医師の半数以上が抱く、ジェネリックへの「不信感」とは

かさむ医療費を抑えるため、政府はジェネリック医薬品の普及を後押しするが、厚労省の調査では医師の半数以上が、ジェネリックに「不信感」を抱いていることが判明した。その要因とは?

《ジェネリック医薬品》
後発医薬品。特許が切れた新薬の成分を使って開発する割安な薬。新薬は原則20年は特許で守られ、高い価格で独占的に売れる。特許の期間が終わると、他のメーカーが同じ成分を使って安い後発薬をつくり、国が効き目や安全性を審査したうえで販売している。製薬企業にとっては研究開発費が安くすむため、価格も新薬より3~5割ほど安いとされる。〔日本経済新聞

医療費抑制へ、普及後押しする政府

日本のジェネリックのシェアは約5割、欧米の8割前後を下回る

日本の2013年の後発医薬品のシェア(数量ベース)は46.9%にとどまり、8割前後の欧米先進国と比べて低い。医療費の税負担軽減のため、政府は安いジェネリック医薬品の普及を推進。

後発医薬品 新薬より3~5割安、日本は普及遅れ 〔2015年5月17日 日本経済新聞〕

政府は2020年度までのなるべく早い時期にシェア8割以上目指す

割安なジェネリック医薬品の普及率向上に向け、政府はシェア8割への引き上げを目指し、達成時期を「18~20年度末の間のなるべく早い時期」とする。

骨太方針で最終調整 GE80%達成「18~20年度末までの早い時期」 参照価格制度は明記せず〔2015年6月21日 ミクスOnline〕

ところが、“処方する側”がジェネリックに懸念

日本ジェネリック製薬協会は、「先発品とジェネリックの効き目・品質・安全性は同等」と説明するが…

日本ジェネリック製薬協会(JGA)は公式ページで、「ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を使っており、効き目、品質、安全性が同等な薬でありながら、低価格な薬」と説明する。

ジェネリック医薬品について 一般の方向け情報〔日本ジェネリック製薬教会(JGA)〕

厚労省の意識調査では、医師の半数が「不信感」

厚労省が医師などを対象に行った、ジェネリックについての意識調査の結果(11月6公開)によると、病院の医師にジェネリックに対する不信感の有無を尋ねたところ、「不信感はない」と答えた医師が40.7%だったのに対し、54.9%が「不信感がある」と回答した。

ジェネリックに医師の半数以上が不信感〔2015年11月6日 NHK〕

主な理由は「先発品との効果・副作用の違い」など

厚労省の調査に「不信感がある」と答えた医師に、その理由を複数回答で聞いたところ、「新薬(先発品)との効果・副作用の違い」が67.9%と最も多く、次いで「新薬との使用感の違い」が38.6%などとなった。

ジェネリックに医師の半数以上が不信感〔2015年11月6日 NHK〕

医師を不安にさせる先発品との「違い」とは

日本医師会からは、ジェネリックによるアレルギーや効果の大幅減の報告も

5月に行われた政府の行政改革推進会議では、公益社団法人「日本医師会」から、「先発品と(ジェネリック)の基剤が異なるため、(ジェネリックに)変えた途端にアレルギーを起こす例、外用薬では基剤が異なることによってその効果が全く減じてしまうことを指摘する皮膚科医が多数存在する」との報告があった。

後発医薬品の普及に係る現状と今後の課題 公益法人日本医師会〔歳出改革WG重要課題検証サブ・グループ資料 2015年5月21日(PDF)〕

血中濃度が「先発品の半分にも満たないもの」「一気に上がってしまうもの」の指摘も

日本医師会からは「実際に出回っているジェネリックの中には、血中濃度が先発品の半分にも満たないものや、徐放性降圧剤の後発品では、徐々に薬剤が放出されず血中濃度が一気に上がってしまう例があるという意見が、全国の医師から寄せられている」とする報告も。

後発医薬品の普及に係る現状と今後の課題 公益法人日本医師会〔歳出改革WG重要課題検証サブ・グループ資料 2015年5月21日(PDF)〕

「『完全に有効性が同じ』とは言い切れない」と薬剤師

薬剤師の深井良祐氏によると、ジェネリックの有効性の試験では、統計学的に先発品との差がプラス・マイナス20%の範囲(正確にはバラつきを含めて80~125%の範囲)であれば差がないと判断される。つまり、先発品と比べて多少なりとも効果が強かったり、その逆に効果が弱かったりしても「有効性は同じである」と判断される。

ジェネリック医薬品の問題点〔役に立つ薬の情報~専門薬学〕

医師側は患者がどの薬局でどんなジェネリックを受け取るか、事前に把握できない

行政改革推進会議で日本医師会は、「保険薬局でジェネリックに変更した場合は、医療機関へ情報提供することになっている。しかし、『患者さんがどの薬局に行くのか』、『その薬局でどのような後発医薬品(ジェネリック)を用意しているのか』、事前には分からない場合が多い」といった問題点をあげる。

後発医薬品の普及に係る現状と今後の課題 公益法人日本医師会〔歳出改革WG重要課題検証サブ・グループ資料 2015年5月21日(PDF)〕

《先発品の「物質特許」と「製剤特許」》

ジェネリックの中にはすべての特許が切れていないものがある。たとえば「物質特許」(有効成分の特許)は切れていても、「製剤特許」が切れていなければ、後発品に先発品と同様の添加物を加えることはできないうえ、同様の剤形(薬の形)を用いることができない。

ジェネリック医薬品の問題点〔役に立つ薬の情報~専門薬学〕

「推進側」からは不安の声に対し反論も

これまで普及しなかったのは効能の問題ではなく制度の問題

日本ジェネリック製薬協会(JGA)の理事長、長野健一氏は、これまでジェネリックが普及しなかった理由について、「誰もが低い負担で医療が受けられる皆保険制度下では、安い薬剤を使用しようという意識が働きにくい。薬局も患者さんへの説明の負担が増え、ジェネリックを使用するメリットがなかった」と話す。

ジェネリック医薬品って本当に効果があるの?〔2013年5月21日 マイナビニュース〕

ジェネリックに切り替えて効果が減ったと感じるのは心理的な要因である可能性も

ジェネリックに切り替えた際、それまで得られた効果が得られなったとする事例について、厚労省は「偽薬であっても、薬だと信じて服用することにより、効果が現れることがある」(プラセボ効果)、「ジェネリックに不安を感じる患者は、(心理的な要因から)先発品から切り替えると十分な効果が得られなくなることも起こり得る」と説明する。

ジェネリック医薬品への疑問に答えます〔2012年7月 厚生労働省(PDF)〕

医師や患者が安心してジェネリックを取り入れるためには

「『先発品と同じ薬で値段が安い』との説明が事の本質を見えなくする」(医師)

ただともひろ胃腸肛門科院長、多田智裕氏は、「特許が切れた医薬品をより安く提供するジェネリックの役割は十分に分かる。しかし、ジェネリックを『先発品と同じ薬で値段が安い』と説明することこそ、逆に患者の正しい理解を助けないばかりではなく、事の本質を見えなくしてしまうのではないか」と指摘する。

ジェネリックは「先発品と同じ薬」ではありません〔2012年5月7日 JB PRESS〕

「医療機関は、数日分の“お試し調剤”が可能なこと、合わなかったときの対応などを伝えておく必要がある」(NPO法人理事長)

NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」理事長の山口育子氏は、医療機関へ向けて「ジェネリックを勧めるときに、ジェネリックについての説明や数日分の“お試し調剤”が可能なこと、合わなかったときの対応などは、最低限伝えておく必要がある」とアドバイスする。

患者相談事例-135「ジェネリックは安い分、効き目も弱いの?」〔2015年5月1日 Q Life〕

「医療費を目当てに患者へジェネリックを勧める薬局には注意」(医療に詳しいジャーナリスト)

医療に詳しいジャーナリスト早川幸子氏は、ジェネリックなどに疑問をもった際に相談できる“かかりつけ薬局”をもつことを推奨する。一方で、現在の診療報酬制度は、ジェネリックを積極的に取り入れる調剤薬局に政府が報酬を出す仕組みになっており、医療費目当てで患者にそれを勧める薬局には注意が必要とする。

患者のため?それとも経営のため?最近、調剤薬局でジェネリックを勧められるワケ〔2012年9月 DIAMOND 男の健康〕

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