命をも救う…あまり知られていないタトゥーの役割とは

訪日外国人客の「タトゥー問題」を議論する際、ファッションや文化的な理由で彫る人を例示することが多いが、自分の命を守るための、あるいは精神的なダメージを軽減するためのタトゥーがあることはあまり知られていない。

《タトゥーに対する日本人の意識》
関東弁護士会連合会が2014年6月、20~60代の男女1千人に実施した意識調査では、タトゥーのある人を見て「怖い・不快」と感じた人は87.7%。55.7%が暴力団などを思い浮かべ、芸術やファッションと考える人は24.7%だった。〔朝日新聞

持病やアレルギーの有無を知らせる

緊急搬送時などに役立つ「メディカル・アラート・タトゥー」

緊急搬送時など、自身が伝達できない状況でも、持病やアレルギー、あるいは、見ただけでは判別できない内臓の異常(心臓が左でなく右側にあるなど)を医療従事者などに知らせる方法として、米国やカナダなどには「メディカル・アラート・タトゥー」がある。

ファッション目的ではない「命を救う」タトゥーとは? 眉をひそめる前に知っておきたい〔2016年3月27日 NewsPhere〕

糖尿病

ペースメーカー

「ブレスレットは壊れるけど、タトゥーは永続的」

カナダの新聞記者で3歳の時に1型糖尿病と診断されたクリス・ミラーさん(42)は「何年にもわたり着けてきたけど、メディカル・アラート・ブレスレットは時々壊れる」という。針に対して抵抗感もなかったミラーさんは2013年頃、右腕にタトゥーを彫ったが、「これは永続的」と話す。

What to Know Before Getting a Medical Alert Tattoo〔2015年8月20日 USN(英語)〕

米国でも決して認知度が高いわけではないが、「悪いことではない」(専門家)

最近約10年間の米国の救急医療現場においても、ブレスレットなどに代わるタトゥーの認知度は低い。しかし米国救急医療学会の会長は「それは悪いことではなく、救急救命士がタトゥーを見ることで経験を積んでいくだろう」と指摘する。

What to Know Before Getting a Medical Alert Tattoo〔2015年8月20日 USN(英語)〕

暴力や手術による傷跡をカバーするタトゥー

傷跡を見ることで思い出すツラさやストレスを軽減する効果

DVや事故で受けた傷跡、また、手術痕を目立たなくするためのタトゥーや、過去のリストカット痕を覆うように入れるタトゥーもある。これらは傷跡を見ることで闘病生活などを思い出すストレスを軽減する効果がある。

ファッション目的ではない「命を救う」タトゥーとは? 眉をひそめる前に知っておきたい〔2016年3月27日 NewsPhere〕

傷負う女性に「自信を…」ブラジルの女性タトゥーアーティストに注目

ブラジルのタトゥーアーティスト、Flavia Carvalhoさんは、さまざまな理由で体に傷をもつ女性たちに「自信を取り戻してほしい」と、傷跡を美しいタトゥーで覆う活動「肌には花を(A Pele da Flor)」を2013年ごろから行っている。

「傷跡を恥じないで」暴力や手術の“跡”を美しいタトゥーでカバーする活動がステキ〔2015年9月7日 IRORIO〕

Carvalhoさんの作品…色素沈着が見られた部分も上手に隠す

Cobertura de cicatriz/marca com alteração de cor e relevo da pele! Nesses casos, a tattoo consegue disfarçar bem o "afundamento" de pele que algumas cicatrizes apresentam!

Flavia Carvalho - Daedra Art & Tattooさんの投稿 2016年3月29日

乱射事件に巻き込まれた少女(当時)の手術痕も見事にカバー

Troque a violência pela #paz, troque o ódio pelo #amor... #apeledaflor #tattoovoluntaria #electricink #cwbtattoo

Flavia Carvalho - Daedra Art & Tattooさんの投稿 2015年8月4日

北海道のタトゥーショップは盲腸の手術痕のカバー方法を提案

北海道札幌市にあるタトゥーショップ「マウンテン・ハイ・タトゥーワークス」では、盲腸の手術痕をカバーするため、「アジアンレース的な文様」をホワイトタトゥーで目立たなくすることを提案している。

盲腸痕へのアジアン柄によるレース状のホワイトタトゥー〔MOUNTAIN HIGH TATOO WORKS〕

ネット上に溢れる“傷跡カバー”のアイデア

乳房切除後の乳がん患者に“希望を与える”タトゥー

術後、乳房の変形や傷跡が気になるケースも少なくない

乳がん患者は近年、乳房を残す「温存」や、乳房切除術後の乳房「再建」を合わせて選ぶ人が増えたうえ、切除後も以前に比べ傷跡がほぼ目立たくなった。しかし切除する場所や範囲によっては、変形や傷が気になるケースも少なくない。

乳がん手術の傷痕をアートに変えるタトゥー「P.ink」の活動〔2015年6月19日 Fragments〕

傷跡に芸術的なタトゥーを施す活動団体「P.ink」

2013年設立の米国のNPO法人「P.ink(ピンク)」は、乳房切除術で乳首を失ったり、胸元に傷跡が残る女性に、芸術的なタトゥーを施す活動を行う。世界レベルの高い技術をもつタトゥーアーティストも参加する「P.ink Day」は毎年10月10日に行う定例イベントになっている。

乳がん手術の傷痕をアートに変えるタトゥー「P.ink」の活動〔2015年6月19日 Fragments〕

これまでの「P.ink」活動の成果…背中にかけて描かれた桜の木

全身に施す“アート”…コメント欄には「私の望んでいたのはコレ!」と施術を待つ人の声も

絵柄を選び施術を受けるまでのプロセスを追った動画(英語)

手術で失った乳輪や乳頭を“取り戻す”ためのタトゥー

術前のような色素を再現する「パラメディカルタトゥー」

現在の医療では、乳房再建で乳房のボリュームを取り戻すことはできるが、完全に術前のような乳輪・乳房を立体的に取り戻すことはできない。そこで、パラメディカル(医療補助)タトゥーでは、術前のような乳輪・乳頭色素を再現する。

パラメディカルアートメイク(医療補助)とはどんなもの?〔女性医療クリニック・LUNAグループ〕

皮膚の浅部に微細な穴を開け、色素を入れる医療技術

アートメイクは表皮に色素を入れる落ちにくいメイクで、眉毛やアイライン、リップなどに利用されている。これと同様に、パラメディカル(医療補助)タトゥーも、皮膚の浅部に専用の電動マシンで微細な穴を開け、同時に専用の色素を入れる。米国では1970年代から行われ広く浸透している医療技術。

隠したい傷跡を自然に!米で話題の最新アートメイクがここまで進化〔2014年6月2日 美レンジャー〕

米国にはタトゥー技術で再現する“乳輪・乳頭アーティスト”がいる

米メリーランド州には、乳輪・乳頭の再現に関して10年以上の経験をもつタトゥーアーティスト、ビンセント・ビニー・マイヤーズさんがいるがいる。ショッピングセンターに構えるごく普通の店だが、女性の胸にまるで立体に見える“イリュージョン”を描くという。ビニーさんのチームの施術件数は、年間1500~2000件

乳がん手術患者に新たな人生を、リアルな胸を再生する米タトゥーアーティスト〔2012年4月2日 AFP〕

「聞こえません」を健常者に優しく伝えるタトゥー

聴覚障害者の耳のすぐ後ろに“消音”マーク

米ABCは2月、片耳の聞こえない女性が耳のすぐ後ろに入れた、スピーカーの隣に×印がついたタトゥーを紹介。このエリサ・メンゼルさん(24)は、見知らぬ人が、聞こえない方の耳から声をかけてきて「無視されている」と腹を立てるのにうんざりしていたという。

ファッション目的ではない「命を救う」タトゥーとは? 眉をひそめる前に知っておきたい〔2016年3月27日 NewsPhere〕

反響続々…「これなら、こちら側から話しかけないでって優しく伝えられるね」

「僕も片耳が聞こえない。こっちのほうが良くない?」

A woman's 'mute' tattoo says all you need to know about her disability〔2016年3月1日 WAtoday(英語)〕

タトゥーのポジティブな側面を理解しよう

実は米国でも、社会的・宗教的観点からタトゥーへの考え方は人それぞれ

米ミシガン州立大学の教授は、糖尿病の患者でも、タトゥーに関する社会的・宗教的観点から、メディカル・アラート・タトゥーを彫ることや、彫るのを検討していることを医師に言わないことがあるという。

What to Know Before Getting a Medical Alert Tattoo〔2015年8月20日 USN(英語)〕

日本人の間にも「暗いイメージが定着」(研究者)

山本芳美都留文科大教授によると、刺青は紀元前から世界各地でなされ、日本では3世紀の史書「魏志倭人伝」にその記述が確認されるなど歴史は古い。しかし抵抗感は根強く、教授は、江戸時代に荒くれ者が好んで彫り、1970年代に流行したヤクザ映画の印象もあって暗いイメージが定着したためとみる。

タトゥーは医業かアートか 「彫り師」異例の法廷闘争へ〔2015年11月22日 朝日新聞〕

…それでも、「すべてが悪いものではないことも知って」と温泉好きのカナダ人

仕事で年3~4回来日するカナダ人の会計士、ロバート・ファーガソンさん(42)は、同行した友人らがタトゥーを彫っていたため温泉地で入浴できなかった経験を持つ。「カナダでもタトゥーに反社会的なイメージを持つ人はいるので日本人の心情は理解できる。ただ、すべてが悪いものではないことも知って臨機応変に対応してほしい」と訴える。

「タトゥーお断り」外国人観光客、温泉で当惑 2019ラグビーW杯はどうなる?

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