長野県ついに「淫行条例」制定へ 賛否が割れる理由は

全国で唯一、18歳未満の子どもとの性行為を処罰する条例を持たなかった長野県。知事が条例制定に取り組む方針を示したが、県民の間などでは賛否が大きく割れ、議論は続きそうだ。

《淫行条例(淫行罰則規定)》
18歳未満の男女との「みだらな行為」などを処罰する規定を設けた条例で、地方自治体の「青少年健全育成条例」に盛り込まれているのが一般的。東京都では違反した場合、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とし、自治体により罰則内容は異なる。

全国で唯一「淫行条例」なかった長野県

条例に頼らず、「県民運動」で性被害を防止する方針を貫いてきた

長野県では長年、淫行処罰規定を含む青少年健全育成条例に頼らず、地域住民による見回り活動などの「県民運動」を通して、子供の性被害を防止する方針を貫いてきた。

長野県「淫行条例」制定へ…都道府県で唯一なし〔2016年2月2日 読売新聞〕

しかし、教諭逮捕などの事件相次ぎ…県に条例化を求める動き

長野県によると、子供の性被害に関連してた検挙数は1999年の30人から2013年には94人と増加。条例化に踏み切っている東御市でも教諭が相次ぎ逮捕され、県に条例化を求める動きが出ていた。

青少年保護条例 これまでなかった長野県も「必要と判断」〔2016年2月1日 毎日新聞〕

長野県の阿部知事は2月1日、県として条例を制定する方向で取り組む方針を示し、「ネットや携帯電話が普及する中で子供の性被害が増え、看過できない状況にある」と強調。17日開会の県会2月定例会に条例骨子案を示す。

条例化へ県が方針決定「被害は看過できない状況」

長野県の阿部知事は2月1日、県として条例を制定する方向で取り組む方針を示し、「ネットや携帯電話が普及する中で子供の性被害が増え、看過できない状況にある」と強調。17日開会の県会2月定例会に条例骨子案を示す。

「子供を性被害から守る条例」制定方針を決定 長野県知事会見詳報

長野県「淫行条例」をめぐる動き
1960~70年代 淫行の処罰規定を設けた条例が全国に広がるなか、当時の西沢権一郎知事が「条例に頼らず住民一丸となって青少年を守る」方針を掲げる
2007年 東御市が県内で唯一、淫行処罰規定を盛り込んだ条例を制定
2012年 東御市で女子高生とみだらな行為をしたとして同条例違反で教諭2人が逮捕される
2013~2014年 県が外部有識者による「子どもを性被害等から守る専門委員会」を設置、「条例は必要」との提言を受ける
2015年2月 県民の議論を深めるため、条例モデルの検討会を設置
2015年9月 検討会が条例モデルを公表、阿部知事が県議会で「県民の理解を得られれば」条例を制定する方針を示す
2015年11月 阿部知事が条例制定の是非について県議会2月定例会までに判断すると表明

朝日新聞より

条例化、賛否真っ二つ

自民賛成「やっと議論深まる」、共産反対「大人のモラル改善が先」

知事の方針表明を受け、長野県議会では賛否が割れ、自民党県議団は「執行部の意思が明確になり、やっと議論が深まる」と評価。共産党県議団は「条例には反対。大人社会のモラル改善が先だ」と批判した。

子どもの性被害防止条例、県議会は賛否割れる〔2016年2月2日 朝日新聞〕

「県民運動は限界」「規制よりも教育が必要」県民も意見割れる

1月の県民と知事の意見交換会では、「教育県だから(健全育成を)県民運動で行ってきているけど限界にきている」と条例制定を求める声と、「処罰はいらない。規制よりも教育が必要」という慎重論が聞かれた。

知事と若者が意見交換 長野〔2016年1月13日 産経ニュース〕

「異常な状態からの脱却に向けて前進」(産経新聞)

産経新聞は、県は「県民運動」で青少年育成を進めてきたが、ネットの普及で子供たちが出会い系サイトなど性被害に遭うケースが急増した、と指摘。罰則規定のある条例を持たない“異常”な状態からの脱脚に向けて前進した、と論じた。

「条例必要」県が方針決定〔2016年2月2日 産経ニュース〕

「冤罪を生む心配は消えていない」(信濃毎日新聞)

信濃毎日新聞は、県が「真摯な恋愛」は規制しないと答弁していることに対し「真摯な恋愛とは何か、主観的なものになる」と戸惑う声もある、と指摘。恋愛に捜査機関が踏み込んだり、冤罪を生んだりする心配は消えていない、と主張する。

青少年の条例 懸念に答えていない〔2016年2月3日 信濃毎日新聞〕

「淫行条例」は必要? 事例で見る

「淫行条例」ないために…摘発できなかった事例17件20人

長野県警は昨年2月、淫行を処罰するための条例がないために摘発できなかった事例が2013~14年の2年間で17件20人あったと公表した。

「淫行被害」2年で17件 長野県警公表〔2015年3月27日 産経ニュース〕

中3男子買春で罰金10万円のみ、「条例があれば起訴できた」

長野県内で2014年、男子中学生(15)と性的行為に及んだとして無職女性(35)が逮捕された。女性は児童買春については不起訴、脅迫容疑で起訴され、罪は罰金10万円のみ。捜査関係者は「もし条例があれば、淫行容疑で起訴できたはずだ」と話す。

主婦が中3男子を買春…淫行条例ない県の“顛末”

条例違反で逮捕も「真剣に交際していた」と無罪判決(愛知県)

愛知県で2007年、交際中の当時17歳の女子高生と性行為をしたとして30代の男性が青少年保護育成条例違反容疑で逮捕され、後に無罪に。名古屋簡裁は「2人は真剣に交際していた」として、条例が処罰対象にした淫行に当たらないと判断した。

処罰では何も解決しない 青少年の条例〔2016年1月24日 信濃毎日新聞〕

17歳女子高生に淫行で逮捕、無理強いなく「普通の恋愛では?」疑問の声(千葉県)

千葉県で2009年、男子大学生(20)が女子高生(17)への淫行で逮捕された。しかし大学生が無理強いしたり、お金を払ったりした事実はなく、「普通の恋愛では?」とネットで疑問の声が相次いだ。警察は「恋愛関係はなかった」と説明。

「無理強いなく、金も払わず」でなぜ 大学生の淫行逮捕に疑問相次ぐ〔2009年5月14日 JCASTニュース〕

他の自治体では

全国の自治体で導入「淫行条例」、「見せてはならない」の規定も

各都道府県では、青少年健全育成条例に「何人も青少年とみだらな性交又は性交類似行為をしてはならない」(東京都)などと盛り込まれ、罰則はさまざま。福岡県などでは「何人も青少年に対し前項(いん行又はわいせつな行為)の行為を教え、又は見せてはならない」と規定している。

長野県の条例モデル、罰則対象は威迫による18歳未満との性行為と深夜の連れ出し

長野県は法律専門家が作成した「条例のモデル」に沿い、罰則は「威迫」「欺き」「困惑」による18歳未満との性行為等(2年以下の懲役または100万円以下の罰金)と、深夜(午後11時~翌日午前4時)の連れ出し(30万円以下の罰金)を対象とする。

子どもを性被害防止条例化へ 県が方針決定〔2016年2月2日 長野日報〕

冤罪を懸念する声、濫用防止規定を盛り込む方針

阿部知事は、冤罪を懸念する声も根強いため、「(他都道府県の処罰規定より)構成要件を明確化」し、濫用防止規定を盛り込み、「条例の運用面においては捜査における十分な配慮を行う」方針も示した。

子どもを性被害防止条例化へ 県が方針決定〔2016年2月2日 長野日報〕

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