逮捕から20年…小6死亡火災、再審を引き寄せた「決め手」は

1人の少女の命を奪った20年前の民家火災。殺人などの罪で無期懲役が確定した母親らについて、大阪高裁が再審開始を認めた。火災原因は「放火」か「自然発火」か。再審を引き寄せた「決め手」は-。

《大阪市東住吉区の小6死亡火災》
平成7年7月22日、大阪市東住吉区の木造2階建て民家から出火。入浴中だった小学6年、青木めぐみさん(当時11歳)が死亡した。大阪府警は1500万円の死亡保険金目当てに自宅に放火し、長女のめぐみさんを焼死させたとして殺人容疑などで母親の青木恵子元被告と内縁の夫、朴龍晧元被告を逮捕。2人はいったん自白したが公判では無罪を主張した。18年に最高裁で上告が棄却され無期懲役が確定。21年にそれぞれ再審請求し、大阪地裁が24年に再審開始を決定、検察側が即時抗告していた。

20年前の女児死亡火災、高裁も再審認める

「火災は放火ではなく、自然発火である可能性が否定できない」

大阪市東住吉区で平成7年、保険金目当てに自宅に放火し、小学6年の長女、青木めぐみさん(当時11歳)を殺害したとして、無期懲役が確定した母親の青木恵子元被告(51)と内縁の夫だった朴龍晧元被告(49)について、大阪高裁は10月23日、「火災は放火ではなく、車のガソリン漏れからの自然発火である可能性が否定できない」として裁判のやり直しを認める決定をした。

東住吉放火殺人事件 再審開始、大阪高裁も支持 26日午後2時に刑の執行停止

母親ら20年ぶり釈放の可能性…検察側は特別抗告もハードル高く

大阪高裁はさらに、服役中の2人に対する刑の執行を26日午後2時で停止することも決め、約20年ぶりに釈放される可能性が出てきた。検察側は特別抗告して最高裁の判断を仰ぐことができるが、憲法違反や判例違反が要件となるため、高裁の判断を覆すハードルは高い。

大阪女児焼死、大阪高裁が再審支持 自白偏重捜査に警鐘〔2015年10月24日 日経新聞〕

《決定骨子》

・再審開始とした大阪地裁決定は正当。検察側の即時抗告を棄却する
・再現実験結果などから、出火原因は車から漏れたガソリンが風呂釜の種火に引火した自然発火の可能性が具体的に認められる
・放火を認めた朴元被告の自白には信用性を認める前提がなくなった
・約20年にわたる元被告らの身体拘束をさらに続けるのは正義に反し、刑の執行を26日午後2時で停止する

《特別抗告》

通常の不服申し立てのできない決定・命令に対し、憲法違反を理由として最高裁判所に対して行う抗告。刑事訴訟では判例違反も理由とすることができる。

「母親に戻して」訴え続けた無実

逮捕から20年余り。平成24年、大阪地裁が再審開始を決定したが、検察側の即時抗告により刑の執行停止も認められなかった。青木元被告は産経新聞記者との手紙の中で「娘の死を悲しむ、一人の母親に戻して」「これは事件ではなく、事故」と訴えた。

母親の青木元被告「事件ではなく事故」「娘の死を悲しむ一人の母親に戻して」

逮捕から20年余り。平成24年、大阪地裁が再審開始を決定したが、検察側の即時抗告により刑の執行停止も認められなかった。青木元被告は産経新聞記者との手紙の中で「娘の死を悲しむ、一人の母親に戻して」「これは事件ではなく、事故」と訴えた。

東住吉女児焼死再審 「一人の母親に戻して」 逮捕20年無実の訴え

⇒「正義の決定を出していただいた」と、ほっとした様子

和歌山刑務所で面会を終えた弁護士によると、青木元被告は、「科学的に証明された真実を認め、正義の決定を出していただきありがとうございます」とほっとした様子だったという。

東住吉女児焼死再審 「一人の母親に戻して」 逮捕20年無実の訴え

青木元被告の長男(28)が23日会見し、「素直にうれしい」と喜びをかみしめた。火災で姉のめぐみさんが亡くなったときは、まだ8歳で、母方の祖父母に引き取られたという。釈放された母に最初にどういう言葉をかけたいかと問われると、「おかえり、ですかね」とはにかんだ。

青木元被告の長男、8歳で別れた母親に「おかえり、と言いたい」

青木元被告の長男(28)が23日会見し、「素直にうれしい」と喜びをかみしめた。火災で姉のめぐみさんが亡くなったときは、まだ8歳で、母方の祖父母に引き取られたという。釈放された母に最初にどういう言葉をかけたいかと問われると、「おかえり、ですかね」とはにかんだ。

東住吉女児焼死再審 8歳で別れた母に「おかえり、と言いたい」 青木元被告の長男

内縁の夫、朴元被告「心に大きな穴」「(高齢の母親を)苦労から解放したい」

今年8月、大分刑務所で産経新聞記者との面会に応じた朴元被告は、「嘘の自白は人生最大の後悔。20年間思い出らしい思い出がなく、心に大きな穴が開いている」と語り、再審開始決定を待ち望んでいた。支援者らと活動を続ける高齢の母親を気遣い、「一日も早く家に帰って、苦労から解放してあげたい」とも話していた。

東住吉女児焼死再審 「一人の母親に戻して」 逮捕20年無実の訴え

再審を引き寄せた「決め手」は

事件は「車からガソリンを抜き、ライターで火をつけた」という自白以外の直接証拠なく

事件は自白以外の直接証拠がなく、その信用性が最大の争点。確定判決は「車のガソリンタンクからガソリン約7リットルを抜き、ライターで火をつけた」とする朴元被告の自白をもとに有罪を認定していた。

東住吉放火殺人事件 再審開始、大阪高裁も支持 26日午後2時に刑の執行停止

「自白通りガソリンに火をつければ大やけどを負う」弁護団の再現実験が自白を突き崩した

しかし、実行犯とされる朴元被告が自白通り大量のガソリンに火をつければ大やけどを負う-。弁護団が行った再現実験では、ガソリンをまく途中で風呂釜の種火に引火して激しく炎上、大やけどする可能性を実証した。実際の朴元被告は前髪が少し焦げただけだった。高裁はこの結果を重視。「自白通りの放火方法は再現が極めて困難。自白に信用性はなく、確定判決の有罪認定に疑いが生じた」と結論づけた。

東住吉女児焼死再審 再現実験、崩れた「放火説」 自白の裏付け存在せず

放火ではなく自然発火…車からのガソリン漏れも再現実験で確認

朴元被告の車からガソリンが漏れ、車庫に面した風呂釜の種火に引火した-。2人の無罪を主張する弁護団は1審から自然発火説を訴えていた。報道を見た千葉県の男性から「自分の車でもガソリンが漏れる」と情報提供を受け、同じ車種4台でガソリン漏れがあることを確認。ガソリン漏れと種火への引火-。自然発火の可能性を示す2つの証拠がそろった。

東住吉女児焼死再審 再現実験、崩れた「放火説」 自白の裏付け存在せず

東住吉放火殺人事件の現場見取り図

東住吉放火殺人事件の現場見取り図

検察側「自然発火あり得ない」…3回の燃焼実験も立証できず

検察側は別の燃焼実験から「自然発火はあり得ない」と反論。床の傾斜角や凹凸などを変えた3パターンで約7リットルのガソリンをまき、「自白通りでも放火は可能」と立証しようと試みたが、いずれも弁護側実験を追認する結果に終わった。

放火か自然発火か 東住吉女児焼死、23日に再審可否判断

「なんで助けたらんかったんや」…青木元被告に対する取り調べに問題も

高裁では大阪府警の取り調べメモや日誌が開示され、密室でのやり取りの一端も明らかに。「お前が無実やとして、なんで助けたらんかったんや」。捜査員はめぐみさんの写真を示しながら青木元被告に供述を迫った。高裁決定は「自白の採取過程に問題があった」と言及、虚偽自白の可能性をにじませた。

東住吉女児焼死再審 再現実験、崩れた「放火説」 自白の裏付け存在せず

再審無罪は過去に8件

「疑わしきは被告人の利益に」刑事裁判の鉄則を再審にも適用

最高裁は昭和50年、再審開始の緩やかな基準を判示。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を再審にも適用し、再審請求で出された新証拠と確定判決時の旧証拠を総合評価し、確定判決に疑いが生じれば再審を開始すべきだとした。

東住吉女児焼死再審 再審無罪は過去に8件…科学鑑定などが決め手

近年はDNA鑑定の結果が、再審の決め手となるケースが多い

戦後の死刑か無期懲役が確定した事件で、再審開始が決定され無罪が言い渡された例は8件。近年はDNA鑑定の結果が再審開始の決め手となるケースが多く、平成2年の足利事件では菅家利和さんと真犯人のDNAが一致しないことが分かり、22年の再審無罪に結びついた。

東住吉女児焼死再審 再審無罪は過去に8件…科学鑑定などが決め手

今回の再現実験はDNA鑑定のような「決定的な証拠」ではなく…今後、真の火災原因を検証へ

今回の、青木めぐみさんが死亡した火災についての再現実験は、真犯人の存在を浮かび上がらせた足利事件のDNA再鑑定ほどの決定的な証拠ではなかった。大阪高裁も決定理由で「自然発火の可能性の検討が補足的にとどまる」と言及。今後は、真の火災原因を、自白だけでなく、多角的に科学的に検証し直されることになった。

東住吉女児焼死再審 科学的検証重ね結論導く

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