ミツバチの大群が突如消失してしまう現象が世界で頻発している(AP)

ミツバチの群れが巣箱から次々と消えていく 世界で頻発するナゾ

ミツバチの群れが突如として消失する奇妙な現象が世界で頻発している。農薬やストレスなどさまざまな原因が指摘されるが、決定的なものがないという。ミツバチは植物の受粉で重要な役割を果たすだけに、農業と食の深刻な危機が懸念されている。

《蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)》
飼育されるミツバチの大群が巣箱から突如消失してしまう現象。ミツバチは帰巣本能が高い上に、普通は巣を外敵の攻撃から集団で必死で守ろうとする。ミツバチが巣に近づく人間などを敵とみなして襲い、毒針で刺すのもそのため。しかし、この現象では、働きバチは女王バチや生まれて間もないハチを置き去りにして巣箱を去る。

ミツバチが巣箱から突如消失する現象とは

そもそもミツバチは巣に帰る本能を持っている

ミツバチは帰巣本能が高い上に、普通は巣を外敵の攻撃から集団で必死で守ろうとする。ミツバチが巣に近づく人間などを敵とみなして襲い、毒針で刺すのもそのためだ。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

それなのに大事な巣箱と“家族”を捨て、どこかへ消える働きバチたち

ミツバチの本能からすれば奇妙なのは、逃げたハチの死体は巣箱にも周辺にも見つからず、女王バチや生まれて間もないハチは置き去りにされていたこと。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

現象は「蜂群崩壊症候群」と呼ばれている

飼育されるミツバチの大群が巣箱から突如消失してしまう現象は米国各地で多発していることも分かり、「蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)」との名称が次第に定着した。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

「蜂群崩壊症候群」はいつから発生したのか?

初報告は2006年秋。米国で数人の養蜂業者が気づく

「蜂群崩壊症候群」が初めて報告されたのは、2006年秋の米国でだった。数人の養蜂業者が巣箱からほとんどミツバチがいなくなっていることに気づいたという。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

米農務省の調査で、1年間で42・1%が消失していることが判明

米農務省が2015年5月13日に発表した調査結果は、米国内のミツバチの群れが4月までの1年間で42・1%消失したというもの。業界や市場に衝撃を与えた。これは13年の45・2%に次ぐ高水準。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

酷似した現象が欧州各国やブラジル、台湾など世界各地でも

蜂群崩壊症候群によく似た現象が、スペインやポーランドなどの欧州各国、カナダ、インド、ブラジル、台湾など、世界各地で報告されている。

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日本でも報告例が相次ぐ。三浦半島では養蜂業者が大きな損害

日本でも報告例が相次ぎ、神奈川県三浦半島では、2013年7月、市内の養蜂場の1カ所で計13群のうち4群が失われた。同8~9月には横須賀市と葉山町の計6カ所133群でミツバチがいなくなり、うち98群は全滅。14年も同時期に両市町の3カ所で計44群のミツバチが巣に帰らなかった。

蜂群崩壊症候群:働きバチ巣に帰らず 三浦半島で大量発生〔毎日新聞〕

原因は未解明…要因が複合的に作用しているとの指摘も

主な原因とされているのは以下5つ

(1)殺虫剤などの農薬
(2)病原菌や寄生虫
(3)栄養不足
(4)ストレス
(5)遺伝子組み換え作物

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都市化などによる「ストレス」が原因とすれば、影響は昆虫全体に?

緑の自然環境の減少による都市化がミツバチに限らず昆虫にダメージを与えているとの見方は強い。さらに米国の養蜂業では、ミツバチが入った巣箱をトラックに積み込み、開花時期に合わせて全米各地を移動するのが主流で、この移動がミツバチにとってストレスになるのではないか、とされる。

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殺虫剤が原因とすれば…ネオニコチノイド系農薬が影響か

米ハーバード大などの研究チームは2015年2月、ネオニコチノイド系農薬をミツバチの群れに与えたところ、冬場から春先にかけてハチが急減し、蜂群崩壊症候群とよく似た現象が発生したとする実験結果を発表。投与した農薬は実際の農場で使用されるレベル。金沢大の研究チームもそれ以前に、同じ農薬が原因である可能性が高いと発表している。

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農薬メーカーはネオニコチノイドの影響を否定→原因は複合的に作用しているとの指摘も

ネオニコチノイド系農薬が原因と特定されたわけではなく、農薬メーカーなども「ミツバチの大量消失の主な原因ではない」と反発。このため、農薬やストレスなどさまざまな原因が複合的に作用しているのではないかとの指摘もある。

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《ネオニコチノイド系農薬》

たばこに含まれるニコチンに似た物質が主な成分で、農薬や殺虫剤として広く使用されている。欧州連合(EU)はすでに、ネオニコチノイド系農薬の使用を禁じる措置をとった。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

ミツバチがいなくなったら…農業と食が脅かされる

農作物の受粉が進まない→蜂蜜価格の上昇、果物や野菜の生産ができなくなる

ミツバチは農作物の受粉に欠かせない昆虫。ミツバチが消失すると、世界的な蜂蜜価格の上昇と果物や野菜の生産への影響が懸念される。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

米オバマ政権は対策も、各州は消極的

米では、商業作物の90種類以上をミツバチの受粉に頼っている

米政府や調査機関のデータによると、リンゴ、クルミ、アーモンド、豆類など北米の商業作物のうち90種類以上がミツバチの受粉に頼る。米CNNは、「このままでは養蜂業に未来はない」と嘆く業者の声を取り上げ、警鐘を鳴らす。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

そこでオバマ政権は目標を設定「冬に消滅する群の割合を10年以内に15%以下に」(2015年5月19日)

米オバマ政権は2014年、ミツバチやチョウなど花粉を媒介する昆虫の保護に関する国家戦略を構築するとした大統領覚書を発表。省庁横断で原因や対策を検討する作業部会を立ち上げた。そして15年5月19日、冬に消滅するミツバチの群の割合を10年以内に15%以下に抑える目標を打ち出した。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

しかし州レベルでの具体的な取り組みはなく…

連邦政府は州レベルで官民が連携して問題に取り組むよう求めたものの、めぼしい具体策は示さず、ネオニコチノイド系農薬の規制も見送った。このため、市民団体などからは「対策が不十分だ」と批判する声が上がっている。

【経済裏読み】農薬?ストレス? ミツバチの大群が突如消失のミステリー

ちなみに、兵庫県西宮市ではミツバチが大量発生した事例が

「分封」が原因と専門家

2014年4月下旬、兵庫県西宮市の阪神甲子園駅のホームに突如、ミツバチの大群が現れた。駅員らが虫捕り網を持ち、ぶんぶんと飛び回るミツバチを捕らえようと四苦八苦する事態になった。山田養蜂場の寺田憲司文化広報室長は「ミツバチの巣分かれである『分封』の途中だったのでは」とみる。

甲子園駅「ミツバチ」大量発生の怪…専門家「とにかく近づくな」

《分封(ぶんぽう)》

巣分かれのため女王バチが大量の働きバチとともに新たなすみかを探す行動。ミツバチは巣内で個体が増えて居場所が足りなくなると、新たな女王バチにその巣を譲り、古い女王バチが大量の働きバチとともに別のすみかを探す習性があるという。

甲子園駅「ミツバチ」大量発生の怪…専門家「とにかく近づくな」

街中でのミツバチの大量発生は過去にもあり、混乱を引き起こしている。2007年5月、京都市内で信号機に群がった際は「青」の表示が見づらくなった=京都市下京区

街中でのミツバチの大量発生は過去にもあり、混乱を引き起こしている。2007年5月、京都市内で信号機に群がった際は「青」の表示が見づらくなった=京都市下京区

甲子園駅「ミツバチ」大量発生の怪…専門家「とにかく近づくな」

そして、都心部での養蜂もブーム

自然志向の高まりとともに、趣味としての養蜂を楽しむ人が増加

自然志向の高まりとともに、趣味としての養蜂がブームになっている。都心部でも比較的手軽においしいハチミツがとれることが知られるようになったのがきっかけで、京都産業大と大阪府がタッグを組んで初めて開講した初心者向け講座も好調という。

家庭養蜂が都心でブーム 初期費用お手頃、エサは週1

農水省によると、全国のミツバチ飼育戸数はここ数年右肩上がり

農林水産省によると、全国のミツバチ飼育戸数は、平成21年の4983戸から24年は5934戸と増えており、ここ数年は右肩上がり。担当者は「近年のアマチュア養蜂ブームが背景にある」と分析する。

家庭養蜂が都心でブーム 初期費用お手頃、エサは週1

ミツバチ養蜂スタートアップ講座で巣箱の説明を受ける参加者ら=大阪府箕面市の箕面公園昆虫館

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