狂犬病は「終わった病気」ではない…日本が直面する感染の脅威

日本では半世紀以上も感染例がなく「終わった病気」と考えられている狂犬病だが、むしろ最近の約10年間でそのリスクは高まりつつあるようだ。われわれが直面する脅威とは?

《狂犬病》
ウイルス性の人獣共通感染症。狂犬病にかかった犬などの哺乳動物に咬まれり、粘膜をなめられたりして唾液から感染する。発症すると、精神錯乱などの症状を経て死に至る。有効な治療法はなく、発症するとほぼ100%死亡する。世界では年間5万人以上が死亡しているとされる。〔厚労省

半世紀にわたり感染例のない日本だが…

1957年以降、人・動物ともに狂犬病の感染は確認されていない

日本国内では戦後の混乱期に数十件の狂犬病の発生があったが、1956年に人、翌57年にネコが感染したのを最後に、人、動物ともに半世紀以上も感染は確認されていない。2006年にはフィリピンから帰国した男性2人が発症し死亡したが、国内での感染ではなかった。

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「狂犬病清浄国・地域」、日本以外では世界で6つのみ

2013年7月現在、農水相が指定する「狂犬病清浄国・地域」は、日本以外ではアイスランド、豪州、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアムの6カ国・地域のみ。

指定地域(農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域)〔動物検疫所 農水省〕

日本国内で根絶できた理由は、予防接種率の向上と地理的利点

国立感染症研究所は、日本国内で根絶できた背景として、ワクチン接種率の向上や、島国という地理的利点を指摘する。

狂犬病「世界では10分に1人死亡」 国内では60年間発生なしだが…〔2015年12月11日 ハザードラボ〕

《「狂犬病予防法」と予防接種》

日本では1950年に「狂犬病予防法」が制定され、飼い犬の市区町村への登録と狂犬病予防注射が義務化された。違反した場合、20万円以下の罰金が科される。

狂犬病の予防接種は必要? 日本で発生する危険性は...〔2015年5月13日 Huffington Post〕

感染の脅威【1】海外からの感染動物の侵入

「狂犬病に感染した動物の国内の侵入は、いつ起きてもおかしくない」(専門家)

旅行医学に詳しい内科医の久住英二氏は、「狂犬病に感染した動物の国内の侵入は、いつ起きてもおかしくない」と指摘。密輸などにより、感染した野生動物が国内に入ってくる可能性も否定できないとされる。

狂犬病の予防接種は必要? 日本で発生する危険性は...〔2015年5月13日 Huffington Post〕

犬を乗せて日本へ寄港するロシア漁船の存在

野生動物の狂犬病感染がたびたび確認されているロシアでは犬を「船の守り神」とあがめる習慣があり、北陸地方などではロシア漁船が犬を乗せて寄港するケースが後を絶たない。

「狂犬病危機」予防接種率20年で99%→71% 台湾では半世紀ぶり感染も

長年発感染例のなかった島国、台湾・英国で感染確認

日本同様に半世紀以上発症がなかった台湾では2013年、野生のアナグマへの感染が確認された。英国では1996年、コウモリから狂犬病に似たウイルスが検出され、2002年には、ウイルスを保有したコウモリにより100年ぶりに死者が発生。

狂犬病「世界では10分に1人死亡」 国内では60年間発生なしだが…〔2015年12月11日 ハザードラボ〕

感染の脅威【2】予防接種率の低下と「未登録犬」の増加

飼い主が狂犬病予防接種を受けさせないケースが増えている

厚労省によると、飼い主が狂犬病予防接種を受けさせないケースが増えている。1996年に99%だった接種率が、2002年度は71.6%。登録犬だけの数字だるため、未登録を含めると接種率はさらに下がり、WHOが流行を止める目安とする70%を下回っている可能性が大きい。

狂犬病 日本でも?〔2016円2月26日 中日新聞〕

市区町村に登録されていない「未登録犬」も多い

市区町村に登録されていない「未登録犬」の数も多い。ペットフード協会の調査では、2012年度の国内の犬の飼育数は推計1034万6千匹で、登録数を372万匹も上回る。

「狂犬病危機」予防接種率20年で99%→71% 台湾では半世紀ぶり感染も

法改正で登録義務が毎年から生涯1回に…接種率下落の要因か

飼い犬の登録が毎年必要だった頃は、登録とワクチン接種を一緒に済ませていた飼い主が多かったが、1995年の狂犬病予防法改正で犬の登録義務が毎年から生涯1回に変わったことで、接種実施率が下落したとされる。

狂犬病の予防接種は必要? 日本で発生する危険性は...〔2015年5月13日 Huffington Post〕

飼い犬の予防接種は飼い主の責任

ウイルスが侵入しても犬の予防ができていれば人の罹患は防げる…「飼い主は責任を自覚して」(専門家)

仮に国内にウイルスが侵入しても、人と接触する可能性が高い飼い犬への感染を防げれば、人の罹患リスクは大幅に減らせる。岐阜大応用生物科学部の杉山誠教授は「日本では忘れられた病気になっている」が、「飼い主には予防接種を済ませる責任があると自覚してほしい」と話す。

「狂犬病危機」予防接種率20年で99%→71% 台湾では半世紀ぶり感染も

予防接種時期は毎年4~6月

狂犬病の予防接種は、狂犬病予防法により4月1日~6月30日と決められている。子犬を新しく飼育しはじめた場合は、生後90日以降であれば、動物病院で接種可能。法律上は3月に接種しても4~6月にもう1回ワクチン接種をすることになっている。

なぜ狂犬病の予防接種は春なのか?〔2015年3月20日 教えて!goo〕

「狂犬病」基礎知識…感染・発症したらどうなる?

犬はまず挙動が不審になり次第に凶暴化、最後は麻痺状態に

狂犬病は、発症している哺乳類にかまれ、その唾液中に含まれるウイルスが傷口から体内に侵入することで感染する。犬の場合、潜伏期間は2週間から2カ月程度。まず挙動が不審になり、次第にかみつくなど凶暴化し、最終的に麻痺状態になり死に至る。

狂犬病、世界で発生 注射は必要 山根義久さん〔2015年3月24日 朝日新聞〕

人は風邪に似た症状から始まり、知覚過敏や神経症状に発展する

人の場合、潜伏期間は1~3カ月間程度で、主な初期症状は、発熱などの風邪に似た症状とさまざまな神経症状。音や光に敏感になり不必要に怯えたりする知覚過敏や神経麻痺がある。やがて全身麻痺に発展し、最終的には昏睡状態となり、呼吸不全や多臓器不全で死亡する。

狂犬病の症状・感染源・死亡率〔2010年1月19日 All About〕

特徴的な神経症状は「恐水症」や「恐風症」

特徴的な神経症状は、飲み込むときに神経異常で強い痛みが起きて水すら飲めなくなったり(恐水症)、知覚過敏のため風の音にすら恐怖を感じるなどの症状(恐風症)。このため狂犬病は「恐水病」と呼ばれることも。

狂犬病の症状・感染源・死亡率〔2010年1月19日 All About〕

哺乳動物に咬まれたらできるだけ早く受診する

哺乳動物に咬まれたらできるだけ早く病院を受診する。同時に、狂犬病のおそれのある動物に咬まれたら、傷口を石鹸と水(できれば流水)でよく洗い、消毒液で消毒する。粘膜から感染する可能性があるため、決して傷口を口で吸いださない。

「狂犬病 Rabies」感染症についての情報〔厚生労働省検疫所〕

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