福島県楢葉町のJヴィレッジ=2013年3月1日(代表撮影)

復興「拠点」から「象徴」へ…楢葉町「Jヴィレッジ」再開がカギ

9月5日、約4年半ぶりに避難解除された福島県の楢葉町。同県広野町とまたがり、福島第一原発から半径20キロに位置することから、原発事故以降、「復興の拠点」として活用されている「Jヴィレッジ」はいま、国や県などから「復興のシンボル」として注目されている。

《Jヴィレッジ》
平成9年にオープン。東電が約50ヘクタールの敷地に12面のサッカーグラウンドや260人収容の宿泊施設などを整備し、福島県に寄贈。福島県などはJヴィレッジを平成30年夏に一部再開し、31年4月までには全面的に再開する予定。5年後の東京五輪を見据え、グラウンド1面を活用した全天候型サッカー練習場も新設し、サッカー日本代表の合宿や事前練習の誘致を目指す。

福島県・楢葉町の避難指示解除(9月5日)

原発20キロ圏内、約4年半ぶりに解除…「すぐに帰還」は1割未満

政府の原子力災害対策本部は9月5日午前0時、東京電力福島第1原発事故で全域避難となった福島県楢葉町の避難指示を約4年半ぶりに解除した。しかし、放射線への不安や病院などの生活基盤の不備などから、すぐに帰還する住民は約7300人のうち1割に満たないとみられ、町再生への道のりは険しい。

楢葉町:全域避難を解除…すぐに帰還1割未満、再生険しく〔2015年9月5日 毎日新聞〕

「復興の拠点」に位置づけられていた楢葉町

楢葉町は、第一原発が立地する大熊町や双葉町、北西方向で大量の放射性物質が降り注いだ浪江町などと比べて放射線量が低いことや東京電力の福島復興本社が立地することから、「復興の拠点」とみなされることも少なくなかった。

あのJヴィレッジは?福島原発20キロ圏内の今〔2013年6月2日 東洋経済ONLINE〕

避難指示が5日午前0時に解除された福島県楢葉町。近隣住民が集まりバーベキューを楽しんだ =5日福島県楢葉町(大西正純撮影) 

避難指示が5日午前0時に解除された福島県楢葉町。近隣住民が集まりバーベキューを楽しんだ =5日福島県楢葉町(大西正純撮影) 

楢葉町避難指示解除 「今日が始まり」「希望は、ないね」 交錯する住民らの思い

避難指示が5日午前0時に解除された福島県楢葉町。避難先のいわき市から帰宅し除草作業を行い、妻のシゲコさん(76)さんとともに休憩する米農家の山内忠良さん(78)。原発事故の影響で農作物が作れないなか、先祖代々の土地を守り続けるという=5日福島県楢葉町

避難指示が5日午前0時に解除された福島県楢葉町。避難先のいわき市から帰宅し除草作業を行い、妻のシゲコさん(76)さんとともに休憩する米農家の山内忠良さん(78)。原発事故の影響で農作物が作れないなか、先祖代々の土地を守り続けるという=5日福島県楢葉町

人口1割減、財源確保が大きな課題

町内には福島第1原発の収束作業や除染を請け負う大手ゼネコンの作業員の宿舎が急増。しかし、住民の転出が相次ぎ、町の人口は事故前の8100人前後から約1割減少した。町の税収も減り、震災前に6割を超えていた自主財源率も3割程度と低迷が続く。一方、復興関連事業費は膨らみ、今年度の当初予算は10年度の5倍となる過去最高の200億円を突破。復興の財源確保は解除後の大きな課題だ。

楢葉町:全域避難を解除…すぐに帰還1割未満、再生険しく〔2015年9月5日 毎日新聞〕

医療態勢整わず「綱渡りの状況」

楢葉町を含む双葉郡(8町村)の医療態勢はまだ整っておらず、町に建設が始まった県立診療所の開所予定は来年2月。患者は南側の広野町やいわき市の病院への通院を余儀なくされる。双葉地方広域市町村圏組合消防本部によると、東日本大震災前に比べて救急搬送に要する平均時間は1・5倍に延びている。同本部の大和田仁次長は「綱渡りの状況だ」と懸念する。

避難指示解除の楢葉町 病院なく買い物も町外…放射性物質に根強い懸念 住民帰還へ課題多く

買い物もまだ不自由

営業しているのは仮設のスーパーとコンビニ2店舗で、本格的な買い物には町外に出ざるを得ない。放射性物質への懸念も根強く、町内にあるダムを水源とする住民からは「安心して飲めない」との声も出る。

避難指示解除の楢葉町 病院なく買い物も町外…放射性物質に根強い懸念 住民帰還へ課題多く

《楢葉町》

楢葉町は人口7368人人(9月1日時点)で、ほぼ全域が第1原発から20キロ圏内に入る。原発事故後は「警戒区域」に指定されたが、平成24年8月10日に比較的放射線量の低い「避難指示解除準備区域」に再編され、9月5日、解除された。避難指示の解除はいずれも福島県の田村市都路地区と川内村の一部に続いて3カ所目で、全町避難している自治体では初めて。(9月7日時点)

《すぐに帰還1割未満》

復興庁や県、楢葉町が昨年10月に実施したアンケートで、町に「すぐに戻る」と答えたのは9・6%で、「条件が整えば戻る」と合わせても45・7%と半数以下だ。避難指示解除に向けた準備宿泊の登録者数が人口の約1割だったことから、実際に町に戻る人数も同程度になるとみられる。

避難指示解除の楢葉町 病院なく買い物も町外…放射性物質に根強い懸念 住民帰還へ課題多く

【福島県双葉郡楢葉町】

事故対応拠点として機能していた…楢葉町・Jヴィレッジ

東日本大震災までは日本代表の強化合宿などに使われていた

Jヴィレッジは、東日本大震災まではサッカーのナショナルトレーニングセンターとして、日本代表の強化合宿などに使われていた。東京五輪・パラリンピックのための使用を想定し、最終的には敷地を明け渡す予定。

東京電力、平成27年中に復興本社を福島第1原発近くに移転

事故直後は「事故対応拠点」として活用…東電の「福島復興本社」を設置

Jヴィレッジは第1原発から南へ約20キロにあり、放射線量が比較的小さかったため、事故直後は作業員らが防護服に着替えてバスで第1原発へと往復する事故対応拠点として東電の「福島復興本社」が置かれている。

東京電力、平成27年中に復興本社を福島第1原発近くに移転

除染や被曝対策も進み…日本サッカー協会など移転を求めていた

第一原発内の除染や被曝対策も進み、平成25年にはこうした入退管理の機能を第一原発内に移していた。日本サッカー協会などはJヴィレッジをサッカー施設として再び利用できるよう、移転を求めていた。

東京電力、平成27年中に復興本社を福島第1原発近くに移転

東京電力の関係者「Jヴィレッジがあったおかげで収束早まった」

東京電力の関係者は「Jヴィレッジがなかったら、これほど早く福島第一原発を落ち着かせることはできなかった」と話す。

Jヴィレッジの現在~福島第一原発事故収束の最前線から作業員の中継地点へ〔2013年8月24日 サッカーキング〕

Jヴィレッジのサッカースタジアムには福島第1原発で作業する東電の社員寮が建てられている=2014年4月

Jヴィレッジのサッカースタジアムには福島第1原発で作業する東電の社員寮が建てられている=2014年4月

復興「拠点」から「シンボル」へ

復興構想のため「プロジェクト委員会」を結成、昨年5月から議論

Jヴィレッジの復興構想は、県や東電、日本サッカー協会(JFA)、地元2町などでつくる「新生Jヴィレッジ復興プロジェクト委員会」が、平成26年5月から議論を進めてきた。

Jヴィレッジ、サッカー以外も 五輪にらみ改修 復興構想中間報告素案判明

前倒しで平成30年夏再開へ「福島復興の象徴に…」 

「復興プロジェクト委員会」は1月、福島県庁で会合を開き、平成30年7月に一部施設の再開を目指すなどとした復興・再整備計画を策定。委員長の近藤貴幸・県企画調整部長は「今は廃炉の最前線基地であるJヴィレッジが福島復興のシンボルになるようにしたい」と述べた。

「福島復興の象徴に…」Jヴィレッジ、前倒しで2018年夏再開へ

東電、福島復興本社を27年度中に福島県・富岡町に移転

東京電力は平成27年度中に移転する予定の福島復興本社を同県富岡町に置く方針を固めた。富岡町は福島第1原子力発電所から20キロメートル圏内の避難指示区域にあり、除染など住民の帰還に向けた作業を進めている。東電は移転に伴うインフラ整備や雇用拡大を通じ、避難区域の復興加速につなげたい考えだ。

東電、福島復興本社を富岡町に移転 15年度 〔2015年9月8日 日本経済新聞〕

環境省、本格除染を開始…3月までに完了目指す

環境省は7月、Jヴィレッジで本格除染を始めた。宿泊施設などがあるセンター棟や屋根付き雨天練習場など約7ヘクタールが対象で、平成28年3月に完了する予定。駐車場や資材置き場として利用しているグラウンドは東電が除染して原状回復する。

Jヴィレッジで本格除染 来年3月までに完了 環境省

遠藤利明五輪相「復興のシンボルになる」

遠藤利明五輪相は8月1日、福島県内で内堀雅雄知事と会談し、2020年東京五輪・パラリンピックについて「事前合宿や国際大会を福島を含めた被災3県で開催したいと思っている。予選は福島でできるよう検討したい」と被災地での開催に意欲を見せた。「Jヴィレッジ」ついても、遠藤氏は「生まれ変わらせることで(原発事故からの)復興のシンボルになる」と活用に前向きな姿勢を示した。

「予選は福島で」遠藤五輪相、知事と会談 復興取り組み発信強調

五輪は国内外にアピールする絶好の機会

Jヴィレッジの再開とともに五輪関連事業誘致への期待は大きい。第一原発から約20キロの場所でトップアスリートが使用する施設が復活したとなれば、国内外に福島の復興もアピールできる。五輪は絶好の機会だ。

五輪合宿誘致目指す 本県復興アピール、Jヴィレッジ活用〔2015年3月11日 福島民友ニュース〕

福島県エネルギー課主幹「これだけの施設はほかにない」

県もJヴィレッジの再開を「復興の象徴」と位置付け、出場国などへの“売り込み”を狙う。Jヴィレッジを所管する県エネルギー課の市村尊広主幹は「これだけの完璧な施設は日本にはほかにない」と胸を張る。JFAや県はJヴィレッジの名付け親であるボビー・チャールトン氏の母国イングランドなどに合宿地としての利用を提案する方針だ。

東京五輪 「復興の象徴に」被災地で加速する合宿地誘致…「脳天気」と冷めた声も

【映像】Jヴィレッジ再生へ...シェフの思い(FNN)

グランド脇の草むらの草刈りを行う除染作業員=7月13日、福島県楢葉町

グランド脇の草むらの草刈りを行う除染作業員=7月13日、福島県楢葉町

敷地内ではサッカーグランドが駐車場や資材置き場として現在も使われている=7月13日、福島県楢葉町

敷地内ではサッカーグランドが駐車場や資材置き場として現在も使われている=7月13日、福島県楢葉町

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