「みなさま」向かないNHKは不要? 民放だけが映る装置が人気

筑波大の研究室が、NHKだけ受信しない装置を開発しネット通販で販売したところ、全国から問い合わせが殺到するほどの人気となっている。この背景には、受信料徴収をめぐる不公平感や、同局の報道への不満があるとみられる。

《受信料の支払い義務》
放送法64条は「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」は、協会と受信契約を結ばなければならないと定めている。NHKによると、2014年度は受信料収入が過去最高の6493億円に上ったという。

問い合わせ殺到 「NHKだけを受信しない装置」とは

NHK放送の周波数帯のみを阻害する回路を加えたアンテナフィルター

装置は直径21ミリ、長さ75ミリの筒状で、テレビ背面にあるアンテナ入力端子などに取り付けるとNHK総合とNHK教育の周波数をカットする仕組み。

NHKだけ受信しない装置「イラネッチケー」 約130個売れる

商品名は「iranehk(イラネッチケー)」。これまで約250個を販売

商品名は「iranehk(イラネッチケー)」で、周波数帯域が地域によって異なるため、現在は関東地域の地上波とBS波に対応したものだけだが、これまでに約250個が売れた。価格はいずれも約5千円。2014年7月からネットで販売を開始したところ、全国から「ほしい」との声が寄せられ、15年8月末から大阪版と中京版の販売も開始する。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

筑波大・掛谷准教授の研究室に所属する学生が開発

装置は筑波大学システム情報系准教授・掛谷英紀氏の研究室に所属する学生が2013年度の卒業研究として開発。技術的には、電子工学系の大学生なら作成可能なレベルという。学生によるベンチャー企業が販売を行う。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

「NHKと受信契約しない自由を国民に提供するため」(掛谷准教授)

掛谷准教授は「装置の開発は、テレビを所有しながらNHKと受信契約しない自由を国民に提供するのが主な目的だ」と説明する。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

(上)「イラネッチケー」をテレビに取り付ける筑波大の掛谷英紀准教授=茨城県つくば市の筑波大。(下)左が関東地域で使用できる地上波用、右が衛星用のイラネッチケー

(上)「イラネッチケー」をテレビに取り付ける筑波大の掛谷英紀准教授=茨城県つくば市の筑波大。(下)左が関東地域で使用できる地上波用、右が衛星用のイラネッチケー

装置の開発はNHKの公平性への疑問が発端

掛谷准教授は、国会中継映像めぐるNHKの対応に疑問を感じた

筑波大学の掛谷准教授がNHKの公共性に疑問を抱いたのは、Youtubeにアップされた国会中継映像をめぐるNHKの対応がきっかけという。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

対応とは、慰安婦問題めぐる国会中継映像のうち正反対の意見の一方のみがNHKの要請でYoutubeから削除されたこと

2013年3月、従軍慰安婦問題について、辻元清美議員(民主)と中山成彬前議員(当時は日本維新の会)が逆の立場から国会で質問。いずれもYoutubeにアップされたが、NHKの要請で削除されたのが中山氏の映像だった。ネット上や国会では、正反対の意見の一方のみが削除されたとして当時大きな話題になった。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

NHKの姿勢を注視する背景に「受信料問題」

大阪41%、東京36%…特に都市部での受信料不払い率は高い

NHKによると2014年度末の受信料の推計世帯支払い率は75・6%。電波環境に問題のある沖縄(46・8%)を別にすれば、大阪59・7%、東京64・2%と都市部で支払い率が低い。

トップは秋田、ワーストは沖縄…NHK受信料支払率 過去最高75・6%

現行制度は「受信料を払っている人にとっても不公平」(掛谷准教授)

掛谷准教授は「受信料不払いの場合は(NHKが)スクランブルをかけることが技術的に可能な時代。今の制度は、テレビで民放だけを見たい人はもちろん、受信料を払っている人にとっても不公平な制度だ」と指摘する。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

スクランブル化も可能だが、それは「公共放送の理念と矛盾する」(NHK)

政府の規制改革会議も2005年、NHKの地上波とBSをスクランブル化し、将来は受信契約でなく有料放送とするよう求める方針を出しているが、これに対しNHKは、公式ホームページで、「(スクランブルをかけることは)全国どこでも放送を分けへだてなく視聴できるようにする、という公共放送の理念と矛盾し、問題がある」と説明している。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

解決策としては、ニュース・教育系「国営NHK」と娯楽系「民間NHK」に分ける「分割」案も

経済評論家・山崎元氏は、受信料問題解決のために、NHKの分割を提案する。「ニュースやEテレの教育コンテンツなど国が税金で負担する『国営NHK』と、スポーツ番組や大河ドラマをはじめとする娯楽的なコンテンツを民放と同様の競争条件で提供する『民間NHK』に分けるのがいい」とする。

「受信料訴訟」敗訴のNHKに説明責任あり 解決策は「国営」と「民間」に分割〔2015年4月3日 ZAKZAK〕

《スクランブル化》

有料BS放送などで導入されているデータを暗号化する技術で、契約者以外はテレビ映像を見ることができない。放送法では「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に契約が義務づけられており、スクランブル化されれば、契約の必要がなくなることになる。

NHKスクランブル化「地上波で導入」88% 「番組見たいか」NOに69%

「イラネッチケー」取り付ければ支払わなくてもいい?

「フィルターを取り外せば見られるので、受信契約の対象」とNHK

アンテナフィルター「イラネッチケー」を設置したテレビはNHKが受信できなくなる。しかし、NHKは「フィルターを取り外せばNHKが見られるので、受信契約の対象だ」とする。ちなみに開発者側によると、取り外せなくする方法もあるという。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

船橋市議の立花孝志氏は現在、イラネッチケー使用時には「受信料は発生しない」と訴訟を起こしている

立花孝志市議は元NHK職員で「NHKから国民を守る党」の代表。立花氏は2015年6月、「イラネッチケーでNHKが映らなくなったため、NHKに請求されている受信料は発生していない」とする債権不存在訴訟を起こしている。9月には第1回口頭弁論が東京地裁で開かれる予定。

「公共性欠如のNHKはいらない」民放だけが映る“アンテナ”が人気

立花氏「ガスや水道のように…利用していないのなら支払う必要ない」

立花市議は、「そもそもNHKは公共放送。ガスや水道のようにサービスを利用した時に料金が発生する。逆に言えば、利用していないのならば支払う必要はない。放送法第64条にも『放送の受信を目的としない受信設備のみを設置した者については、この限りでない』という条文がある」と語る。

受信料支払い訴訟でNHK敗訴 連勝だった裁判の今後は?〔2015年4月17日 東スポWeb〕

政府寄り? NHKの偏向報道を指摘する声も

市民団体が「政府与党の主張の紹介が放送全体のおよそ7割」と指摘したことも(2014年8月)

市民団体「放送を語る会」が2014年8月末に公表した、集団的自衛権をめぐるNHKや民放の主な報道内容(5月15日~7月6日)を比較したモニター調査では、「ニュースウオッチ9」で「政府与党の主張の紹介が放送全体のおよそ7割を占めている」という結果が。

NHK報道スタンスに変化? 「政府寄り」怒る市民団体、バランス評価も

「広報と報道は違う。最近のNHKの番組は、(政府の)広報番組」と視聴者

「放送を語る会」が2014年11月に開いたシンポジウムでは、質疑応答の際、元公立高校教員だという一人の男性参加者から「広報と報道は違う。最近のNHKの番組は、広報番組だ」とする意見が聞かれた。

NHK報道スタンスに変化? 「政府寄り」怒る市民団体、バランス評価も

籾井会長の言動で、より厳しい目を注がれている

NHKの番組には以前から厳しい視線が注がれてきたが、「政府が右というものを左というわけにはいかない」といった、2014年1月の籾井会長の就任記者会見での言動により注目がさらに拡大したという指摘もある。

NHK報道スタンスに変化? 「政府寄り」怒る市民団体、バランス評価も

「クローズアップ現代」では「過剰な演出や視聴者に誤解を与える編集」も行われていた

報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったと指摘される問題も発生。NHKの調査委員会は4月28日、「過剰な演出や視聴者に誤解を与える編集が行われた」とする調査報告書を正式に公表している。取材過程で記者から具体的な演技の指示はなかったとして、やらせは認定しなかった。

「クロ現」問題、「過剰な演出あった」とNHK調査委 担当記者は停職3カ月

Twitterで散見されるNHK視聴者の声

《市民団体「放送を語る会」とは》

NHKのOBら退職者をはじめとする視聴者有志でつくる市民団体。1988年、昭和天皇の病状を連日伝えたNHKの報道に対し、局内から「過剰だ」「大本営発表ではないか」といった反発が高まったことを契機に、NHK職員が中心となって発足。

NHK報道スタンスに変化? 「政府寄り」怒る市民団体、バランス評価も

そもそも受信料徴収は建て替えのため?

3カ年で支払率80%、衛星契約占める割合50%達成を目指す

NHKが2015年1月に公表した15~17年度の次期経営計画によると、以後3カ年で受信料支払率80%、衛星契約の占める割合も50%達成を目指すという。

NHKが次期経営計画発表 「公共メディア」見据え国際発信、ネット活用強化

放送センター建て替えのため、240億円を積み立てる

次期経営計画では、老朽化が進む東京・渋谷の放送センター建て替えのため、240億円を積み立てるとしている。ただ、建て替えの場所や費用はまだ固まっておらず、積立金の総額は14年度時点ですでに1042億円にも達している。

NHK経営計画 「32年までに合意形成を」新受信料制度で経営委が注文

総事業費3400億円…「8K」対応機器完備の「ハイテク社屋」との情報も

建て替え後の新社屋は、総事業費3400億円、延べ床面積26万平方メートルで、災害時でも放送できるよう建物の免震機能をグレードアップするともいわれている。また次世代高画質放送「8K」に対応するため、最新の放送機器を完備した「ハイテク社屋」になる予定という。

NHK ネット受信料徴収急ぐ背景に新社屋建て替え巨額事業費

次期経営計画について記者会見するNHKの籾井勝人会長(右)と浜田健一郎経営委員長 =1月15日、東京・渋谷のNHK放送センター

次期経営計画について記者会見するNHKの籾井勝人会長(右)と浜田健一郎経営委員長 =1月15日、東京・渋谷のNHK放送センター

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