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「犬も歩けば取材日記(2)」熱帯のカメルーンで「APPLE」は必要?

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「犬も歩けば取材日記(2)」熱帯のカメルーンで「APPLE」は必要?

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カメルーン各地にはJICA事業で日本が建設した小学校がある。ビヤ大統領と小泉元総理、そして日本の建てた学校が印刷された125フラン切手 イザ!海外特派員 青年海外協力隊・小野洋文〔カメルーン〕 ドキュメンタリー番組の撮影のために、隣の村の小学校を訪問した。

 校長に案内されて教室に入ると、子どもたちが一斉に起立して姿勢をただし「ボンジュール、ムッシュー!」と校長先生にあいさつする。笑った顔はない、その表情からは緊張した様子がありありと分かる。「偉い人」には礼儀正しくする、と教わっていて反射的にそうしているのか、怖い大人におびえているのか、それらがミックスされた子どもたちの感情が読みとれた。

 カメルーンでは、青年海外協力隊として、幼児教育・小学校教諭の隊員たち7名が各地で活動している。ふだんの授業はどんなようすなのか。隊員らに聞いてみると、“つめこみ式”に授業をおこなう傾向があることが課題だ、という。先生たちは子どもたちに高圧的な態度で接していて疑問に思うことも度々だ、ともいう。どこか昔の日本をほうふつとさせるが、自分の見た校長先生へのおびえた態度も、そんな教育現場の雰囲気からきているのかもしれない。

 訪れた3、4年生合同のクラスでは、英語の授業をおこなっていた。英語とフランス語が公用語となっているカメルーンだが、この地域はフランス語圏なので、英語は第2公用語としての位置づけとなる。

 授業は英単語を覚えるという簡単なもので、黒板を見ると、「アント(あり)」、「アップル(りんご)」、「アックス(斧)」などの絵と、スペルが書かれてあった。今日は「A」から始まる単語を覚える授業のようだ。

 一見するとおかしくもないが、実用的に使えるための外国語学習とか、勉強を楽しいと感じさせるための動機づけ、という観点からは、あまり効果のある授業とは言いがたい。だいたいにおいて、町にバナナやマンゴーは売っているが、輸入品のりんごを見かける機会はそれほど多くない。りんごを作っていない熱帯の国で、子どもたちは「アップル」という単語を習っているわけである。

 そういった状況の中で、現在カメルーンの学校で活動している協力隊の仲間の隊員たちは、音楽・図工・体育、といった子どもの心を育てる教育に重点をおいて活動をおこなっている。

 たとえば「かえるの合唱」を体を動かしながら輪唱する。かえるの動作になりきることで、想像力をはぐくむ。また「ドレミの歌」の発表披露のために、「DO」「RE」「MI」などのカードをみんなで手作りして、歌に合わせてカードを出しながら歌う。ほかの子どもたちと役割分担したり合同作業をすることで、相手を思いやる心を育てるのがねらいだと、ある隊員が言っていた。

 日本の学校ではよく見かけるそんな光景も、この国ではまだ珍しいようで、カメルーンの教育はまだ試行錯誤の途上にあると言える。

 取材した小学校で、引き続き、教師の給料について聞いてみた。この学校には2人教師がいるのだが、「男性教諭の月給22万フラン(物価換算約22万円)。女性教諭の月給15万フラン(約15万円)」、とのことだ。

 そのことを、世界各国で活動している同期隊員と話をしたところ、「カメルーンの先生はずいぶん給料がいいんだね」とみんなが言う。おかしいなと思って、調べなおしてみると、上記の金額は、なんと月給ではなく年収だということが分かった。さらに、教諭になりたての数年間は給料ゼロだとも聞いた。

 地域によって一概には言えないが、学校現場では本当にさまざまな課題があるようだ。

 取材を続けているそのうちに保護者が集まってきて、保護者会が開かれることになった。会では学校側が、今年の予算を決めたいので保護者のみなさんにも負担してもらいたいと切り出す。校長が、いかにお金が足りないかということを熱弁するのに対して、「そんなに払えるわけないだろ」と会場が紛糾して、みるみるうちに収拾がつかなくなった。

 そんなタイミングで「時間もないので、まあこの辺で」と退出した。

 当初は「130歳になる長老から話を聞く」という目的で訪れた村だったが、寄り道をしたこの小学校でとても貴重な体験ができた。いかにも計画性のない取材だったにしても、こんな具合に犬も歩いて棒にあたるのも、悪くない。

 ちなみに、130歳というふれこみの長老は、会ってみるとどう見ても80歳くらいだった。どこで“130歳”と1.5倍増しになったのか?はいまだに不明。インタビューも100%現地語でおこなわれたので、何の話やら、自分には全く理解できず終わってしまったのだった。

■小野洋文(おの ひろふみ)

  山梨県出身。テレビ番組ディレクターとして12年間放送局制作会社に勤務し、情報番組や教育・教養番組などを担当。退職して青年海外協力隊に参加し、2013年8月からカメルーン共和国の地方テレビ局にてボランティア活動中。配属先の番組制作の構成、撮影、編集などの能力向上を目指して協力している。

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