ふるさと納税、分かれる明暗…「出ていく方が多い」自治体悲鳴

豪華な返礼品などで注目を集める「ふるさと納税」。多額の寄付を集める自治体がある一方で、寄付額より控除された税金が上回り、収入を減らす自治体も出てきている。制度開始から8年、ふるさと納税の行方は-。

《ふるさと納税》
自分が応援したい自治体に寄付をすると、自己負担の2000円を差し引いた金額が所得税と住民税から減額される制度。都市部に集中する税収を地方へ分配し、地域活性化につなげる狙いで2008年にスタートした。多くの自治体が返礼に特産品を贈り始めてから利用が急増した。東日本大震災や熊本地震では被災自治体へ義援金を届けるために使われた。減額される税金の上限は所得や世帯構成によって異なる。

豪華な「特典」で収入増やす自治体

ふるさと納税、全国で1653億円と前年度比4倍に

総務省は6月、応援したい自治体に寄付すると税が軽減される「ふるさと納税」による2015年度の地方自治体への寄付額が計1652億9102万円となり、前年度の4.3倍に増えたと発表した。件数は3.8倍の726万件となった。

ふるさと納税額、昨年度は4倍超の1653億円に 寄付金トップは宮崎県都城市

なぜ急増…お礼の「特典」充実、制度も拡充された

ふるさと納税は、2015年4月から減税対象となる寄付額の上限が2倍に引き上げられ、各地の自治体がお礼の特典を充実させたことで急増。また年間5自治体までなら確定申告が不要な「ワンストップ特例制度」も始まった。

ふるさと納税額、昨年度は4倍超の1653億円に 寄付金トップは宮崎県都城市

寄付額1位は宮崎・都城市の42億円、特産肉や焼酎が人気

ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」によると、2015年4月からの1年間で最も多く寄付を集めたのは宮崎県都城市で42億3123万円。返礼品の特産肉や地元の焼酎が人気を集めた。次いで静岡県焼津市(38億2548万円)、山形県天童市(32億2788万円)など。

ふるさと納税42億円集まった!都城市がトップに

寄付で認定こども園を無料化…北海道・上士幌町は人口が増えた

寄付額が全国有数の北海道上士幌町は2015年度、寄付を財源に保育所と幼稚園の機能を併せ持つ認定こども園を一部無料化して開設。減少が続いていた人口が4カ月間で40人増え、町の担当者は「昭和時代に人口が減り始めてから初めての現象」と驚く。

ふるさと納税、裾野広く 15年度寄付件数3.8倍に〔2016年6月15日 日本経済新聞〕

一方で、収入減となる自治体も

ふるさと納税で寄付する人が住む自治体は、その分税収が減る

ふるさと納税を使って寄付する住民が住む自治体は、寄付すると居住地の個人住民税が軽減されるため、その分税収が減ることになる。制度の広がりとともに、都市部の自治体には悩みもある。

教えて!ふるさと納税 寄付金はどう使われているの?〔2016年6月18日 朝日新聞〕

東京は249億円、神奈川は84億円の赤字

総務省は8月2日、2015年のふるさと納税寄付額を反映して各自治体が16年度に失う個人住民税の金額を発表。前年度比5.4倍の総額998億5000万円。都道府県別で流出額が最多の東京は約249億円、続く神奈川は約84億円の大幅な赤字となる。

2015年ふるさと納税 財源流出、最多は東京〔2016年8月3日 東京新聞〕

東京・世田谷区「看過できないレベル」

東京都世田谷区は、ふるさと納税のために2015年度の住民税の税収が15億~16億円減る見通し。待機児童数が全国で最も多く、対策が追いつかない。政策企画課の笹部昭博課長は「税収の流出は看過できないレベルになってきた」。

教えて!ふるさと納税 寄付金はどう使われているの?〔2016年6月18日 朝日新聞〕

東京・立川市「出ていく分が入る方の数十倍」

東京都立川市は、同市民の他自治体へのふるさと納税が膨らみ、市外へ流出した市税が2013年度は1250万円、2014年度は2025万円にのぼり、「出ていく分が入る方より数十倍も多い」と清水庄平市長。

他自治体へふるさと納税流出…立川市、「お礼品」で歯止め

静岡・富士市「住民サービスができない」

静岡県富士市の2014年の寄付金は約100万円。それに対し、富士市民が外の町に寄付したことで控除金300万円が出ていき、200万円の赤字に。市財政課は「財源がなくなるということで、予定していた事業、住民サービスができない」と述べる。

ふるさと納税 ブームが問うものは〔2015年1月26日 NHK〕

そもそも、ふるさと納税とは?

自治体の税収格差を埋めるためにできた制度

自治体の税収は、過疎化などの問題もあり地方によって大きな差が出る。ふるさと納税は、その格差を埋めるために2008年にできた制度。

【おやこ新聞】まめちしき 「ふるさと納税」どんな制度?

寄付金額に応じて、所得税や住民税の控除が受けられる

故郷や応援したい自治体など自分が住んでいる自治体以外に寄付(納税)をすると、寄付金のうち2000円を超える部分について、一定の上限額まで全額が、原則として所得税と住民税から還付・控除される。

ふるさと納税 特典は特産品だけではなかった! ダイビング、パラグライダー…

自治体は特産品などの返礼で積極的に寄付を募っている

自分の生まれ育った地方に限らず、全国どこにでもできる。それぞれの自治体は、その地方の魅力を伝える特産品などを返礼にすることで、積極的に寄付を募っている。

【おやこ新聞】まめちしき 「ふるさと納税」どんな制度?

ふるさと納税、どうあるべき?

豪華な返礼品で寄付金獲得競争…「本来の趣旨から外れる」批判も

ふるさと納税では、多くの寄付を集めようと豪華な返礼品の返礼品を用意するなど、自治体による寄付金獲得競争が過熱しており、「大都市と地方との税収格差の是正という本来の趣旨から外れる」と批判がある。

豪華返礼に喝!仁義礼智信の五徳の教え…足利市のふるさと納税返礼は足利学校入場券などわずか千円

「過度な返礼品、福祉や教育などとのバランスを」(慶応大学経済学部・土居丈朗教授)

ふるさと納税制度に詳しい慶応大学経済学部の土居丈朗教授は、「返礼品の分は産業振興施策の支出になるわけで、自治体は福祉や教育など他の施策とのバランスを考える必要がある」とし、過度な返礼品への支出をチェックする重要さを説く。

広がるふるさと納税 寄付? それとも通販?〔2016年3月15日 高知新聞〕

「本来の寄付精神をしっかりと育むべき」(元神奈川県知事・松沢成文氏)

元神奈川県知事の松沢成文参院議員は、「寄付金の使い道を自治体のホームページの目立つ場所に明記するなど、返礼品ではなく政策で自治体を選びやすくなるきっかけを作ってほしい。本来の寄付精神をしっかりと育むべきだ」と指摘する。

ふるさと納税はどうあるべきか? 寄付額は急増しているが…

熊本地震では36億円も…被災地支援としても広まっている

東日本大震災をきっかけに、ふるさと納税を通じた被災地支援も広まった。4月に発生した熊本地震では、熊本県に前年度分の40倍近い約36億7000万円が寄せられた。焼酎やデコポンなどの特産品を返礼品として受け取ることができるが、辞退した人も多かったという。

ふるさと納税 利点と問題 復興支援に活用、特典過熱で寄付拡大

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