がんが劇的改善? 世界的に規制緩和進む「医療用大麻」とは

医療目的で大麻を栽培・使用した末期がん患者の男性の大麻取締法違反罪を問う裁判が行われ、「医療用大麻」への関心が高まっている。国内では違法とされるが、世界的には規制緩和が進む医療目的の大麻とは?

《大麻》
乾燥大麻(「マリファナ」、茶色または草色)、大麻樹脂(「ハシッシュ」、暗緑色の棒状又は板状等)、液体大麻(「ハシッシュオイル」、粘着性のある暗緑色又は黒色のタール状の液体)があり、通常は乾燥した葉などをキセル、パイプ、水パイプなどを使用して吸煙するが、そのまま食べる、溶液として飲むなどがある。〔内閣府

大麻取締法に一石?「山本医療大麻裁判」

医療目的で大麻を栽培・使用した末期がん患者の男性が起訴

2015年12月に大麻を所持していたとして大麻取締法違反(所持)罪で末期の肝臓がん患者が逮捕・起訴され、16年5月現在、東京地裁で裁判が行われている。山本正光被告(58)は、14年10月に余命半年~1年と宣告されたが、大麻ががん改善に有効な可能性があると知り、自宅で栽培・使用した。

末期がん患者が最後にすがった大麻は違法? 劇的改善の被告「命守るため」と無罪主張

大麻使用で痛み緩和や食欲回復、腫瘍マーカー数値も20分の1に

山本被告は、厚労省などに大麻を医療目的で使うための手段について相談したが、法律上「禁止されている」と説明され、製薬会社からも臨床試験を断られたため、大麻を栽培。約1年間の使用で痛みが和らぎ、食欲も回復。抑鬱的だった気分も晴れ、腫瘍マーカーの数値も20分の1になったという。

末期がん患者が最後にすがった大麻は違法? 劇的改善の被告「命守るため」と無罪主張

研究をも禁止する大麻取締法、被告は「生存権の行使」と無罪を主張

大麻取締法は、大麻の栽培・所持を原則として禁止するほか、医薬目的の使用や研究も禁止している。弁護側は、山本被告の大麻所持の事実は認めつつ、「医療目的の大麻所持を禁止することは、生存権を保障した憲法に違反する」などとして無罪を主張。

治療用「大麻」所持禁止は「人権に反する」末期がん患者が「無罪」主張〔2016年4月27日 弁護士ドットコム〕

弁護人「大麻取締法の違憲性を追及していきたい」

山本被告の弁護人、安藤豪弁護士は「大麻使用・所持の解禁を求めているわけではなく…難病をもった患者が治療することまでも禁止していることは人権に反していると訴えている。大麻取締法の違憲性を追及していきたい」と話す。

治療用「大麻」所持禁止は「人権に反する」末期がん患者が「無罪」主張〔2016年4月27日 弁護士ドットコム〕

《大麻取締法》

大麻の栽培・輸出入は、営利目的がなければ7年以下の懲役、営利目的があれば10年以下の懲役となり、悪質性の高い場合には300万円の罰金も。所持、譲渡、譲受は、営利目的がなければ5年以下の懲役、営利目的があれば7年以下の懲役となり、悪質性の高い場合には200万円の罰金も合わせて科される。

大麻の所持や栽培など大麻取締法違反で逮捕された際の刑期と裁判までの流れや対処法〔弁護士ドットコム〕

無罪を求めている神奈川県在住の山本正光被告。横浜市のレストランの料理長をつとめていたが、2000年に肝臓がんが見つかった=4月21日、東京都内(小野田雄一撮影)

無罪を求めている神奈川県在住の山本正光被告。横浜市のレストランの料理長をつとめていたが、2000年に肝臓がんが見つかった=4月21日、東京都内(小野田雄一撮影)

そもそも「医療用大麻」とは

大麻に含まれる物質「カンナビノイド」にさまざまな薬理効果

「医療(用)大麻」とは、大麻を医療目的で使用すること。「日本臨床カンナビノイド学会」に参加した医師によると、大麻に含まれる化学物質は総称して「カンナビノイド」と呼ばれ、現在104種類の物質が知られており、主なものにTHCとCBDがある。

大麻を「ダメ、ゼッタイ」とする根拠は崩れてきた! 世界的に規制緩和が進む「医療大麻」とどう向き合うべき?〔2015年8月18日 HealthPress〕

カンナビノイドの一種、「THC」には多幸感などの精神作用、食欲増進効果

THC(テトラヒドロカンナビノール)には、いわゆる“ハイになる”精神作用(意識の変調、多幸感、幻覚など)があるほか、疼痛緩和、食欲増進などの薬理効果が知られている。

大麻を「ダメ、ゼッタイ」とする根拠は崩れてきた! 世界的に規制緩和が進む「医療大麻」とどう向き合うべき?〔2015年8月18日 HealthPress〕

同じく「CBD」は疼痛緩和、抗けいれんなどの効果も

CBD(カンナビジオール)には高揚感などの精神作用はなく、疼痛緩和、抗けいれん、抗炎症、抗不安などの作用がある。CBDオイルは現在、日本でも輸入可能な大麻サプリメントという。

大麻を「ダメ、ゼッタイ」とする根拠は崩れてきた! 世界的に規制緩和が進む「医療大麻」とどう向き合うべき?〔2015年8月18日 HealthPress〕

カンナビノイドにがん細胞を減少させる働き、との研究報告も

「英国がんジャーナル」や「神経科学…」など、世界的な学術誌では、THCやCBDをはじめとするカンナビノイドが、がん治療において非常に有効であるとする研究結果が発表され、免疫系の再構築に多大な影響を与える働きにより、がん細胞を減少させることも証明されているという。

欧米を中心に「医療大麻」が注目されている理由。がん治療にも効果あり!?〔TABI LABO〕

CBDには難治性てんかん患者の発作を抑える働き

2014年に米国食品医薬品局(FDA)が、通常の抗てんかん薬が効かない「ドラベ症候群」などの難治性てんかんの患者に対しCBDを主原料とした薬の臨床試験を許可。結果、12週間の治療を受けた患者の54%で発作の回数が減少し、9%は発作が全く起こらなかった。

マリファナ合法化の波、米連邦にも〔2015年6月11日 NATIONAL GEOGRAPHIC〕

てんかん患者の子の舌下にCBDオイルを垂らす父親

多発性硬化症の治療薬として承認を得ている大麻薬品もある

英国のGWファーマシューティカルズ社は、多発性硬化症の治療用の大麻薬品「サティベックス」を商品化し、米国以外の28カ国で医薬品として承認を得ている。大塚製薬も、この薬の開発に携わったという。

難病の子供を救う「大麻薬品」企業 株価130%急伸〔2016年3月17日 Forbes〕

【動画】医療大麻やCBDオイルを使用する日本の末期がん患者

「VICE」制作の映像は、CBDオイルを摂取し始めてから症状が劇的に回復した末期がん患者の女性や生後10週間から難知性てんかんに苦しむ少女に密着取材している。

温度管理下で栽培される大麻(iStockより)

温度管理下で栽培される大麻(iStockより)

世界的には合法化の動き、一方で「有害論」根強く

米国23州、イスラエル、カナダ…医療用での緩和進む

米国では23州と首都ワシントンD.C.で医療用大麻が合法化され、一部の州では嗜好品としての使用も緩和。イスラエル、カナダ、オランダでは政府がその製造販売を支援。ウルグアイでは大麻の栽培や売買が合法化され、ポルトガルでは非犯罪化され条件付きで少量の使用が認められた。ドイツでも2017年に医療用が合法化の見通し

マリファナの合法化進む、薬効研究が盛んに〔2015年5月31日 NATIONAL GEOGRAPHIC〕

医療大麻が合法化されている米カリフォルニア州のサンフランシスコにある専門の調剤薬局で列をつくる男性たち=2015年5月17日(iStockより)

医療大麻が合法化されている米カリフォルニア州のサンフランシスコにある専門の調剤薬局で列をつくる男性たち=2015年5月17日(iStockより)

米連邦法下では違法だが、政府には有効性を部分的に認める動きも

米国連邦法は、大麻を最も規制が厳しい「分類I」とし違法薬物に指定しているが、公衆衛生局長官は「ある種の病気の症状」に大麻が「有効」である可能性が示唆されたとして、研究の進展に注目したいと発言。

マリファナの合法化進む、薬効研究が盛んに〔2015年5月31日 NATIONAL GEOGRAPHIC〕

米小児科学会は小児疾患の治療薬開発のための大麻の分類変更を要求

米国小児科学会は2015年に初めて「現時点で適切な治療法がなく、命を脅かし、あるいは激しい衰弱をもたらす」小児疾患の治療薬の開発を促すために、連邦政府が定める大麻の分類の変更を求める声明を出した。

マリファナ合法化の波、米連邦にも〔2015年6月11日 NATIONAL GEOGRAPHIC〕

たばこやアルコールよりも依存性が低いとの研究報告もある

近年、大麻の有害性に関して再認識が進み、2007年の医学雑誌「ランセット」では、大麻はたばこやアルコールより身体依存や身体への有害性が低いと報告されている。

大麻を「ダメ、ゼッタイ」とする根拠は崩れてきた! 世界的に規制緩和が進む「医療大麻」とどう向き合うべき?〔2015年8月18日 HealthPress〕

しかし、国連などは有害性を指摘「人間の精神に影響を及ぼす薬物」

世界保健機関(WHO)は「大麻使用の健康面の影響、慢性的悪影響、医療用大麻の有効性に関する知識に重要な欠落がある」とし、国連薬物犯罪事務所(UNODC)も「大麻は無害な薬草ではなく、慎重な取り扱いが必要な人間の精神に影響を及ぼす薬物」と述べる。

末期がん患者が最後にすがった大麻は違法? 劇的改善の被告「命守るため」と無罪主張

厚労省も慎重論「有効性が実証されているわけではない」

厚労省監視指導・麻薬対策課の担当者は「医療用大麻は有効性が実証されているわけではない上、最先端のがん治療が受けられる日本で、医療用大麻を合法化する必要性は低い。米国では…実際には医療用のみ合法化された州でも嗜好品として蔓延している」と話す。

末期がん患者が最後にすがった大麻は違法? 劇的改善の被告「命守るため」と無罪主張

乱用は「独特の妄想や異常行動、思考力低下を引き起こす」との見解もある

公益財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」は、大麻を乱用すると、気管支や喉を痛め、深刻な場合は、免疫力の低下や白血球の減少などを招くとする。また「大麻精神病」と呼ばれる、独特の妄想や異常行動、思考力低下などを引き起こし犯罪の原因となる場合もあると警告。

大麻常習乱用者の特徴 大麻について〔麻薬・覚せい剤乱用防止センター〕

国内には医療大麻めぐり規制緩和「推進派」も

「抗がん剤やモルヒネが許されて大麻だけが禁止されている現状に疑問」(福田一典氏)

国立がんセンターのがん予防研究部第一次予防研究室室長を務めた医師、福田一典氏は、がん患者には「強い副作用を伴う抗癌剤やモルヒネもやむなく使用されているのが実情。…大麻だけが絶対的に禁止されている現状には疑問」と話す。

末期がん患者が最後にすがった大麻は違法? 劇的改善の被告「命守るため」と無罪主張

「研究すら禁じている大麻取締法に疑問」(前田耕一氏)

医療用大麻の解禁を主張するNPO法人「医療大麻を考える会」の前田耕一代表は「大麻取締法は、医療目的で大麻を研究することすら禁じている」と指摘。現在、大麻所持をめぐり公判中の山本被告も「最終的な目標は、医療用大麻の研究が進むこと」と話す。

治療用「大麻」所持禁止は「人権に反する」末期がん患者が「無罪」主張〔2016年4月27日 弁護士ドットコム〕

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