息吐くだけ、尿1滴…“ツラくない”がん診断法、続々開発中

日本人のがん検診受診率は5割に満たず国際的にも低い。そんな中、さまざまな面で負担の少ない“ユニークな”がん診断法の開発が国内各機関で進められ、早期のがんでも見つかりやすいなど、そのメリットに注目が集まっている。

《がんと臭い・唾液などの関係》
体臭や口臭が甘酸っぱければ「糖尿病」など、病気特有の「臭い」の存在はしばしば指摘されている。がんの場合、がん細胞の壊死による腐敗臭などが現れることがあるという。がん細胞では増殖や転移などに関係する物質を多く出し、それらが血液に混ざる。唾液は血液がもとになっており、尿には血液中の物質が排出される。〔HEALTH PRESS

息吐くだけでがん診断…スマホに搭載も?

呼気の含有物質を判別する高精度センサー開発。2022年に実用化へ

国立研究開発法人の物質・材料研究機構(NIMS)などは、呼気の含有物質を高精度で判別できる小型センサーを開発。息だけでがんや糖尿病などにかかっている疑いを診断できる。京セラなどが、2022年にも実用化の見通し。

がん、息で手軽に診断…将来はスマホに搭載〔2015年1月12日 読売新聞〕

チップに搭載された「膜」が、特有物質の有無をチェックする仕組み

数ミリ四方の小さいチップであるセンサーに搭載された「膜」が呼気の特徴を検知し、がん患者の呼気に含まれる特有の物質の有無などをチェックして判定する仕組み。将来的に、センサーの精度を高め、臭いに関するデータを蓄積していけば、がんの種類も見極められるようになる可能性が高いという。

がん、息で手軽に診断…将来はスマホに搭載〔2015年1月12日 読売新聞〕

費用安く量産も可能…「究極(の形)はスマホへの組み込み」

開発に携わるNIMS・国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の吉川元起氏は、「究極はスマホに息を吹きかけてがんを診断したい」と語る。小型センサー1個の製造コストは数百円ほどで量産も可能。実用化には、がんの臭い物質に関するデータ収集や高精度化、国による医療機器の認証などが必要とされる。

究極はスマホに息を吹きかけてがんを診断〔2015年9月8日 日経デジタルヘルス〕

呼気の成分を検知し健康状態をモニタリングするモバイル機器応用のイメージ(物質・材料研究機構などによるプレスリリースから)

呼気の成分を検知し健康状態をモニタリングするモバイル機器応用のイメージ(物質・材料研究機構などによるプレスリリースから)

嗅覚センサーの業界標準を目指す「MSSアライアンス」発足〔2015年9月29日 物質・材料研究機構(PDF)〕

「虫」の習性利用…尿1滴で診断

線虫に尿の臭いを嗅がせ、集まってきたらがんの疑い。2019年の実用化を目指す

九州大などは、体長1ミリの線虫が、がん患者の尿に寄りつく特性を利用し、高い精度でがんの有無を判定する装置の開発を日立製作所などと進めている。2019年の実用化を目指す。

早期がん発見に期待、線虫反応で〔2015年3月12日 共同通信〕

「ステージ0」でも診断、精度9割…メリット多数の「線虫検査」

  • (1)尿1滴で検査でき、苦痛を伴わない
  • (2)尿の採取にあたって食事制限は不要、通常の健康診断などで採取した尿の使用が可能
  • (3)診断結果が出るまでの時間は、約1時間半と短い
  • (4)1検体あたりの検査コストが数百円~数千円
  • (5)多くのがんを1度に検出できる。
  • (6)ステージ0または1の早期がんや、従来手法では見つけられなかったがんも検出可能
  • (7)検出感度は95.8%と高い(242人の尿で実験した結果)

尿1滴でがん診断、「線虫」の嗅覚で実現〔2015年3月13日 日経デンタルヘルス〕

がんの種類の特定も将来的には可能?

現状では、がんの種類は特定できない。しかし、特定のがんにだけ反応しない線虫株を作製することにすでに成功しているため、これを使えば、例えば、野生型線虫が誘引行動を示し、大腸がんには反応しない線虫株が誘引行動を示さない場合には、大腸がんだと診断できるという。

尿1滴でがん診断、「線虫」の嗅覚で実現〔2015年3月13日 日経デンタルヘルス〕

「線虫が(患者の尿に)近寄るのは餌のにおいに似ているからでは」

開発者の九州大の広津崇亮助教(神経科学)は、「線虫は細菌類を食べる。(患者の尿に)近寄るのは餌のにおいに似ているからではないか」と推測しているという。

線虫、においでがん判別 患者の尿「1滴あれば検査可能」 早期でも的中〔2015年7月9日 毎日新聞〕

《がん探知犬の限界》

嗅覚が人間の100万倍以上とされる犬では、2000年以降、訓練によってがんの臭いをかぎ分けられることが報告されてきた。この「がん探知犬」は、呼気からがん患者を嗅ぎ分けるが、気温や湿度、犬の体調などによって精度にバラツキがあり、一日に5検体程度が限界。検査用の犬を育てるには、お金も労力も時間もかかる。

患者の尿に群がる「線虫」 がんを9割以上の正確さで発見〔2015年1月9日 dot.〕

血液1滴、たったの3分…“光”で診断

血中のがん関連物質が放つ光でがんの有無を診断。2016年の臨床応用を目指す

血液中のがんに関連する物質が放つ光をとらえ、がんの有無を診断する手法を、神戸市の医療機器会社「マイテック」と昭和大学江東豊洲病院などのグループが世界で初めて開発。わずか1滴の血液を使い、3分以内で診断できるという手軽さが最大の特徴で、2016年6月までの臨床応用を目指している。

がん診断 血液1滴、3分で 神戸の企業共同開発〔2015年6月17日 神戸新聞〕

がん患者の血清を、特殊な金属チップに乗せると発光する仕組み

研究では、がん患者と良性腫瘍の患者20人の血清を1滴ずつ、特殊な金属チップに乗せると、がん患者の血清のみからヌクレオソームを取り出し、発光させることができたという。今回の研究は胃とすい臓、大腸の3種のがんが対象だが、理論上はどの部位のがんにも応用が可能で、費用も数万円に抑えられるという。

“血1滴3分”でがん発見…1年後めどに実用化へ取り組み

「離島の人でも画像さえ送れば判定できる」(開発者)

昭和大学江東豊洲病院消化器センターの伊藤寛晃講師は「この診断法は、健康診断の採血の余りを少し活用するだけでできる。離島の人でも画像さえ送れば判定でき、都会と地方の医療格差解消にもつながる」と話す。

がん診断 血液1滴、3分で 神戸の企業共同開発〔2015年6月17日 神戸新聞〕

バイオチップを使ったがん診断の技術を開発したマイテックの長谷川克之氏。画像はがん患者の血液から検出されるヌクレオソーム

バイオチップを使ったがん診断の技術を開発したマイテックの長谷川克之氏。画像はがん患者の血液から検出されるヌクレオソーム

《ヌクレオソーム 》

ヒストンと呼ばれるタンパクとその周りに巻き付いたDNAからなる構造の単位。がんで多く見られるDNAのメチル化によりヒストン部分が陽性に帯電することで、研究チームが開発したバイオチップに結合しやすくなると考えられる。

血中のがん細胞由来物質の高感度検出に成功 〔昭和大学江東豊洲病院 消化器センター(PDF)〕

唾液ですい臓がんなどの有無を診断

精度9割…唾液ですい臓がんの有無判別、2015年度中に臨床試験開始へ(東京医大など)

東京医大などは、唾液を使うすい臓がんの検査法について、医師主導の臨床試験を2015年度中に始める。唾液での診断法は東京医大の砂村真琴兼任教授らが開発。特定の2種類の物質が多く含まれると、すい臓がんの可能性が高い。研究では9割の精度で判別できており、早期のがんでも効果を期待できる。

唾液や尿でがん発見 東京医大など膵臓で臨床試験 〔2015年10月31日 日本経済新聞〕

質量分析計で唾液を解析、すい臓・乳・口腔がんを判別。2016年中の実用化目指す(慶應大)

慶應義塾大学先端生命科学研究所は、質量分析計を用いて唾液を解析、すい臓・乳・口腔がん、糖尿病などを高い精度で見分ける手法を開発。現在は臨床研究段階で、同研究所の杉本昌弘特任准教授によると、年1回の医療機関での検査以外に、「毎月自宅で唾液を採取、検査」できる仕組みを構築中で、2016年中の実用化を目指す。

唾液でガンがわかる?〔MetLife Online〕

「早期」も発見…新手法で受診率向上を目指す

日本のがん検診受診率は欧米に比べ低いのが現状

厚生労働省によると、40~60代の男性で過去1年間に検診を受けた人の割合は肺がんが48%、胃がんが46%、大腸がんが41%。女性はいずれの受診率も男性より10ポイントほど下回った。欧米で受診率が7~8割に達する乳がん、子宮頸がんはともに30%台前半。

がん早期発見、負担軽く 血中アミノ酸濃度や線虫でも 〔2015年10月25日 日本経済新聞〕

しかも、現行の「腫瘍マーカー」では早期がんが見つかりにくい

腫瘍マーカーと呼ばれる血液内の特定の物質を調べる検査もあるが、三井記念病院の山門実特任顧問は、「進行が進んだステージ3、4で見つかるケースが多く、早期段階は発見しづらい」と指摘する。また、検査薬でがん細胞に目印を付ける「PET検査」も発見できる部位が限られている

がん早期発見、負担軽く 血中アミノ酸濃度や線虫でも 〔2015年10月25日 日本経済新聞〕

検診受けない理由「時間がない」が5割弱…検診時の負担を削減する手法の開発に期待

内閣府が1月にまとめた調査では、がん検診を受けない理由(複数回答)は「受ける時間がない」が48%で最も多かった。こうした状況下で、検診時の負担を大幅に削減するユニークな手法の開発に、期待が集まっている。

がん早期発見、負担軽く 血中アミノ酸濃度や線虫でも 〔2015年10月25日 日本経済新聞〕

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