安全保障関連法が成立 与野党間の激しい攻防の末に、未明の採決

19日未明、参院本会議で安保法案成立に拍手する与党議員ら(ロイター)

集団的自衛権の限定的な行使容認を含む安全保障関連法案は9月19日未明、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。成立阻止を狙った野党との間では連日、激しい攻防が繰り広げられた。

《安全保障関連法案》
集団的自衛権の行使を限定的に容認することなどを盛り込んだ関連法案。自衛隊法や武力攻撃事態対処法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など10本の改正案を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際平和のために活動する他国軍の後方支援を随時可能とする新法「国際平和支援法案」で構成される。

安保関連法が成立

参院本会議で可決(9月19日未明)

集団的自衛権の限定的な行使容認を含む安全保障関連法案は9月19日未明の参院本会議で採決が行われ、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。賛成票は148、反対票は90だった。

安保法案、自民・公明両党の賛成多数で成立、賛成148票

安倍首相は成立を受け、「子供たちに平和な日本を引き渡す」

安倍首相は9月19日未明、安全保障関連法の成立を受け「子供たちや未来の子供たちに、平和な日本を引き渡すために、必要な法的基盤が整備されたと思う。今後も積極的な平和外交を推進し、万が一への備えに万全を期していきたい」と語った。

安保法成立 安倍首相の発言全文「万が一への備えに万全を期す」「今後も粘り強く説明する」

野党が提出した内閣不信任決議案や首相の問責決議案はいずれも否決

民主党などの野党は廃案を目指し、9月18日から19日にかけて、中谷元防衛相の問責決議案や山崎正昭議長の不信任決議案を提出したが、いずれも与党の反対多数で否決。衆参両院には内閣不信任決議案や安倍晋三首相の問責決議案などを提出したが、これらも否決された。

安保法案成立へ 参院、未明の採決 内閣不信任案など否決

前日に続くフィリバスター作戦。民主・枝野氏は1時間44分の演説も

野党は9月18日中の法案成立阻止を狙って、長時間の演説で時間の引き延ばしを図る「フィリバスター」作戦を実行。民主党の枝野幸男幹事長は、不信任案の趣旨説明を1時間44分にわたって行った。「基本的にはアドリブだ」と記者団に話した。

安保国会 衆院本会議で内閣不信任案否決

衆院本会議で首相問責決議案の記名投票に、ひとり牛歩で投票に臨む生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎代表(中央)=9月18日午後、国会・衆院本会議場(酒巻俊介撮影)

衆院本会議で首相問責決議案の記名投票に、ひとり牛歩で投票に臨む生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎代表(中央)=9月18日午後、国会・衆院本会議場(酒巻俊介撮影)

持ち時間「15分」を超えて安保法案に対する反対討論を行う民主党の福山哲郎氏(中央)。背後では各党関係者らが協議した=9月19日午前、参院本会議場(福島範和撮影)

持ち時間「15分」を超えて安保法案に対する反対討論を行う民主党の福山哲郎氏(中央)。背後では各党関係者らが協議した=9月19日午前、参院本会議場(福島範和撮影)

安保関連法案の採決が行われる参院本会議=9月19日午前2時2分

安保関連法案の採決が行われる参院本会議=9月19日午前2時2分

国会議事堂前では、法案が成立した後も法案に反対するグループの数十人が居座り、朝まで「安倍は辞めろ」「採決撤回」などと抗議を続けた=9月19日午前2時20分

国会議事堂前では、法案が成立した後も法案に反対するグループの数十人が居座り、朝まで「安倍は辞めろ」「採決撤回」などと抗議を続けた=9月19日午前2時20分

参院特別委でも与野党の攻防(9月17日)

鴻池委員長は質疑打ち切りを宣言し、安保法案の採決に踏み切った

参院平和安全法制特別委員会は17日午後、鴻池祥肇委員長の不信任動議が否決された直後、鴻池氏が質疑打ち切りを宣言。安保法案の採決に踏みきり、自民、公明両党と次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の賛成多数で可決した。与党は同日中にも、本会議に緊急上程して成立を図る構え。

安保法案特別委で可決 自民、公明など賛成多数 鴻池委員長解任否決の直後に採決

野党側、鴻池氏の不信任動議やフィリバスター作戦で抵抗

参院平和安全法制特別委員会は17日午前、鴻池委員長が開会を宣言したが、野党側は同氏への不信任動議を提出。午後1時に再開したが、討論に立った民主党の福山哲郎幹事長代理らが長々と演説を続けて議事進行を遅らせるフィリバスター(議事進行妨害)作戦で抵抗した。

安保法案 17日委員会採決めぐり攻防激化 野党、鴻池氏の不信任動議提出

参院平和安全法制特別委員会で可決された安保法案。鴻池祥肇委員長に詰め寄る野党議員ら=17日午後、国会・参院第1委員会室(斎藤良雄撮影)

参院平和安全法制特別委員会で可決された安保法案。鴻池祥肇委員長に詰め寄る野党議員ら=17日午後、国会・参院第1委員会室(斎藤良雄撮影)

自民党の大沼瑞穂参院議員(写真中央白のスーツ)に手をかける民主党の津田弥太郎参院議員(写真中央、大沼氏の真上のグレーのスーツ)。大沼氏はこの後、写真右手奥までひきずられ、膝の上に乗せられた後に引き倒された=9月17日、参院第1委員会室(大沼事務所提供)

自民党の大沼瑞穂参院議員(写真中央白のスーツ)に手をかける民主党の津田弥太郎参院議員(写真中央、大沼氏の真上のグレーのスーツ)。大沼氏はこの後、写真右手奥までひきずられ、膝の上に乗せられた後に引き倒された=9月17日、参院第1委員会室(大沼事務所提供)

参院平和安全法制特別委員会で、野党が抵抗する中で委員会開会を宣言した鴻池祥肇委員長(左)に詰め寄って抗議する野党の理事ら=17日午前、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)

参院平和安全法制特別委員会で、野党が抵抗する中で委員会開会を宣言した鴻池祥肇委員長(左)に詰め寄って抗議する野党の理事ら=17日午前、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)

参院平和安全法制特別委で鴻池委員長への不信任動議が提出され、委員長席を取り囲む与野党の議員(左側)ら=17日午前9時50分

参院平和安全法制特別委で鴻池委員長への不信任動議が提出され、委員長席を取り囲む与野党の議員(左側)ら=17日午前9時50分

採決めぐり、日付またぎ徹底抗戦(9月16日)

大荒れ言論の府…野党女性議員ら“人間バリケード”で妨害

16日夜、特別委開会に先立つ理事会が開かれる参院第1理事会室前では、野党女性議員らが入り口を“人間バリケード”でふさぎ、鴻池委員長の入室を妨害。怒号が飛び交う中、理事会は断続的に休憩になるなど紛糾し、17日午前3時すぎ、午前8時50分に理事会を再開することを決めた。

「安保劇場」…大荒れ言論の府 野党議員ら“人間バリケード”

国会周辺では反対デモ続き、13人の逮捕者

国会議事堂周辺では16日も、反対グループによる抗議活動が続き、警視庁は厳重警備にあたった。警視庁公安部は同日、機動隊員の胸を押したなどとして、公務執行妨害容疑で男12人、女1人の計13人を逮捕した。

「安保劇場」…大荒れ言論の府 野党議員ら“人間バリケード”

理事会室前で通路を確保しようとする衛視ともみ合う議員=16日午後、国会内(酒巻俊介撮影)

理事会室前で通路を確保しようとする衛視ともみ合う議員=16日午後、国会内(酒巻俊介撮影)

「怒れる女性議員の会」と記されたピンク色のはちまきを巻いて参院第一理事会室前に集まった議員=16日夕

「怒れる女性議員の会」と記されたピンク色のはちまきを巻いて参院第一理事会室前に集まった議員=16日夕

国会前の安保法案反対デモ。警官隊との小競り合いを繰り返すデモ隊=16日、国会前(早坂洋祐撮影)

国会前の安保法案反対デモ。警官隊との小競り合いを繰り返すデモ隊=16日、国会前(早坂洋祐撮影)

安保法案これまで

集団的自衛権の限定的行使容認を閣議決定(2014年7月1日)

政府は7月1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定した。これを受け、武力攻撃事態法を改正し、他国への武力攻撃でも「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合を「存立危機事態」と定義し、行使できるようにする。

行使容認を閣議決定 戦後の安全保障政策大転換

安保法案を閣議決定(2015年5月14日)

政府は5月14日の臨時閣議で、集団的自衛権の行使容認を含む新たな安全保障法制の関連法案を決定した。安倍首相は閣議後、北朝鮮による核・ミサイル開発などを挙げ「厳しい現実から目を背けることはできない。日本人の命と平和な暮らしを守るため、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行う」と法制化の必要性を強調した。

安保法案閣議決定 首相「日本人の命を守る切れ目のない備え」と意義強調

安保法案が衆院通過(7月16日)

安全保障関連法案は7月16日、衆院本会議で採決が行われ、自民、公明両党と次世代の党の賛成で可決された。民主党など主要野党は採決時に退席。安倍晋三首相は法案の衆院通過を受け、「日本国民の命を守り、戦争を未然に防ぐために必要な法案だ」と強調した。

安保法案衆院通過 衆院本会議、与党の賛成で可決 今国会成立が確実

衆院平和安全法制特別委員会で、採決反対のためプラカードを手に抗議する野党議員とあきれる与党議員=7月15日、国会・衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)

衆院平和安全法制特別委員会で、採決反対のためプラカードを手に抗議する野党議員とあきれる与党議員=7月15日、国会・衆院第1委員室(斎藤良雄撮影)

《集団的自衛権》

同盟国など自国と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、自国に対する攻撃とみなして反撃する権利。国連憲章51条は個別的・集団的自衛権を加盟国固有の権利として認めているが、日本政府は「保有しているが、憲法上、行使は許されない」と説明してきた。

《武力行使の3要件》

憲法9条で許容される武力行使を明確にするため、7月1日に閣議決定された。(1)わが国や密接な関係がある他国に武力行使があり、国の存立や国民の生命などが「根底から覆される明白な危険」がある(2)他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使-が内容で、集団的自衛権の行使も認められた。従来の自衛権発動の3要件と区別するため「新3要件」とも呼ばれる。

安保法案おさらい

成立すれば何が変わる?…自衛隊が他国軍と戦うことができるようになる

柱になるのは集団的自衛権の行使を限定容認した点だ。密接な関係にある国が攻撃されれば、政府は「存立危機事態」に当たるかどうかを判断する。日本の存立や国民の権利が危うくなるケースのことで、これに該当すれば自衛隊は他国軍と一緒に戦うことができる。

【Q&A】よく分かる新しい安保法制

なぜ今なのか?…北の核開発、中国の軍拡など日本の安全保障環境が大きく変わった

日本の安全保障環境が大きく変わったからだ。北朝鮮が核・弾道ミサイル開発を行い、中国は経済成長に伴う軍拡を続けている。しかも中国は領土拡張を狙う野心を隠していない。米国はアジア太平洋地域を重視する政策を進めているが国防費を削減しており、日本の役割を拡大して一緒に東アジアの平和を築こうと呼びかけてきた。

【Q&A】よく分かる新しい安保法制

《安保関連法案のポイント》

・集団的自衛権の行使を「自国防衛」に限り容認。「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求権が根底から覆される」などの要件で認める
・現行法の周辺事態を重要影響事態に改め、放置すれば日本の安全に影響を与える事態での他国軍の後方支援に地理的制限がないことを明確化。支援対象を米軍以外にも拡大
・国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能にする恒久法を新規立法
・国連平和維持活動(PKO)で巡回・警護など安全確保業務を実施可能とし、駆け付け警護を容認

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