突然発症、致死率30%…感染増える「人食いバクテリア」とは

手足の壊死などの症状が急速に進行し、高い致死率から「人食いバクテリア」と恐れられる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の国内患者が過去最多となっている。どう気をつけたらいいのか。

《劇症型溶血性レンサ球菌感染症》
1987年に米国で初めて報告され、日本では平成4年に最初の患者が確認された。血圧低下などのショック症状が突然現れ、腕や足に痛みや腫れが出る。細菌が急激に増殖し、筋肉や皮膚組織を破壊することから「人食いバクテリア」の異名をもつ。

国内の感染患者、過去最多に

昨年を超える291人が感染、71人が死亡

「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の国内患者が8月23日までに291人に上ったことが9月2日、国立感染症研究所のまとめで分かった。昨年の273人を超え過去最多で、6月14日までの報告では71人が死亡している。

「人食いバクテリア」劇症型溶血性レンサ球菌感染症が過去最多

近年は年間200人前後で推移、患者の約30%が死亡

感染研によると、平成18年に現在の届け出基準になって以降、国内患者の報告は増加傾向で、23年以降は年間200人前後で推移。24~26年に届け出があった患者712人のうち207人(29%)が死亡した。

「人食いバクテリア」劇症型溶血性レンサ球菌感染症が過去最多

都道府県別では東京45人、大阪28人などが多い(8月16日時点)

感染研の8月16日までのデータによると、都道府県別で患者が多いのは、東京45人、大阪28人、神奈川20人、千葉、兵庫がそれぞれ15人の順だった。

感染症発生動向調査週報〔国立感染症研究所〕

「年齢が上がるにつれ死亡率は高くなる傾向がある」と感染研

感染研の砂川富正室長は「全都道府県で患者が報告され、男性は70代、女性は60~80代が多かった。年齢が上がるにつれ死亡率は高くなる傾向がある」と分析する。

「人食いバクテリア」劇症型溶血性レンサ球菌感染症が過去最多

なぜ増加傾向? 病気の認識の高まりからとの指摘も

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は全数報告対象(5類感染症)になっており、診断した医師は7日以内に保健所に届け出なければいけない。東京医科大学病院・感染症科の水野泰孝診療科長は、患者数が年々増加傾向にあるのは、この病気の認識が高まってきているからではないかという。

致死率約30%「人食いバクテリア」 投薬、手術治療は時間との戦い

原因・症状は

原因は特別な細菌ではないが、まれに劇症化することがある

主な原因菌の「A群溶血性レンサ球菌」は特別な細菌ではない。へんとう炎や皮膚炎などを起こすが、通常は抗菌薬で治療できる。しかし傷口などから細菌が体に入ると、まれに劇症化することがある。なぜ劇症化するのか原因は分かっていない。

脅威「人食いバクテリア」 増殖して手足壊死、致死率30~50%〔2015年2月25日 毎日新聞〕

持病のない健康な人でも突然発症する

東京医科大学病院・水野診療科長によると、劇症型は30歳以上の大人に多い傾向があり、持病のない健康な人でも突然発症するという。また、東邦大学医療センター大森病院の吉沢定子医師(総診感染症科)によると、糖尿病などの持病を持つ患者もいたが、基礎疾患がない患者もいたという。

致死率約30%「人食いバクテリア」 投薬、手術治療は時間との戦い

初期症状は手足の痛みや腫れ→筋肉が急激に壊死→発症数十時間で死亡することも

初期症状は手足の痛みや腫れ、発熱などだが、病気の進行は極めて速い。細菌が急激に増殖し、通常は細菌のいない筋肉や筋膜を壊死させたり、血流に乗って全身に回って多臓器不全などを引き起こしたりする。発症して数十時間以内にショック状態で死亡することもあり死亡率は30~50%に達する。

脅威「人食いバクテリア」 増殖して手足壊死、致死率30~50%〔2015年2月25日 毎日新聞〕

感染したという50代男性「激痛で歩くことすらできなく…」

以前、感染したという50代の男性は、「朝起きると右足が軽く痛み、微熱と体のダルさがあったのですが、大したことないと思い普段通り出社しました。ところが、昼ごろに痛みがヒドくなり、見ると赤く腫れ上がり熱を帯びていた。しばらくすると、激痛で歩くことすらできなくなり、慌てて救急車を呼びました。入院して事なきを得ましたが、医者から<もう少し遅ければ右足を切断せざるを得なかった>と言われました」と話す。

過去最多 致死率30%「人食いバクテリア」感染激増の恐怖〔2015年1月10日 日刊ゲンダイ〕

「人食いバクテリア」と恐れられる、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を引き起こすことがあるA群溶血性レンサ球菌(国立感染症研究所提供)

「人食いバクテリア」と恐れられる、劇症型溶血性レンサ球菌感染症を引き起こすことがあるA群溶血性レンサ球菌(国立感染症研究所提供)

治療・予防は

抗菌薬による治療、壊死した部分を切除する手術が必要な場合も

治療は抗菌薬で細菌の増殖を抑えるほか、壊死が進んでいる場合は、その部分を切除して感染の拡大を防ぐ必要がある。劇症型でなくても、この菌に感染したら抗菌薬を決められた期間飲み続け、合併症を予防するとともに感染を広げないことも重要。

「人食いバクテリア」劇症型溶血性レンサ球菌感染症が過去最多

手足の傷や水虫から感染しやすく、持病のある人や高齢者は要注意

東京女子医大の菊池賢教授(感染症学)は「手足の傷や水虫にかかっている場所から感染しやすい。特に糖尿病などの持病のある人や高齢者は、傷が化膿したらすぐに受診してほしい」と呼び掛ける。

脅威「人食いバクテリア」 増殖して手足壊死、致死率30~50%〔2015年2月25日 毎日新聞〕

「基本的には手洗いなどの感染予防対策が大切」と感染研

感染研の砂川富正室長は「基本的には手洗いなどの感染予防対策をしっかり行うことが大切だ」という。手足に赤みを伴った痛みが出るなどしたら、早めに医療機関(できれば感染症科)に行くよう呼びかけている。

「人食いバクテリア」劇症型溶血性レンサ球菌感染症が過去最多

《特に注意すべき人》

・免疫力が落ちる病気がある:糖尿病、肝硬変、慢性腎臓病、がんなど
・ 免疫抑制薬を服薬している
・アルコールの摂取量が多い
・ウイルス感染症にかかっている:インフルエンザ、水ぼうそうなど
・妊娠中、あるいは出産直後である

「人食いバクテリア」とは?医師が解説する対策まとめ〔2015年8月19日 MEDLEY〕

《皮膚に傷ができた際に気をつけること》

・傷はすぐに、シャワーなどでしっかりと洗う
・傷があるうちはプールや温泉、海を避ける(菌が入ってくることを避けるため)
・傷に触れる可能性のある手や指先は、なるべく清潔に保つ

「人食いバクテリア」とは?医師が解説する対策まとめ〔2015年8月19日 MEDLEY〕

今年は「新型ノロウイルス」も

新型「GⅡ・17」、ヒトへの感染のしやすさに関わる部分が変異

川崎市健康安全研究所と国立感染症研究所などのグループが行った調査で、ノロウイルスの「GⅡ・17」という型が急激に増え、ことし初めから国内で感染を広げていたことが分かった。従来の型よりヒトへの感染のしやすさに関わる部分が変異し、ヒトが免疫を持っていない新たなウイルスになっていたという。

ノロウイルスが変異 免疫持たず大流行のおそれ〔2015年8月28日 NHK〕

例年にない大きな流行になるおそれがある、と感染研

国立感染症研究所は、秋以降も新たなウイルスが主流となった場合には、ヒトがそれまでに獲得した免疫が役に立たなくなるため感染者が増え、例年にない大きな流行になるおそれがあるとして、全国の地方衛生研究所にウイルスの分析を徹底するよう求めた。

ノロウイルスが変異 免疫持たず大流行のおそれ〔2015年8月28日 NHK〕

9年前の大流行時は集団発生が多発、患者は303万人以上

ノロウイルスを含む「感染性胃腸炎」が最も大きな流行になったのは9年前の平成18年。このとき、国立感染症研究所は9月から12月上旬までの3か月で子どもを中心に患者は303万9000人に上ったと推計。当時のNHKの調査では、10月から12月までに少なくとも2405件に上る集団発生が起きた。

ノロウイルスが変異 免疫持たず大流行のおそれ〔2015年8月28日 NHK〕

《ノロウイルス》

おう吐や下痢などの胃腸炎を起こすウイルスで、食中毒の原因にもなり、毎年秋から冬にかけて本格的な流行を繰り返す。感染力が非常に強いのが特徴で、患者のおう吐物や便などウイルスで汚染された物に触った手などを介して口から感染する。ワクチンや特別な薬はないため、治療は、おう吐や下痢によって脱水症状を起こさないよう水分を補給する対症療法が中心。

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