「迷惑」「辞めたら?」浴びせられる心ない言葉…マタハラの実態

妊娠と産休・育休にからむ職場のトラブルは絶えず、「マタハラ」について厚労省も初の調査に乗り出した。被害の多くは心ない言葉の数々…違法とされつつも、マタハラが横行する実態が浮かび上がった。

《マタニティーハラスメント(マタハラ)》
働く女性が妊娠・出産を理由として解雇や雇い止めをされることや、職場で受ける精神的・肉体的な嫌がらせ。連合は性的な言動による「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」、職務上の地位や人間関係を利用した「パワーハラスメント(パワハラ)」に並ぶ3大ハラスメントと位置づけている。

マタハラ被害、厚労省が初調査

派遣社員の48%が「マタハラを経験したことがある」

厚労省が女性を対象に行った初の実態調査で、妊娠・出産した派遣社員の48%が「マタハラを経験したことがある」と回答。正社員では21%だった。

「迷惑だ」「辞めたら」…マタハラ経験、派遣社員で48% 厚労省調査

正社員も含め20%が「解雇された」…深刻な被害実態

マタハラを経験したと答えた人のうち、派遣社員の27%が「妊娠を理由とした契約打ち切りや労働者の交代」を経験していた。正社員などを含め、解雇されたとの回答が20%に達するなど、深刻な被害実態が浮かび上がった。

妊娠等を理由とする不利益取扱いに関する調査〔2015年11月12日 厚労省(pdf)〕

職を失えば育児休業給付金が受けられず、認可保育園にも入園できない

女性が出産・育児を理由として、退職に追い込まれたり、解雇をさせられたりした場合、職を失うばかりではなく、育児休業給付金を受けることができなくなり、認可保育園に入園するための要件も失ってしまう等、被る不利益は甚大。

妊娠等により女性が職場で不利益を受けている現状〔ベリーベスト法律事務所〕

「1億総活躍」を掲げる安倍政権、マタハラ根絶へ法改正も

「1億総活躍」を掲げ、出産や育児と就業を両立しやすい社会の実現を目指す安倍政権にとって、マタハラ根絶の対策は急務となる。厚労省は企業のマタハラ防止策を強化するため男女雇用機会均等法の改正を検討中で、調査結果を反映させる考え。

「マタハラ経験」48% 妊娠・出産の派遣女性〔2015年11月12日 佐賀新聞〕

《マタハラと男女雇用機会均等法》

男女雇用機会均等法は、妊娠を理由に女性労働者を解雇したり、降格などの不利益な扱いをしたりすることを禁じている。違反した場合は労働局長や厚労相による勧告などの行政指導が行われるが、罰則はない。

「妊婦はいらない」茨城の医院“マタハラ”で初の実名公表

マタハラ被害の多くは心ない発言

被害の半数近くが「迷惑だ」「辞めたら?」などの嫌がらせ発言

厚労省の調査で、マタハラを受けた人に複数回答で内容を尋ねると、上司などから「迷惑だ」「辞めたら?」といった嫌がらせの発言を受けたケースが一番多く、47%%が経験していた。

マタハラ、派遣の48%「経験」 正社員は21% 厚労省調査〔2015年11月12日 日経新聞〕

派遣会社が「育児休業は前例がないし、前例を作るつもりもない」

都内に住む2人の子どもがいるAさん(39)は5年前、派遣社員としてIT関係の仕事をしていたとき、マタハラにあった。育児休業を求めるAさんに派遣元の会社は「育児休業は前例がないし、前例を作るつもりもない」とし、その後、Aさんは育休を取れないまま雇い止めとなった。

“マタハラ”「育休は前例ない」 派遣社員女性 被害の実態〔2015年11月12日 TBS〕

同僚から「妊婦が職場にいると困る」「夫に食べさせてもらえばいいのに」

福岡県の女性(49)は、派遣社員として働いていた8年前に第2子を妊娠しマタハラにあった。つわりもなく、きちんと仕事もこなせていたが、「妊婦が職場にいると困る」「夫に食べさせてもらえばいいのになぜ働くの」などと同僚から繰り返し言われ、結局、契約の途中で打ち切られた。

マタハラ 認知度9割、改善は進まず 連合非正規労働センター調査〔2015年10月3日 西日本新聞〕

マタハラは違法、でも…

「妊娠や出産を理由とした降格は原則違法」最高裁が初判断(2014年10月)

最高裁は昨年10月、妊娠を理由に降格されたのは男女雇用機会均等法に反するとして、広島市の病院に勤めていた理学療法士の女性が運営元に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、「妊娠による降格は男女雇用機会均等法が原則禁止しており、本人の同意がなければ違法」との初判断を示した。

マタハラ訴訟 妊娠降格は「承諾なければ原則違法」 最高裁初判断

しかし、今の法律では嫌がらせなどの行為は明確に禁止されていない

今の法律では解雇や降格といった処遇が禁止されているものの、職場に居づらくさせるような言葉による嫌がらせや同僚が仕事を与えないなどの行為は明確には禁止されていない。

マタハラ防止対策 企業に義務づけ方向で議論〔2015年11月12日 NHK〕

「妊婦はいらない」と解雇、厚労省がマタハラで初の実名公表(2015年9月)

厚労省は今年9月、国の是正勧告に従わなかったとして、茨城県のクリニックの実名を公表した。男女雇用機会均等法に基づきマタハラをした事業主の実名を公表するのは初めて。看護助手が院長に妊娠を報告したところ、2週間後に突然「明日から来なくていい。妊婦はいらない」と退職を迫ったという。

「妊婦はいらない」茨城の医院“マタハラ”で初の実名公表

「管理職や現場の社員が危機感を持つまでには至っていない」(連合)

連合が今年8月行った調査によると、マタハラについて周囲の意識の変化を感じるかとの問いに、63・5%が「感じない」と回答。担当者は「管理職や現場の社員は、均等法を順守しなければ損害を被るという危機感を持つまでには至らず、意識が浸透しきっていない」と話す。

「マタハラ」抵触事業者の公表、改善進まない実態が背景に

マタハラ根絶のためには…識者に聞く

「育児休業復帰者の仕事をカバーする人たちを、きちんと評価することが重要」

お茶の水女子大学大学院の永瀬伸子教授(労働経済学)は、「育児休業復帰者の仕事をカバーしているような人たちに対して、上司がきちんと評価してあげるということも重要」と話す。

マタハラ被害をなくすために〔2015年4月20日 NHK〕

男性も介護などで同様になる可能性…「あらゆる社員が活躍できる環境を」

ダイバーシティコンサルタントの渥美由喜さんは、男性も育児や介護などで「制約社員」になる可能性があるとして、「あらゆる社員が活躍できる環境をつくっていく必要がある」と話す。

マタハラ 企業の人材確保にもリスク 長時間労働見直しを〔2015年4月11日 西日本新聞〕

「人口減少は先進国の共通課題。女性の就労率が上がらなければ、年金などの社会保障制度が保てない」

NPO法人マタハラNetの小酒部さやか代表は、「女性の就労率が上がらなければ、年金などの社会保障制度が保てない。マタハラは日本の経済問題だ。人口減少は先進国の共通課題。少子化のペースが速い日本がどう打開するか、世界が関心を寄せている」と話す。

「マタハラは日本の経済問題」 小酒部さやかさんが講演〔2015年10月17日 西日本新聞〕

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