回の不正モーターが何かは明らかにされていないが、欧州では「Vivax Assist」という電動アシスト機構が市販されており、同製品使用の可能性を指摘する声もある。同製品は、サドルの支柱(シートポスト)に挿入し、ギアによってペダルクランクに動力を伝達する。またバッテリーはドリンクボトルなどに隠される。

フレームに隠しモーター、選手は故意を否定も罰金2400万円の可能性〔2016年2月2日 engadget〕

欧州で市販される「Vivax Assist」

隠しモーターを稼動させると、ペダルは自動的に回り続ける

3度のツール・ド・フランス総合優勝を誇る元選手のグレッグ・レモン氏も隠しモーターの仕組みを紹介。ボトルキャップに仕込まれたスイッチでモーターが稼動。このタイプは「30分回り続ける」と説明。CYCLING TIMEによると、ブレーキ操作部(ブラケット)の下のボタンでスイッチを入れるタイプもあるという。

ゴール直後に自転車を押収、専用の機器を使い電波を探知

ドリエッシュ選手は、棄権後、歩いてゴールに到着。直後、UCIが他の選手の自転車とともに抜き打ちで押収し調査したところ、高周波の電波が出ていることをコンピューターが検知。シートポストを外した結果、クランク軸の近くのボトムブラケットに超小型モーターが仕込まれていたという。

自転車レース世界選手権で「隠しモーター」使用か。本人の驚くべき説明は〔2016年2月1日 Huffington Post〕

UCIによる検査風景(2015年のツール・ド・フランスで)

機材に関する自転車検査は「メカニカルドーピング」と呼ばれ、自転車をX線検査機でチェックする。

シクロクロス世界選で史上初のメカニカル・ドーピング違反が発覚!〔CYCLE SPORTS〕

2010年から浮上「電動アシスト疑惑」

ロードレース界では「まことしやかに噂されていた」(自転車専門媒体)

自転車専門サイト「cyclowired」は、モーターによるメカニカルドーピングは、自転車ロードレース界では以前から議論と技術検証が重ねられており、「まことしやかに噂されていた」という。“老舗”専門誌「CYCLE SPORTS」も「ロードレースではその存在が長らく物議をかもしている」とする。

シクロクロス世界選手権で史上初の機材ドーピングが発覚〔2016年1月31日 cyclowired〕

「数十ワットでも、プロ選手がアシストを得られれば結果はまったく異なる」(日本人元プロ選手)

元プロ選手の栗村修氏は、専門誌「BICYCLE 21」で、ドーピングの仕組みは「さまざま」で「そこまでパワーはない」が、「プロ選手が数十ワットのアシストを得られれば、結果はまったく違ってくる」。「ロードバイクのように繊細…な自転車にも(アシスト)ユニットを仕込むことができる時代になった」と懸念。

BICYCLE 21 / ライジング出版〔@BICYCLE21 Twitter〕

2015年度に規制ルール設定。発覚すれば出場停止と最大2400万円の罰金

メカニカルドーピングについては2015年度にようやく規制ルールが設定され、技術的な不正が認められれば、選手には失格や6か月の出場停止処分、そして最高20万スイスフラン(約2400万円)の罰金が科される。設定と同時に、チェックも厳格化され、抜き打ちで行われるようになった。

遂に発覚した機材ドーピング!シクロクロス世界選手権女子U-23でモーター付きフレームが発覚!〔2016年1月31日 CYCLING TIME〕

あまりにも速すぎた!?…「疑惑」の発端となったのは名選手、カンチェラーラ

2010年に「ツール・デ・フランドル」と「パリ~ルーべ」の連覇を達成したファビアン・カンチェラーラ選手(スイス)は、あまりにも力強い加速を見せたため、自転車にモーターが仕掛けられているのではとの指摘が出ていた。そのパワーや闘士のような精神面から同選手には「スパルタクス」というあだ名も。

カンチェラーラにモーター付き自転車使用疑惑が浮上!?〔2010年6月4日 cycling time〕

メカニカルドーピングの疑いの目が向けられたカンチェラーラ選手。写真はツール・ド・フランスで個人総合成績1位の選手に与えられるイエロージャージを着用する姿=2012年7月、フランス・ルーアン(Thinkstock)

メカニカルドーピングの疑いの目が向けられたカンチェラーラ選手。写真はツール・ド・フランスで個人総合成績1位の選手に与えられるイエロージャージを着用する姿=2012年7月、フランス・ルーアン(Thinkstock)

カンチェラーラの驚異的追い上げ(1)ツール・ド・フランデル2010

動画時間2分40分過ぎから加速し、それまで競っていたボーネン(黄×赤×黒ジャージ)に大きな差をつけるカンチェラーラ(赤)。

カンチェラーラの驚異的追い上げ(2)パリ~ルーべ2010

動画時間2分10分過ぎから、カンチェラーラ(赤ジャージ)が集団を抜け出す。

地面をゼンマイ仕掛けのように動く自転車動画でも“疑惑の目”

2014年の「ブエルタ・ア・エスパーニャ」では、落車したカナダ選手のロードバイクが倒れたまま勝手に路面を動く動画が「ドーピングでは」と話題に。UCIは所属チームの車体検査をしたが、違反は発見できなかったという。

これがウワサの機械ドーピングかと思わず疑ってしまう動画〔2014年9月5日 CYCLE STYLE〕

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