湘南から東北までをつなげた「圏央道」のいま 効果も問題点も

首都圏の渋滞緩和などを目的に開発が進められている「圏央道」で10月31日、埼玉区間が全線開通し、東名高速から東北道までがつながる。経済や観光への効果が期待されるが、すでに開通している区間では問題点や思わぬ余波も-。

《首都圏中央連絡自動車道(圏央道)》
首都圏の道路交通の円滑化、環境改善、沿線都市間の連絡強化、災害時の代替路としての機能など目的とした自動車専用道路。都心から半径およそ40~60kmの位置に計画され、首都圏から放射状に伸びる高速自動車国道と相互に連絡し、総延長は約300km。このうち、2015年10月31日までに約230kmが開通する。

圏央道の開通により、久喜白岡JCTから茅ケ崎海岸までの所要時間が約55分短縮される(国土交通省の資料より)

圏央道の開通により、久喜白岡JCTから茅ケ崎海岸までの所要時間が約55分短縮される(国土交通省の資料より)

圏央道、東名から東北道までつながる

10月31日、埼玉区間が全線開通、湘南方面へ約55分短縮される

圏央道の埼玉区間58・4キロが10月31日、全線開通する。今回、最後に開通するのは桶川北本-白岡菖蒲インターチェンジ(IC)間で、埼玉県・東北道方面から湘南・鎌倉周辺への移動時間は、従来の約2時間20分から約1時間25分に、約55分短縮される。

埼玉県内圏央道31日全線開通 物流や観光後押し、一般道の交通環境も改善

東名・中央・関越・東北道が直結…国交省「経済に大きなインパクト」

桶川北本-白岡菖蒲IC間の開通に伴い、圏央道を経由して東名高速・中央道・関越道・東北道の4本の高速道路が直結。国交省の担当者は「観光や商業の発展だけでなく、周辺の一般道の交通環境も大きく改善される。経済に大きなインパクトを与えるはずだ」と力を込めた。

埼玉県内圏央道31日全線開通 物流や観光後押し、一般道の交通環境も改善

来年4月から実質値下げ、都心迂回ルートは安く

首都、東日本、中日本の高速道路各社は9月、首都圏の高速道路新料金案を発表。圏央道を実質的に値下げして首都高から車を誘導、都心の渋滞緩和を促すことが狙い。
《例》中央道・八王子IC-圏央道・つくば中央IC間は圏央道や外環道ルート経由で4120~4730円、首都高経由で3660円。この場合、走行経路に関係なく最安の3660円とする。

都心通る車、圏央道に誘導 高速新料金を来年4月導入へ〔2015年9月23日 SankeiBiz〕

報道陣に公開された10月31日に開通する圏央道の桶川加納IC=埼玉県桶川市

報道陣に公開された10月31日に開通する圏央道の桶川加納IC=埼玉県桶川市

圏央道の効果…各地で渋滞緩和など

首都高で渋滞緩和、千葉の国道では朝のピーク時渋滞解消も

国交省は千葉県の圏央道・神崎IC-大栄JCT間が開通したことに伴う効果をまとめた。都心経由で移動する車両が減少し、首都高や常磐道の渋滞解消に影響を与えているという。渋滞が頻繁に発生していた国道408号の土屋交差点(成田市)では、開通後の交通量が約6%減少。朝のピーク時に発生していた約540メートルの渋滞も解消されたという。

圏央道神崎IC-大栄JCT開通効果、首都高などで渋滞解消 千葉

神奈川県でも国道の渋滞緩和、新たな観光の流れも

国交省は5月、さがみ縦貫道路(圏央道)全線開通の整備効果を発表。相模原から茅ケ崎まで83分かかっていた所要時間が48分となるなど、神奈川県内の南北移動が円滑化。並行する国道129号、16号などで渋滞が改善している。また、相模原市の新規求人数が約3割増加、神奈川から奥多摩への新しい観光交流が進むなどの効果も出ている。

圏央道さがみ縦貫道路、全線開通で近隣一般道の渋滞緩和に効果〔2015年5月29日 レスポンス〕

観光客が増えた! 静岡で過去最高の1億4千万人

東名高速と関越道がつながったことにより、群馬・埼玉方面から富士山・箱根エリアに訪れる車が増加。静岡県は、観光レクリエーション客数と宿泊客数を合わせた平成26年度の観光交流客数が前年度より296万人(2・0%)多い1億4千万人となり、過去最高を記録したと発表した。

観光客、過去最高に 26年度、圏央道開通など奏功 静岡

沿線の経済活性化、埼玉には「ニトリ」の最大級物流センターなど

圏央道の開通は、埼玉県内の経済面での活性化も後押し。沿線地域は平成17~26年の10年間で企業の立地件数が86件から462件に増加。新規雇用も約6倍の約1万7700人増えた。特に、物流施設や製造業の進出が顕著で、家具小売業大手「ニトリホールディングス」は、同社最大級となる物流センターを30年ごろに幸手市内で稼働させるという。

埼玉県内圏央道31日全線開通 物流や観光後押し、一般道の交通環境も改善

近年の圏央道開通

平成24年 3月25日 高尾山IC-八王子JCT(東京)
平成25年 3月30日 海老名IC-相模原愛川IC(神奈川)
4月14日 寒川北IC-茅ヶ崎JCT(神奈川)
4月27日 東金JCT-木更津東IC(千葉)
平成26年 4月12日 稲敷IC-神崎IC(茨城、千葉)
6月28日 相模原愛川IC-高尾山IC(神奈川、東京)
平成27年 3月8日 寒川北IC-海老名南JCT(神奈川)
3月29日 久喜白岡JCT-境古河IC(埼玉、茨城)
相模原IC(神奈川)
6月7日 神崎IC-大栄JCT(千葉)
10月31日 桶川北本IC-白岡菖蒲IC(埼玉)

圏央道の問題点…新たな渋滞スポットも

海老名JCTが新たな渋滞スポットに…さらに交通量増大の不安

首都高研究家の清水草一氏によると、圏央道の海老名JCTは、JCT内の連絡路が大事なところで1車線に絞られており、現状でも時間帯によってひどい渋滞が発生している。圏央道が東名から東北道までつながれば、今後増大するであろう交通量は到底さばけないという。

手放しでは喜べない? 圏央道延伸、そこにある懸念〔2015年10月4日 乗りものニュース〕

【映像】海老名JCT 1km 15分の渋滞

思わぬ余波…成田へのアクセス向上で、茨城空港の利用者減る?

今年6月、圏央道の神崎IC-大栄JCTが開通し北関東各県からの成田空港へのアクセスが容易に。格安バスの運行などで利便性が向上すれば、茨城空港の利用者の減少が懸念されている。橋本知事は「ごく一部の地域ではあるかもしれないが、全体として見ればそんなに多いことはないだろう」と述べている。

圏央道開通、茨城空港の影響は「そんなに多くはない」 茨城県・橋本知事〔2015年6月7日 Traicy〕

圏央道、今後は?

神奈川では東京五輪開催の平成32年までに、横浜方面へ開通する予定

首都圏の道路交通の円滑化などを目的に開発が進められている圏央道は、延長約300kmのうち、約230kmが開通。神奈川区間では、栄IC・JCT-藤沢ICと、戸塚-釜利谷栄JCTが、用地収用がスムーズに完了した場合、東京五輪開催年の平成32年に開通予定。完成の暁には伊豆、箱根、小田原方面から横浜方面へのアクセスがスムーズになる。

圏央道の東名~東北道間が開通。全線開通はいつ?〔2015年9月30日 おうちマガジン〕

茨城の残り区間、予想以上の地盤沈下…平成27年度内の開通は困難

茨城区間では、残る境古河-つくば中央IC間で工事が進められていたが、一部で予想以上の地盤沈下が進んでいるとして土木工事の入札が取りやめに。国交省は予定されていた平成27年度内の開通は困難との認識を示した。

圏央道・境古河-つくば中央間、地盤沈下で年度内の開通困難〔2015年8月28日 産経新聞〕

千葉の残り区間には多数の埋蔵文化財…発掘調査開始も、開通メド立たず

千葉区間では、大栄JCT-松尾横芝IC間で開通のめどが立たっていない。この区間には多数の埋蔵文化財があり、平成26年12月にようやく発掘調査が開始された。千葉県内区間の全線開通はまだ先となりそうだ。

圏央道(大栄~横芝)において埋蔵文化財発掘調査に着手〔千葉国道事務所(pdf)〕

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